「日本は消費増税すべきではなかった」海外紙がアベノミクスにケチ 「アベゲドン」との揶揄も【争点:アベノミクス】

消費税率8%が決まったことをフィナンシャルタイムズやウォール・ストリート・ジャーナルなど、海外紙が相次いで報じているが「日本は消費増税すべきではなかった」といったような報道が出ている…
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Shinzo Abe, Japan's prime minister, arrives for a news conference at the prime minister's official residence in Tokyo, Japan, on Tuesday, Oct. 1, 2013. Abe proceeded with an April sales-tax increase and will implement a stimulus program as he tries to rein in the world's biggest debt burden without jeopardizing efforts to end deflation. Photographer: Haruyoshi Yamaguchi/Bloomberg via Getty Images
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消費税率8%が決まったことをフィナンシャルタイムズやウォール・ストリート・ジャーナルなど、海外紙が相次いで報じているが「日本は消費増税すべきではなかった」といったような報道が出ている…

アベノミクス最初のエラー 消費税増税に海外紙から厳しい声

安倍首相は1日、来年4月から消費税を8%へ増税すると正式に発表した。景気回復への悪影響が懸念されるのに対し、景気刺激策および法人税減税もセットで行う方針だと報じられている。

【たかだか8%で騒ぐ理由】

フィナンシャル・タイムズ紙は、英国の20%など、欧米諸国の付加価値税に比べればまだ安い税率であることを指摘した(非課税品目の有無などには触れない単純比較であるが)。そのうえで、それが論争を呼んでいる理由は、1997年の前回増税時、実際に不況を招いたからだと説明。安倍政権において最初の政策エラーだ、と手厳しい。

消費税増税は、現在の景気回復を主導している消費者支出を直撃する。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、米国エコノミストの間では、超党派で、増税すべきでないとの考えが優勢のようだ。

非営利団体の日本経済研究センターが調査した41エコノミスト予想では、日本のGDP成長率は3月31日までの現年度の2.7%に対し、4月の増税以後の次年度には0.62%に低下する。

【長期金利上昇は困るのか】

一方で増税賛成派は、アジア通貨暴落や日本の銀行危機などがあった97年当時よりは状況が良く、むしろ今がチャンスと主張している。また、増税を見送れば債権市場の信頼を失い、金利上昇に見舞われるとの懸念を示している。

フィナンシャル・タイムズ紙の別の記事では、日本は元々構造的に債券の需要が供給を圧倒しており、世界で唯一、債券利回りの下落が続いていると指摘。自信が強まって余剰資金がリスク資産や実体経済活動に回されない限り、債券利回りは上がらない。同紙は、債券市場崩壊というシナリオを、災害映画に類する「アベゲドン」と呼んでいる。

【法人減税・公共支出・金融政策】

日経新聞の最新の世論調査では、安倍政権の支持率は66%あるが、増税賛成は47%、反対は48%であった。さらに法人減税については、「日本の個人と法人の税バランスを他国のそれに近づけようとするため」であるが「有権者の友好度をテストする」ことになると、フィナンシャル・タイムズ紙は評している。

また、今企業に設備投資をさせて能力拡大させる意味があるのかという疑問もある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、連立与党内にさえ反対があると報じている。

公共事業支出や低所得者層への現金配布などの景気刺激パッケージについても、同紙は、7.5兆円と予想される増税での増収を帳消しにしてしまうと指摘する。過去、政権が「有権者を喜ばせるため」に使ってきたこのような政策は、エコノミストらによると、永続的な経済浮揚効果は少ないという。

同紙は、日銀の金融刺激策拡大で円安とリスク資産市場を強く保つ、第3の景気悪化対策が主軸になるだろうとも論じている。その重責は黒田日銀総裁にかかり、米国の利下げ政策「グリーンスパンプット」や「バーナンキプット」に並ぶ、「黒田プット」の出現を見るだろうという。

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三菱ケミカルホールディングス<4188.t>の小林喜光社長は8日の記者会見で、消費税率引き上げはやらざるを得ない、と述べた。また、エネルギー問題が産業界のネックとなっているとし、限定的でも原発の再稼働は実施するべきとの考えを示した…続きを読む (credit:Reuters)
2013/8/8 日銀・黒田東彦総裁「脱デフレと消費増税は両立する」(18 of28)
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日銀の黒田東彦総裁は8日の政策決定会合後の記者会見で、来春に予定されている消費増税について、政府内外で取りざたされている計画修正の動きにくぎを刺した…続きを読む (credit:Reuters)
2013/08/04 高橋洋一嘉悦大学教授「増税撤回でも国際公約違反にならない」(19 of28)
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高橋洋一嘉悦大学教授は、G7やG20などの国際会議について、既に各国で決まった内容を『発表』する場であり、新たに約束を締結する場ではないと指摘。消費増税については、既に日本で法律もできているが、“景気回復などの環境が整えば”という部分を無視して『国際公約』扱いされることはないと批判した…続きを読む\n\n写真:野党側の要請で参院財政金融委員会に参考人として出席し、発言する元財務官僚の高橋洋一東洋大学教授(右)(東京・国会内) \n\n撮影日: 2008/04/18 (credit:時事通信社)
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「最終的には、(来春の増税幅が)3%より小幅という結論になる可能性も十分にある」(政府関係者)…続きを読む (credit:Reuters)
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