わかったぞ!一目ぼれの脳内の仕組み

異性の存在が性ホルモンの分泌をすぐ変化させる脳内の仕組みを、早稲田大学教育・総合科学学術院の筒井和義教授と戸張靖子研究員らがウズラの実験で突き止めた。一目ぼれを分子レベルで解明する発見として世界的に注目されている。7月16日付の米神経科学会誌Journal of Neuroscienceのオンライン版に発表した。
|

異性の存在が性ホルモンの分泌をすぐ変化させる脳内の仕組みを、早稲田大学教育・総合科学学術院の筒井和義教授と戸張靖子研究員らがウズラの実験で突き止めた。一目ぼれを分子レベルで解明する発見として世界的に注目されている。7月16日付の米神経科学会誌Journal of Neuroscienceのオンライン版に発表した。

動物は、群れで生活するか、はぐれて1匹で過ごすか、雌雄のつがいでいるか、社会環境の変化に伴って、行動や生理条件を急速に変える。ヒトも、好みの異性と向き合えば、性ホルモンの分泌が変わり、胸がときめくことは誰もが経験する。しかし、社会環境の違いが脳の中にどのような変化をもたらしているか、は謎だった。

性ホルモンの分泌はかなり込み入っている。脳の深部にある視床下部から生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が分泌されて、下垂体に作用して生殖腺刺激ホルモンを放出させ、次いでそれが生殖腺に働きかけて性ホルモンを出させて全身に行き渡らせる。筒井教授は2000年に、生殖腺刺激ホルモンの放出を抑制する別の脳ホルモン(GnIH)を視床下部から発見した。GnRHがアクセル、GnIHがブレーキになって性ホルモンの分泌を調節していることを解明してきた。

研究グループは今回、社会的な環境の変化が瞬時に性ホルモン分泌を変える仕組みを探るため、ウズラで実験した。ウズラは、雄が鳴き声で盛んに雌をおびき寄せるが、雄が雌を見ると、数秒後に仲良くなって交尾するという素早い行動変化を示す。ひとりぼっちの雄と、透明なプラスチックの壁越しに雌と見合いさせた雄の脳のGnRHとGnIHの変化を調べた。

その結果、雌を見た雄の脳でブレーキ役のGnIH だけが増えていた。さらに雌と見合いした雄の血中の生殖線刺激ホルモン濃度が下がり、男性ホルモンのテステステロンも低下していた。次に、雌がいるという情報をGnIH へ伝える脳の物質を調べた。雄が雌を見ると、GnIH を作る神経細胞が存在する脳の部位で、注意や覚醒に重要な神経伝達物質のノルエピネフリンの放出が一過的に増えていた。

さらに、ノルエピネフリンを雄の脳に投与したところ、GnIHの放出が増えて、血中の生殖腺刺激ホルモン濃度が下がった。ノルエピネフリンを作るニューロン(神経細胞)がGnIHニューロンに投射していること、GnIHニューロンにノルエピネフリン受容体を存在していることも明らかにした。

筒井教授は「ウズラの雄は雌を見たとたんに、鳴く行動をやめて雌と寄り添い、交尾する。その行動の変化には、瞬時に男性ホルモンを減らす仕組みが存在していることがわかった。ノルエピネフリンとGnIHはヒトや多くの動物に共通して存在する。ヒトの一目ぼれには、さまざまな要因が絡んでいて複雑だが、基本的な仕組みはウズラと同じだろう」と話している。

関連リンク

早稲田大学 プレスリリース