参院選公約、医療・介護分野 各党比較【争点まとめ】

各党が掲げている公約の医療・介護に関わる部分を比較した…
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参院選公約、医療・介護分野のまとめ

7月21日に投開票の参院選に向けた各党の舌戦が続いています。アベノミクスや原発、憲法、TPP、外交など大事な争点が目白押しですが、社会保障制度改革をめぐる議論はイマイチ盛り上がりに欠けていますね。とりわけ介護分野の注目度は低く、重要な改革を控えているのになんだか寂しい扱われ方です。

ここでは、各党が掲げている公約の医療・介護に関わる部分をまとめました。内容が具体性に乏しかったり、財源や負担のあり方が曖昧だったりして、公約だけで判断するのはなかなか難しいワケですが、投票先を決めるうえでの参考の1つくらいにはなるのかもしれません。

自民党 「自助・自立が第一」

自民党の公約は、景気の回復や財政の健全化に向けた経済政策にウエイトをおいたもの。社会保障制度の扱いは小さく、総じて具体性に乏しい内容になっている。

基本的な考え方では、「自助・自立を第一に持続可能な社会保障制度を構築する」「消費税については全額を社会保障に使う」と明記。医療分野では、「国民皆保険を堅持し、医師の偏在の是正、診療所の機能強化など、医療資源の適正配置を図る」「再生医療の総合的な推進、がん対策の更なる充実などに取り組む」などと記載した。

「介護」という言葉が出てくるのは、全部で2回のみ。「国民会議の審議の結果等を踏まえて、医療、介護、年金など社会保障制度について必要な見直しを行う」「質の高い医療・介護サービスの提供のため、従事者の処遇改善や研修等の支援に継続的に取り組む」の2つだ。

ただし、病気などを予防して健康寿命を伸ばしていくことについては、より大きな扱いになっている。産業政策に言及した項目のなかで、「2020年に、健康増進・予防、生活支援関連産業の市場規模を10兆円に拡大する」と明記。民間企業を積極的に参入させることで、公的な保険に依存しないでサービスを普及させていく方針を改めて打ち出している。

公明党 「複合型サービスを拡充」

公明党は公約で、社会保障制度の充実により「包容力のある共助社会をめざす」と謳った。

具体策では、真っ先に「地域包括ケアシステムの構築」を掲げ、「24時間365日いつでも利用可能な在宅支援サービスを強化」「複合型サービスを大幅に拡充」と提言。「必要な介護・看護人材の確保、処遇改善を進める」とも書き込んだ。

医療分野では、高額な治療費が必要な人を経済的に支えるための「高額療養費制度」について、「70歳未満の年間所得300万円以下世帯(住民税非課税世帯を除く)の負担上限額を、現在の月額8万円から約4万円に引き下げる」と説明。さらに、治療費を1年単位で計算する新たな上限額を設けるなど、制度を大幅に拡充したい考えを示している。

また、難病対策を抜本的に改革することも約束した。ここでは、「医療費助成の対象疾患の拡大や医療体制の整備、治療法の開発・研究の促進、福祉・介護の充実などに力強く取り組むための『難病対策総合支援法(仮称)』を早急に制定する」と記載している。

このほか、「がん対策・予防医療を拡充」「再生医療を推進」「介護のための休業・休暇・短時間勤務等の制度を拡充」などを盛り込んだ。

民主党 「診療報酬を引き上げる」

民主党は公約で、「地域医療の崩壊を食い止めた」「介護現場での処遇もよくなった」と与党時代の実績を強調する一方で、「でもこれから大丈夫?」「いまの政府だと暮らしは不安」などと自民党を批判している。

医療分野の具体策では、診療報酬を引き上げると明記。「医師不足、看護師不足対策に取り組み、医療従事者の過酷な労働条件を改善する」とした。

また、高齢者医療制度について、「年齢で差別する制度を廃止する」と約束。75歳以上の高齢者だけを対象にした現行の後期高齢者医療制度を撤廃する考えを示している。

介護分野は、介護職員の賃金を月額1万円程度引き上げることが柱の「介護従事者等人材確保法」の制定が目玉。認知症の人とその家族への支援を充実していく方針も打ち出した。また、地域包括ケアシステムの構築に向けて、「かかりつけ医と訪問看護など医療と介護の連携の推進」「サービス付き高齢者住宅の確保」「在宅サービスの充実」などに取り組むとした。

このほか、「チーム医療の強化、有床診療所の活用」「国民健康保険の都道府県単位化」「高額療養費制度の拡充」なども盛り込まれている。

日本維新の会 「リビング・ウィルを制度化」

維新の会の公約は、既存の概念を覆す大胆な政策を打ち出していることが特徴。「批判や反対論から逃げずに必要な改革を断行する」「抵抗勢力と戦い、日本の未来を切り拓く」などと謳い、思い切った改革を提言している。

医療分野では、「各世代の自立を促進するため、医療費自己負担の一律化を進める」「混合診療(治療方法を患者が選べる医療)の適用範囲を拡大する」などと主張。「規制緩和と民間の参入によって医療・福祉を拡充する」「予防医療を保険制度化する」との考えも示した。

また、医療と介護に共通する考え方として、「税金の投入は、低所得層の負担軽減に限定する」と説明。「リビング・ウィル(選択的終末期医療)を制度化し、尊厳ある人生を実現する」とも書き込んだ。

このほか、「処方箋のIT化、オンライン化、電子カルテの導入を促進する」「ビッグデータを活用して疾病対策を促進する」「マイナンバーの活用で公正な課税・徴収体制を構築する」といった方針も示している。介護分野の具体的な施策についての言及はなかった。

みんなの党 「病院・施設経営に民間参入を」

みんなの党の公約には、経済成長に向けた大胆な規制緩和が数多く盛り込まれている。

医療・介護分野では、いわゆる「混合診療」の解禁や外国人看護師の受け入れ拡大、医学部の新設にかかる規制の緩和などを打ち出した。また、「1人からの訪問看護ステーションや単独型リハビリステーションを認める」「医療行為を認められたナース・プラクティショナーの導入」「看護配置基準の柔軟化」なども打ち出している。

さらに、「医療・介護施設全体について、サービスを提供する法人の制度を見直す」と明記。「公益性、公共性が高い事業であっても、適正に運営できると認められる法人には門戸を開放し、サービスレベルの維持向上と効率化を図る」と記載した。

このほか、メディカルツーリズム特区の創設やドラッグラグ・デバイスラグの解消、カルテと薬剤オーダリングのIT化推進なども掲げている。

共産党 「介護の重度者限定をストップ」

共産党の公約は、政府や自民党との対決姿勢を全面に打ち出した内容。社会保障分野でも、安倍政権のこれまでの考え方を徹底的に否定している。

公約では、「手当たり次第に給付を削るだけの改革が議論されている」と指摘。70歳から74歳の医療費の窓口負担を2割にすることや、介護サービスの対象を重度者に限定することなどを例にあげ、「大改悪をストップする」などと訴えた。

医療・介護分野の具体策では、「医療費の窓口負担や国保料を軽減し、将来は窓口負担ゼロの医療制度を目指す」「診療報酬の引き上げや医師・看護師の計画的増員で医療崩壊を打開する」「特養の待機者をなくし、介護サービスの取り上げをやめさせ、介護保険料・利用料の負担減免をはかる」などと拡充策を多く記載。気になる財源については、「消費税に頼らない別の道」を選択する考えを示し、富裕層や大企業への増税、ムダな歳出の削減、経済成長による増収などで賄うと謳っている。

社民党 「要介護認定を3段階に簡素化」

政策を実行できるかどうかは別にして、社会保障についての記載が最も多かったのが社民党の公約だ。

医療分野では、「国民皆保険制度を堅持し、所得の格差が医療内容を左右する混合診療は導入しない」「公費を投入して国保の強化に取り組む。保険料の軽減制度を充実し、無保険者をなくす」などと主張。75歳以上が対象の後期高齢者医療制度については、「病気になるリスクの高い年齢層を他と切り離し、高齢者の医療費削減を目的に設計されている」と批判し、見直しに取り組む姿勢を示した。

また、「社会保険病院や厚生年金病院の譲渡をやめさせ、機能強化を進める」「公的病院の統廃合に歯止めをかけ、地域の病院を守る」などと記載。「各都道府県が救急搬送システム、受け入れ医療機関の確保に責任を持てるように支援する」とした。

介護分野では、「要支援を介護保険の対象から外すことを阻止する」と明記。「軽度者のサービスを切ることは介護の社会化に逆行し、介護保険への信頼を揺るがす」と訴え、「軽度者であっても生活に必要なサービスを利用できるようにする」と約束した。保険料の段階区分を細かくすることや、要介護認定を3段階程度に簡素化することも盛り込んでいる。

また、介護保険3施設を現在の倍に増やすことや、介護療養病床を削減・全廃する計画を中止する考えも打ち出した。

このほか、医師・看護師の人数を増やすことや、緩和ケアの充実に取り組むこと、認知症の人とその家族への支援を拡充することなども書き込んだ。

生活の党 「地域医療基本法を制定」

「生活を守る」とのキャッチフレーズを掲げた生活の党の公約だが、社会保障制度の扱いはそう大きくなく、分野ごとに1つか2つの政策が記載されたコンパクトな内容になっている。

医療・介護の項目は3つ。「公的な関与による医師の適切な配置を含んだ地域医療に係る基本理念の明確化、総合的な施策の確立を内容とする『地域医療基本法』を制定する」「地方自治体が自らの責任のもとで主体的に施策を進めていく仕組みを構築し、介護・福祉等を進めていく」「地域包括ケア、在宅介護支援体制を強化して、介護制度を充実させる」などと書かれている。

みどりの風 「NPOやボランティアを活かす」

みどりの風の公約は、改革の理念を明示したうえで、それにもとづく具体策を箇条書きでまとめたもの。

社会保障分野の基本的な考え方としては、「だれもが納得できる負担と給付のバランスのとれた制度を確立する。最後はしっかり国が支えるセーフティネットの再構築」「予防を充実して元気で長生きを実現」などと記載。具体策では、「医師不足の解消」「過剰な医療の抑制による医療費の適正化」「シェアハウスの促進」「認知症高齢者を地域で見守る医療介護ネットワークの構築」「NPOやボランティアの力を活かす公共福祉社会の実現」などを打ち出した。

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