化石燃料の時代を終わらせる!パリ協定、発効へのカウントダウン

世界の温室効果ガス総排出量の約48%を占める60ヶ国がパリ協定に正式に参加したことになります。
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京都事務所の伊与田です。京都は先週くらいからようやく少し涼しくなりました。

さて、そんな中、気候変動に関するパリ協定について、とても良いニュースがありました。

世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにしていくことを決めた温暖化防止の国際条約「パリ協定」ですが、これが今年2016年内に発効する(=法的な効力を持つ)見通しになったのです!それどころか、11月に開催されるCOP22マラケシュ会議までの発効も現実味を帯びてきました。

【2016年10月6日追記】パリ協定、発効要件達成!11月4日に発効へ

このブログ執筆後、インド、ニュージーランド、EUなどが次々とパリ協定に正式参加を済ませ、10月5日に発効要件を満たしました!パリ協定は今年11月4日に発効し、新しい法的枠組みとして、この世界を「排出ゼロ」へと導くことになります。来月11月7日からモロッコのマラケシュで開催される、国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)では、併せて第1回目のパリ協定締約国会議(CMA1)も開催されることになりました。

一方、日本の批准が間に合わなかったのは残念です。政府は「批准を急ぐ」としつつ、それがいつになるかは未だ不透明です。主要な先進国と途上国が歴史的なパリ協定の早期発効を実現させた中、「全ての国の参加」を主張していた日本の批准が遅れていることは、国際社会における存在感や評判がますます低下することを意味します。一刻もはやく、遅くとも11月4日までに批准することが望まれます。

化石燃料の時代を終わらせる国際条約「パリ協定」とは?

そもそも、パリ協定は、2015年12月、フランスのパリで開催されていた国連会議COP21にて採択された、地球温暖化防止の新しい国際枠組みのことです。

COP21パリ会議でパリ協定が採択された(写真:伊与田)

パリ協定は、産業革命前からの地球平均気温上昇を1.5~2℃未満に抑制するため、今世紀後半に(つまり、早ければ2050年頃に)世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることをめざす国際約束です。

これらの目標を達成するために世界各国は温暖化対策目標を5年毎に策定・提出し、これを達成するために国内対策に取り組む法的義務を負うことになりました。

パリ協定の本当の意味

日本国内では、パリ協定について、「すべての国が参加する自主的な枠組み」という説明を多く見かけます。確かにすべての国が参加することは重要ですが、パリ協定の本質はそれだけではありません。

もう地球上のほとんどの化石燃料は燃やせない

科学者によれば、2℃未満のためには、地球上の化石燃料埋蔵量のほとんどは燃やせないのです。つまり、パリ協定というのは、たとえ化石燃料が余っていたとしてもあえて使わないことを意味するのです。化石燃料をエネルギー源とするインフラ(石炭火力発電所など)にこれ以上お金をつぎ込むことや、このような動きを容認することはパリ協定の趣旨に反することになります。

世界で広がる動き:「化石燃料の時代の終わり」と「再エネ100%時代への転換」

実際、COP21パリ会議の後、国連気候変動枠組条約事務局の高官も「化石燃料の時代が終わる」と指摘しています。それに、GoogleやMicrosoftなどといった名だたる企業が再生可能エネルギー100%目標を打ち出していますし、バンク・オブ・アメリカのような民間金融機関が石炭関連事業への融資を大幅に減らす方針を発表してきています。

これまで化石燃料をたくさん使ってきた人類近代史を大きく変えることになるパリ協定に、日本やEUはもちろん、アメリカや中国、産油国であるサウジアラビアなども含めて合意したわけです。やはり、歴史的合意だと思います。

パリ協定の「発効」と「締結」

国際条約が法的な効力を持つ=「発効」

国際条約は、国際会議の場でその文言が決まってからすぐに法的な効力をもつとは限りません。パリ協定も、その内容が法的な効力をもつまでの手順を定めています。

パリ協定は、「世界の温室効果ガス排出量の55%以上を占める55ヶ国以上が締結(批准・受諾・承認)してから30日後に発効する」とされています。

各国の締結状況は、国連がとりまとめている、こちらのウェブページから確認することができます。また、発効要件に係る各国の排出割合については、こちらのページから閲覧可能です。

国際条約に正式に参加する=「締結(批准・受諾・承認)」

COP21で合意したパリ協定の内容について、世界中の国が自国に持ち帰り、「本当にこの約束を我が国として守るんですよね?」という確認作業を国内でした後、締結するという書類を国連事務総長に出せば、その国は国際条約に正式に「参加」したことになります。

例えば、9月3日にパリ協定を締結したアメリカの文書はこんな具合です(オバマ大統領のアドバイザーの方のツイートです)。

化石燃料の時代を終わらせるパリ協定、なんと61ヶ国が締結済み!

潘基文国連事務総長、国連気候リーダーズイベントを開催

9月21日、潘基文国連事務総長は、ニューヨークにて、国連気候リーダーズイベントを開催しました。このイベントは、パリ協定の年内発効を実現するためのもので、この場で締結の文書を提出することや、2016年内に締結するという意思表明をすることが各国に呼びかけられました。

パリ協定、2016年中の発効がほぼ確実に

国連のイベント後、パリ協定に締結した国は60ヶ国になった

その結果、それまでの29ヶ国に加えて、新たにブラジル、メキシコ等の31ヶ国がパリ協定に正式に参加しました。これによって、世界の温室効果ガス総排出量の約48%を占める60ヶ国がパリ協定に正式に参加したことになります。発効要件のうちの1つ、国の数はもうクリアしたことになります。

また、国連は、年内発効に向けて今年中に締結すると約束した国々についてもとりまとめてウェブページで発表しています。これによれば、EU、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、韓国など、世界全体の12.58%を排出する14もの国・地域が、パリ協定の年内発効のために今年中に締結を済ませることを約束しているそうです(この14ヶ国の中に日本は含まれていません)。

つまり、日本抜きでも2016年中にパリ協定が発効することがほぼ確実になったということです

国連気候リーダーズイベント後も続々と締結が進む

国連気候リーダーズイベント終了後の9月23日には、世界の排出の0.03%を占める途上国・マリが批准し、61ヶ国が締結済みとなりました。また、世界の4.1%を排出するインドが10月2日に批准する予定というビッグ・ニュースもあります。11月に開催されるCOP22マラケシュ会議までの発効も現実味を帯びてきているのです。

パリ協定発効へのカウントダウンがもう始まっていることは間違いありません。

なぜ世界はパリ協定の締結を急ぐのか?

パリ協定が採択されてからまだ1年もたっていない中、各国が先を争ってパリ協定の締結を進めているのはなぜでしょうか?

気候変動への危機感が広がっている

ひとつは、深刻化する気候変動への危機感が世界中でますます広がっているからでしょう。世界中で極端な気候災害が発生し、「観測史上●●記録」を量産する時代に入っています。パリ協定の早期締結が相次いでいるのは、気候変動問題に国際社会として連帯して取り組む意思のあらわれだと思います。

世界の各国政府の意思を「固定化」する

それに加えて、各国政府がパリ協定のもとで温暖化対策に取り組むという政治的意思を固定化する意味もあると思います。社会経済状況は刻一刻と変化しますが、パリ協定のもとで「排出ゼロ」に向けて取り組み続けるんだということを確定的にするのです。

はやくパリ協定を発効させ、どこの国にどんな政権が今後誕生するにしても後戻りさせないようにしなければなりません(アメリカの大統領選挙の行方は本当に気になるところです)。

ビジネスに「脱炭素化」の強いシグナルを出す

パリ協定の早期発効は、急成長をとげている省エネ・再エネ産業への力強い応援であると同時に、「COをたくさん排出するビジネスはもうやめましょう」というメッセージであるとも考えています。

特に、石炭火力発電は超高炭素なビジネスです。今後10年間に巨額の税金を使って研究開発を支援する、「IGFC」という石炭火力で最高効率の次世代技術であっても、すでに運転中の天然ガス火力発電の1.8倍ものCOを出します。

パリ協定の早期発効をめざす世界の動きは、石炭火力発電所の建設計画に対して、「今のうちにやめてください!」というシグナルを送るものなのだと思っています。

以上のような流れを受けて、パリ協定の発効へのカウントダウンがもう始まっていることを嬉しく思っています。

日本がパリ協定に批准するのはいつ?

世界各国が先を争ってパリ協定に締結し、早期発効をめざす中、日本はいつまでに批准するのかをまだ表明していません。

政府は、パリ協定の批准案を9月26日から始まる臨時国会に提出し、成立をめざすとしています。

しかし、今年中に批准をすると公式に約束したわけではないと理解しています。気候リーダーズサミットの後に国連が発表した「今年中の批准を約束した国リスト」の中には日本の名前が入っていないのです。

パリ協定の批准こそ、いま国会が最優先で取り組むべきことではないでしょうか。