EVで快進撃するテスラから学ぶべきこと

電気自動車モデルSでブレークしたテスラの株価がどんどん上昇してきています。イーロン・マスクCEOが所有する資産の評価額が1日で5億7000万ドル(約550億円)増えたといった記事もありました。
|

電気自動車モデルSでブレークしたテスラの株価がどんどん上昇してきています。イーロン・マスクCEOが所有する資産の評価額が1日で5億7000万ドル(約550億円)増えたといった記事もありました。

売上高を見ると4-6月期の売上は4億514万ドルで、1-3月期の5億6,179万ドルからは落ちたものの、アナリストの予想を上回り、また営業損益で黒字となったことが株価を押し上げたようです。前年同期の売上高が2,665万ドルだったことを考えると、15倍以上を売ったのですからそれこそ桁違いの伸びです。GMもこのテスラ躍進に危機感をつのらせているとか。

さて、他の電気自動車が苦しむ中で、なぜテスラだけが成功したのでしょうか。

いくつもの要因がありますが、なんといってもテスラがはじめて乗用車として実用化したことでしょう。家庭用コンセントから充電可能で、一度の充電にかかる時間はわずか45分で、一回の充電でおよそ500Km弱の走行が可能だといいます。 他の電気自動車が、いかに低価格化するかで苦しむなか、テスラは、価格よりは、最低限の実用性を実現することに大きく発想を変えたことがなによりも成功の原因でしょう。

もちろん走行性能をあげるために、徹底した軽量化が行われていたり、床下に敷き詰められたリチウム電池が車の剛性を強化することに使われていることなど技術面で優れていることもあるでしょうが、電気自動車をたんに環境のための自動車というだけでなく、かっこ良く、最高出力416PSの電気モーターをリアに搭載する後輪駆動で、0-100km/h加速は4.4秒と優れた加速性能をもった、しかもステータスを感じるプレミアム・セダンに仕上げたことです。ブランディングも見事です。 日本でモデルSを試乗した印象がブログ「Branding Creator's Notebook」でまとめられていますが、異次元な体験が得られたことが伝わってきます。

そして早速乗車。 そばに寄ってドアに触れようとすると、 ドアノブがスッと飛び出してきます。感動。 座席に座ると、いきなり目をひくのが中央にある巨大iPadのようなコンソールパネル。 やばい、まじでカッコイイです。(語彙の少ない若者のようですいません。。。) 操作と言いますか、インターフェースは、タブレット端末をいじるのと全く同じ。 クルマの状況についてや、走行に関わることをはじめ、 シートポジションの記憶、オーディオ、エアコン、オープンルーフの開閉などなど、 各種コントロールはここで全て行われます。 ナビは当然 googl maps 。素敵すぎます。 日本国内でどういう仕組みになるのか聞き忘れましたがネットには当然接続されていて、 デフォルト設定されていたWEBページは米国テスラ社の株価チャートでした(笑)

こちらの試乗記を見ても魅力的な車のようです。

従来の自動車産業の発想では、こういった電気自動車のポジショニングは生まれてこなかったことは事実で、盲点をついたことになります。官庁などの公的機関の需要をあてにしているとできないアプロ-チです。 こういったテスラの成功の背景こそ学ぶべきことがあるように感じます。

第一に、イーロン・マスクCEOが自動車関連とは無縁な、世界最大規模の海外オークションサイトeBayの膨大な取引を支える決済サービスPayPal社のもとをつくった人で、IT業界の出身の起業家です。だから自動車業界とは異なるアプローチができたのではないでしょうか。革新は周辺からやってくるという格言そのものかもしれません。だから違った発想ができた、しかも押しも押されぬ起業家だということです。

直販であるところも、自動車業界とは異なるしがらみにとらわれない発想です。

それとテスラの成功は日本が支えてきたともいえそうです。まずはテスラの厳しい時期にトヨタが資本提携し救済しただけでなく、開発や生産でもトヨタのサポートがあったことです。日本の技術が下支えしたのです。

さらに意外というと失礼になってしまいますが、テスラSモデルの長距離走行を支えているのが、パナソニック独自の高容量セルだということです。パナソニックの発表によると、6月には「モデルS」へのリチウムイオン電池セル出荷実績が1億個を達成したそうです。

起業家の存在、そしてものづくりのネットワークがあってはじめてモデルSが登場してきたことになります。しかし「ものづくり」は、下支えの役割は果たせたとしても、それだけではモデルSは生まれてこなかったはずです。ビジネスの成功には、もう一次元高い発想が求められるということでしょう。ともすれば発想を「ものづくり」というところに日本の産業を閉じ込めようとする風潮がありますが、高い演奏の技術は必要だとしても、それだけですばらしいオーケストラの演奏が生まれない、感動は生まれないのと同じことです。

それにしてもイーロン・マスクCEOはチャレンジ精神の高い、夢多き人です。実際に建設されるかどうかは別の話だそうですが、音速に近いスピードで動く太陽光発電の輸送機関「ハイパーループ」という構想をぶちあげています。地上に並んだ鉄塔の上に据え付けられたチューブの中を行き来する今までにない乗り物です。チューブの中は低圧で、電動コンプレッサーのファン付きのカプセルが空気のクッションの上を滑るように動く仕組みだそうです。

夢をぶちあげる、ビジョンを生み出すエネルギーと、企業マネジメントの力、さらにネットワークの大切さをテスラは物語っているようです。