子の入院付き添い生活から生まれた製品が、共感を呼ぶまで #病院の付き添いを考える

「ふつふつとわき上がる『おかしい』がヒントだった」
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石嶋瑞穂さん=11月、大阪府内で
MASAKO KINKOZAN/HUFFPOST JAPAN

入院した子どもに家族が24時間ベタバリで付き添っている実態について、 ハッシュタグ #病院の付き添いを考える を通じ、Twitter上で意見を求めた。

声を送ってきた親の中には、苦しい経験から「おかしい」と思ったことを病院に問題提起したり、何らかの取り組みにつなげたりしている人たちもいた。

その一人が、大阪府の石嶋瑞穂さんだ。

息子が小児リンパ性白血病の治療のため、昨年から今年にかけ、断続的に1年間病院に入院。自身もベッド脇で寝泊まりする付き添い生活を送った。

その間に感じた思いをきっかけに、薬や栄養を体内に送り込むCV(中心静脈)カテーテル専用のカバーを作り、必要な当事者に届けるための活動にいま、取り組んでいる。軌跡を語ってもらった。

■付き添った不安の日々

息子は小学2年生だったとき、急性リンパ性小児白血病と診断され、2016年5月下旬から足かけ1年間、大きな総合病院に入院しました。

治療のために5月下旬から入院し、8月に白血病細胞が血液からなくなる「寛解」の状態になるまで外泊なしで断続的に約3カ月入院したのが最初です。

その後9月からは間に1日単位の外泊や2週間近い自宅生活を挟みつつ入院生活が続き、11月から1月までまた断続的に再度入院、1~3月は自宅で2カ月過ごした後、3月から3度目の入院をし、今年5月末まで病院で過ごしました。

初回の入院では、寛解の状態になるまでは本当に不安な日々を過ごしました。最初の数日間、どのタイプの白血病なのかを調べる検査の結果を待っていたのですが、生きた心地がせず、「この子はどうなってしまうの」という不安で押しつぶされそうだったのを覚えています

また、治療を受け入れられない息子とどう向き合うか、模索する時期も続きました。最初、足の治療で入院するから、と聞かされていた息子は、白血病だと知らないまましばらく治療を受け続け、恐怖感などから治療を極度にいやがることもありました。本当のことを伝えるとショックを受けていたようでしたが、そこからは心を決めたようで、いやだと言わなくなりました。

本当に様々なことがありましたが、治療が功を奏し、いまは退院して学校に通う生活を送ることができています。

■手術直前にカテーテルカバー作り

入院先の病院の小児病棟は、付き添い不要な場合と、原則付き添いを求められる場合がありました。息子の場合は、私が寝泊まりしながら付き添うことになりました。

付き添い生活の中で、外の世界とはまったく違う、病院の中のしきたりに戸惑ったり驚いたりしたこともたくさんありました。

そのひとつが、抗がん剤治療に必要なカテーテルを体に挿入する手術の直前になって、カテーテルを保護する布カバーを作って用意しておくよう、病院から言われたことでした。

抗がん剤を体内に入れる方法の一つに、「CVカテーテル」を胸の穴から体内に挿入し、胸から出ているカテーテルから抗がん剤を注入する方法があります。息子も入院して5日後、CVカテーテルを体に入れる手術を受けることになりました。

幼い子は胸からだらんと下がっているカテーテルの刺入部をいやがり、引っこ抜こうとして出血や傷、感染につながることがある。このため、管に手が触れないよう、布カバーで常にカテーテルを覆い、保護しておく必要があるーーという説明でした。

ただ、市販品はないので、誰かが作って欲しいと言われました。

カテーテルカバーってどんなもの(写真)

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(左上)胸からブラリと出ているカテーテル(左下)カテーテルを曲げてひもでしばり、さらにマジックテープ付きのベルトで留める(右)さらにそれを布で覆い、首から下げる=石嶋瑞穂さん提供
MIZUHO ISHIJIMA

「作って欲しい」と言うものの、どんなものか担当の看護師に尋ねても「病棟にサンプルはないんです。すみません」と言われました。

このころ、息子は水分点滴や服用した点滴薬の副作用で尿の量が激増し、わたしは採尿でほとんど眠れずにフラフラな日々を過ごしていました。

そこにカバーを作って欲しいと言われたのです。「手術前日になってカバーがいるから縫っておけって、そんな心労あるか?」というのが正直なところでした。

それまでの5日間くらい寝ないで頑張って採尿して計って、食事の量や体温と同じく逐一看護師さんに報告してきた。それだけじゃなくて、今度は手作りのカバーを用意しろですか... と。

思ったことは正直に言う性格です。「なぜ、カバーを作らなければいけないんですか」と看護師さんに改めて聞きました。そしたら「みなさんにしていただいているので......」と、すごく申し訳なさそうに言うのです。

それ、おかしいやろって、思わずにいられませんでした。

息子の年齢よりも小さい子のサイズですが、3歳くらいの子どもが使っていた予備用のカバーを借り、寸法を測って型紙を作るところから始めました。

病院のボランティアさんに作ってもらうこともできましたが、事前に布などの材料を用意しておく必要がありました。手術の前夜に、そんなものを買いに行けるはずもなく、また途方に暮れました。

息子のことだから体になれない器具がついていたら抜きたがるだろう。手術が終わって目を覚ますまでになんとか完成しておきたかったので、裁縫が得意な友人に連絡を取り、「悪いけど、これ作ってくれる?」と頼み、カテーテルカバーの写真をメールで送りました。

実は、彼女は、弟さんがわたしの息子と同じ病気を患い、お亡くなりになったという経緯がありました。勝手の分かっている彼女だからこそ、その日のうちに作ってもらうことができました。

入院直後に直面したこの一件が、親に対する病院の意識が、どうもそれまでの世界とは違うことに気づいた最初の経験でした。

■綱渡りのきょうだいたちの世話

息子が入院したことで、ほかのきょうだいたちの世話も綱渡りの状態になりました。

我が家には、子どもが3人います。近くに住む夫の母に事情を話し、私が息子の付き添いで数カ月間病院に缶詰になっている間は、夫の実家でほかの2人の世話をしてもらいました。

ところが入院約3カ月後、夫の母の持病が悪化しました。夫は仕事が忙しくて休めず、家にいる子供たちを見る人間がいなくなりました。

病院に母の事情を話し、私が自宅から病院を通いながら付き添いたい、と伝えました。「それは大変ですね」と言われましたが「でも、日中は付き添いに来て下さい。何時から何時まで来られますか」と念を押されました。

自宅から病院まで片道1時間半かかるので、と説明し、2人の子どもを幼稚園に送った後から、預かり保育も利用して午前11時~午後4時半の日中、病院で長男に付き添いしました。夜は、夫が病院に泊まりました。付き添いと家事や2人の子どもの世話を両方こなすのは正直、病院に付き添いでずっと缶詰になるより厳しい生活でした。

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入院当時を振り返る、石嶋瑞穂さん=大阪府内で
MASAKO KINKOZAN/HUFFPOST JAPAN

■病院で付き添う家族の思いと医療現場

病院には、様々なご家族がいました。昼間お母さんが付き添い、夜は仕事帰りのお父さんが付き添っていた家族や、おばあさんが付き添われているご家族もいました。何年も付き添い続けている方もいます。

コンビニエンスストアで会ったとき、涙をこぼすお母さんもいました。「いつ退院できるか出口が見えないまま、この(付き添い)生活が続くのが、辛いんです」と。キャパオーバーです、と病院には言っているけど、それでもなんとか帳尻を合わせて下さいと言われた、と思い詰めていました。

みなさん、病気の子どもを診てもらっている手前、私がおかしいと思うことに共感はしてくれても、病院に要求したり怒ったりすることは躊躇される方が少なくありません。でもそれは仕方がない面もあります。

また、今の態勢では医療スタッフは限界で、親なしでは病院が回らないのも実際に見てきました。

親が付き添っていない間、小さな赤ちゃんがごろんとなっていて、そのまま誰も来ない様子を見て気をもんだことが何度かあります。でもスタッフの手が足りない。「これが我が子なら、いやだな」と思いました。付き添いをなるべく続けたのも、そういうのを見てきたからです。

■「親の立場」を強制されたくない

とはいえ「親なのだから、我が子に付き添うなど、求められたら何でもするのが当たり前だ」という有無を言わせないような空気にも、強い違和感を感じました。

親なのだから、つらいことでもしてやりたいという気持ちはある。だけど、それは自分から思ってすることであり、他の人から当然のごとく強制される話ではないと思っています。

そういう意味で、忘れられない思い出があります。

一度、下の子が赤ちゃんだったとき、別の総合病院に入院したことがあったのですが、その病院でも寝泊まりしながらの付き添いを求められ、わたしが付き添いました。

尿を採る必要があったのですが、赤ん坊の場合、おむつにそのままするのが普通ですから、採尿も普通のコップにとる方法はできません。そのため、性器の周囲の皮膚にテープ付きの採尿ビニール袋を取り付け、出てきた尿を受ける形で採ることになりました。

ところが、赤ん坊が動くのでテープがはがれ、採尿に失敗することが何度か続きました。

午前4時に採尿の結果を見に来た看護師にきつい口調で「お母さんなんだから、ちゃんとおしっこをとってください」と注意されたとき、思わず「私は看護師じゃありません」と言い返したことがありました。

■カテーテルカバーが普通に買えたら

付き添い生活を通じて、ふつふつとわき上がる「おかしい」という違和感そのものが、解決につなげるためのヒントでした。

長男の手術の直前、病院からカテーテルのカバーを作って欲しいと言われ、こんな時期に、とうろたえたことがきっかけで、ほかにも同じ思いをしている人はいるはずと、思うようになりました。

ベッドサイドに付き添うよう言われているのなら、材料さえ買いに行けない。ならば、ベッドサイドで手縫いができるキットを作って送れば、困っている人の役に立つはず、と考えたのです。

2016年11月、入院していた息子の外泊期間を使って実行に移しました。

まず布などの材料を手に入れて、キットを20個分用意しました。縫製して欲しい人もいるはずだと思い、希望すれば縫製サービスも利用できるようにしました。縫製は息子のカテーテルカバーを最初に作ってくれた友人にお願いしました。

自分のホームページで試みに売ってみると、12月には売り切れました。

さらに入院していた病院の患者の家族からも意見をもらいながら改良したタイプを売り始めると、約半年で100個売れました。

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制作キット。一式630~810円で販売している
MIZUHO ISHIJIMA
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制作キットの完成イメージ。裁縫を頼めるサービスもある
MIZUHO ISHIJIMA

買う人が増えていくと、声が集まるようになり、今まで分からなかったこともだんだん見えてきました。私はカバーを作るよう言われましたが、使うかどうかは、病院によって違うようです。

ある病院では、カバーは不要ですが、カテーテルがブラブラしないよう、肌に直接テープで留めています。すると、テープで留めた部分の皮膚がかぶれてしまうのです。また、別の総合病院では、カバーを作るだけではなく、カバーは洗うごとにアイロンの熱で滅菌し、毎日取り換えるよう指示しているところもあります。

■病室で付き添う親の気持ちをかたちにしたい

カテーテルカバーの製造や販売などをきっかけに、闘病中の子どもとその家族を支えるための「マミーズアワーズ」プロジェクトを始めました。 ここでオンラインショップのページを作り、カテーテルカバーを始め、病気の子どもたちと付き添う家族の方へのお見舞い品を販売しています。

いま、このカバーがより広く使われるための仕組みをどうするか、あちこちに相談しながらすすめているところです。そのなかで、カテーテルを使っている患者さんとその家族から意見を聞く「みんなのカテーテルカバー制作委員会」を立ち上げました。

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みんなのカテーテル制作委員会

今までは家族の手作り品しか選択肢がなく、正式な名前もついていなかったカテーテルカバーに、製品としての名前をきちんとつけ、マスクやガーゼのように使い捨てができる衛生材料として、当たり前に医療機関で使えるようなものにしたいと考えています。

また、病院ごとにカバーがあったりなかったりと対応がバラバラなので、カテーテルを保護する方法を一元化するための指針(ガイドライン)ができないかも考えています。

そのためにいま、カテーテルを利用したことのある人たちの声を集めるアンケートを実施しています。

また最近、お見舞い品の一つとして診察券カバーもできました。

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診察券カバー。カードや証明書がたくさん入る容量が特徴
マミーズアワーズショップ

この商品は、長期入院しているお子さんに今も付き添っているお母さんのアイデアをもとに誕生しました。慢性の病気を抱えたお子さんは、母子手帳のケースには入りきらないくらい、診療券や証明書をたくさん持っています。そうしたものも収められる、容量の大きいカバーがあればいい。彼女のアイデアに、お子さんがいまも治療を続けているお母さんたちと、プロの想いがつながってできあがりました。

プロジェクトを通じ、いままで病室にずっと付き添って、外にほとんど出ることのなかった家族の声を見えるものにして、社会に届ける役割を担えたら、と思っています。

そういうことを考え始めたのも、息子との付き添い生活があったからこそ、と思っています。

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子どもが入院したときの付き添い、子どもを取り巻く病院の環境についてどう思いますか? SNSなどで議論を続け、さらにハフポストで紹介したいと思います。

ご意見がある方は、Twitterで 「#病院の付き添いを考える」 のハッシュタグをつけて体験談や考えを教えて下さい。記者のメール(masako.kinkozan@huffpost.com)でもお待ちしております。

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