たかが答弁、されど答弁。舛添知事、「まずは養育家庭(里親)措置を優先」と明言!

獲得目標の一つであった、舛添知事自身の口から「まずは里親委託を第一に考える」という言質を引き出すことができました!
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予算委員会での最初の質疑が終わりました!

30分の持ち時間で、すべて読みきって&アドリブも少し入れながら、

きっちり30分以内に収まったので一安心です。

持ち時間はたったの30分ですが、この一瞬のために

視察から調査研究まで含めたら数十時間、原稿を書いたり読む練習だけでも

数時間を費やしているかと思うと、終わった後は安堵感や達成感でいっぱいです。

某久喜市の貴志市議が

「議会は、株主総会のようなもの」

と例えていて、言い得て妙だと思いました。

波乱がなければ淡々と進む株式会社の株主総会も、

あの裏で数十時間に及ぶ裏方の準備や根回しが行われていたりします。

表面にアウトプットとして出てくるのは、

何事でも一瞬にしか過ぎないということなんですねえ。。

社会的養護について質問することは以前に述べた通りですが、

どうにか今回は獲得目標の一つであった、舛添知事自身の口から

「まずは里親委託を第一に考える」

という言質を引き出すことができました!

※社会的養護・児童養護・里親政策に関する過去記事はこちらから。

これまでの議会や委員会でも多くの議員たちが

里親委託などの推進を訴え、知事が答弁に立つこともありましたが、

その答弁は

「東京都は養育家庭、ファミリーホーム、グループホームなどの家庭『的』養護を推進する

というものでした。

ここには、大きな落とし穴があります。

養育家庭=里親のことであり、ファミリーホームもほぼそれに準じる制度ですが、

グループホームは分類すればあくまで「小規模な施設」です。

そしてこれこそ、東京都が3つの中で実はもっとも力を入れようとしている部分でもあります。

普通の家庭と遜色ない一軒家で、少人数で生活したとしても、

主たる保護者・世話人が頻繁に変わるグループホームでは、

継続的な愛着関係を育成するのが難しいことは、多くの有識者が指摘しています。

グループホームを運営するのはあくまで施設のスタッフなので、

単純に計算すれば1日の3分の1(8時間)しか子どもと一緒にいることはできません。

当然、休暇や退職などもあるでしょう。

専門用語でパーマネンシー・ケア(永続的な愛着関係)と言いますが、

この構築が困難なグループホームはやはり「里親」とは明確に異なる存在であり、

あくまで「家庭的養護」であっても「家庭養護」ではないのです。

よって私は今回、なんとかこの答弁を切り分けて、

「東京都が同時に推している3つの中でも、まずは養育家庭(里親)が優先されるのだ

という言質を知事本人の口から取りたかったのです。

ハタから見たら違いのわからない小さなことかもしれませんが、

議会の答弁というのは

知事(本会議・予算委員会)>局長(本会議、予算・決算委員会)>部長(通常の委員会)

という順番で、具体的な答弁をもらうことが格段に厳しくなります

「知事(局長)はそこまで具体的なことは答弁できません!」

「◯◯して××という内容で、同じことは述べておりますので...」

なんて手を変え品を変え、押し返されちゃうんですね。

ここから、それはもう切った張ったの闘いが長時間に渡って始まるわけです(苦笑)。

裏を返せば、それだけ知事答弁には重みがあり、

行政の行動を縛るものになりえるということでしょう。

この知事答弁を獲得するのは非常に険しい道程でしたが、以前の本会議で

上田都議が福祉保健局長から同程度の内容を答弁として引き出していたことが決め手となり、

今回はとうとう知事本人から「養育家庭(里親)優先」という具体的な答弁を獲得することできました!

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一人の力ではできない、議員同士の、会派内連携プレーの賜物です。

...たぶん、力説してもあまり伝わらないと思うんですけど、

きっとこれが大きな一歩になると思います!

獲得目標の一つは達成できましたが、

もちろんまだまだ課題があります。里親優先とは言われましたが、

「家庭的養護の割合を、平成41年度までに6割に引き上げる」

などの知事答弁は「15年後?!」という感じでしたし、

これもまた家庭「的」ですので、グループホームが混在しています。

そして新生児里親委託・赤ちゃん縁組に関しても、

専門家の意見を聞きながら検討する、との答弁にとどまりました。

この部分は引き続き、しつこいくらいに働きかけていきたいと思います。

これで満足してはまったくいけないのですが、これまでの記録の中で、

もっとも踏み込んだ答弁を引き出せたことは確実なので、まずは達成感!

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ネット中継で見ると、こんな映像だったようです。笑

(FacebookつながりのMさんから拝借!)

休むまもなく予算委員会の2回目の質疑、

そして今週は水・木と厚生委員会があります。

さらには明日は当大会の準備でこれから永田町というね...(瀕死)。

これからも予期せぬ妊娠・出産をする母親たち、

保護を必要とする子どもたちのために活動を続けて参ります。

ご指導ご鞭撻をいただければ幸いです。

それでは、また明日。

■以下に社会的養護部分の質問を全文掲載!

(アドリブや直前で変えた部分もあり)

最後の項目として、社会的養護についての質問に移ります。近年、ドラマやドキュメンタリーの放送で社会的関心が高まり、徐々に改善へと向かいつつある要保護児童への社会的養護ですが、手厚い高齢者福祉などに比べればまだまだ不十分な状況です。我が国及び東京都の過度の施設偏重と家庭的養護の致命的少なさは多くの議員や有識者が指摘をしているところですが、まずは児童養護施設の人員配置・予算措置についてお伺い致します。

要保護児童を集団で保護する児童養護施設では、その職員の人員配置の規定は国によって子ども5.5名対職員1名と定められています。そこに東京都はこれまで独自加算を行い、子ども5名対職員1名までの加配を認めていました。これにより東京都の児童養護施設における児童福祉は大いに増進されたものと、高く評価されるところです。

さて今般、国は子ども子育て支援新制度の中で、グループホームなどの家庭的養護の促進・施設の小規模化を進めるためにこの職員配置基準の改善を目指し、まずは4:1の割合まで配置することを決定いたしました。これは大きな前進ではありますが、国が目指すグループホーム・小規模施設の運営を行う適正に行うためには、まったく不十分な数値です。

グループホームなどは24時間の職員の常駐が必要になる運営形態です。ところが前述の職員配置に基づき、労働基準法に則ってこれを運営しようとすれば、専門知識を持った職員は毎日夜勤・常駐をすることができず、週の半分以上をアルバイトに頼るという状況が発生します。これは大変危険な状態であり、これを防ぐために現実としては、現場職員による労働強化・超過勤務に頼ることが容易に想像されます。

児童養護施設の人員不足はたびたび問題になっており、職員の早期退職なども相次ぎ、子どもたちに十分な育成環境を提供できない大きな要因ともなっています。こうした状況を踏まえ、東京都が行ってきた0.5人分の独自加算は、4対1の配置となり、それが基準として設定された後も継続して行うことが望ましいと考えますが、東京都の見解をお伺いいたします。

次に、里親委託並びに特別養子縁組の促進についてです。東京都の施設偏重の傾向と、里親委託・特別養子縁組への取組みの貧弱さについては、先般の一般質問におけるわが会派の上田令子都議を初め、多くの議員たちが再三に渡って指摘してきたことなので、ここでは改めて述べることは致しません。

多くの質問に対し、そのたびに東京都は「家庭的な環境のもとで愛情に包まれながら健やかに養育されることが望ましい」「まずは養育家庭への委託を検討する」などの答弁をされるものの、その実態は遅々として進んでおりません。

特に、愛着関係を形成する上でもっとも家庭環境が重要と言われる新生児については、平成23年度から25年度までで0件、生後一ヶ月以上の0歳児にまで幅を広げてもたったの4件に過ぎないことが、資料要求によって明らかになりました。

一方で、里親登録をしながら未委託となっている里親が、東京都には毎年200件弱、数字にして40パーセントも存在しています。もっとも保護者との結びつきが育まれる生後まもない時期に、里親措置ができる可能性が大いにあるにも関わらず、なぜ新生児の乳児院措置がこれほど多く、そして長いのでしょうか。

先般の上田都議からの同様の質問に対しては、「丁寧な対応が必要であり、十分な期間を要すると認識」との答弁がありました。ここについて、私が児童養護施設や現場のスタッフに実際にヒアリングを行ったところ、「子どもに障害や病気があるリスクが存在する」との回答が多く得られました。

場合によっては施設措置が望ましい場合もゼロではありませんが、障害や病気の有無に関わらず、子どもたちには誰しも一義的には家庭的な環境を得る権利があるはずです。特別養子縁組を前提に慎重な委託をしていると考えるにしても、民法によって六か月間の猶予期間があります。

この検討期間は一体「誰に向けた」「何のための」ものなのか、特に前者を中心としてお聞かせください。

児童のためであれば、まず何よりも生後まもない時期から愛着関係を形成することが重要である、この視点がやはり不足しているように感じます。他国や他県の先進事例をぜひ参考にしていただきたいと思います。

ここに関連して、里親委託や特別養子縁組が進まない理由に、私の調査に対して児童相談所や現場スタッフの多くが、「実親の不同意」を挙げました。誰かに自分の子どもを取られてしまうかもしれない、だから施設に入れておきたいという実親の感情があることは想像ができますが、こと親権が移動しない里親については、これはまったくの誤解です。

そもそも、社会的養護は子どものために存在する制度であり、子どもが家庭環境を得ることは我が国も批准した通称「子どもの権利条約」によって保障されています。資料要求したところ、統計的なデータは不存在でしたが、「実親の不同意」を理由として里親措置を行わないとすれば、それはどのような根拠法令に基づいての判断なのでしょうか? 伺います。

それでは確認ですが、子どものためには施設より里親が相応しいと考えられる場合でも、実親の不同意を理由に施設措置を選択される子どもたちが一定数いるということですね。また、同28条には、一定の条件の元では親の同意なく社会的養護を、措置方法まで含めて行えるはずですが、こちらを適用して要保護児童を里親措置することはできないのでしょうか。伺います。

答弁をいただいた通り、28条第1項の申立てにより、里親委託は可能なはずです。にも関わらず、これが行使されて里親委託とされる件数は非常に少ない。28条申立ては、深刻な事態にのみ使える「最後の手段」ではなく、子どもが家庭を得る権利を行使するために、積極的に活用するべき選択肢です。

家庭裁判所への手続きなど、現場に非常に負荷がかかることは理解いたしますが、児童相談所にはそれも踏まえた人員体制を敷くべきですし、この申し立てによって一人でも多くの子どもたちに家庭環境が与えられることを、強く要望いたします。

色々な問題点を取り上げて参りましたが、とにかく私およびわが会派、そして恐らく、この問題を取り上げてきたすべての議員が申し上げたいのは、里親委託や特別養子縁組、特に新生児からの里親委託・特別養子縁組を進めてほしい、子どもたちに家庭を与えて欲しいという点に尽きます。

グループホームなどの施設の充実は、現状よりは確かに前進です。しかしながら、これにはパーマネンシー・ケアなどの概念が欠如しており、ここに注力し過ぎることはボタンの掛け違いです。小規模になることだけでなく、主たる保護者・世話人が容易に変わらない環境を整えてこそ、子どもたちに充分な愛着を与えられます。

これはアメリカの医学書「精神疾患の診断、統計マニュアル」を始め多くの有識者が指摘をしており、自明とされるところです。

東京都長期ビジョンにおいても、詳細版には里親を含む「家庭的養護の割合向上」と記載されているものの、そのエッセンスである概略版の内容はすべて施設の充実に関わることであり、相変わらずの施設志向が見て取れることを、私は非常に危惧しています。2年かけて作成された児童福祉審議会の答申内容も、残念ながら施設を中心としたものです。

また一方、児童虐待死の中でもっとも多いのは、0歳0か月0日です。生まれてすぐの新生児に対応する、予期せぬ妊娠に対して妊婦の時から対応できる、いわゆる「愛知方式・赤ちゃん縁組」の仕組みがあれば、こうした悲劇の一部は回避できたかもしれません。虐待死の防止のためにも、愛着障害を防ぐためにも、親子の結びつきを強めるためにも、新生児を病院から直接里親委託する方法は極めて有効です。

基本的に乳児であれば六か月以上経過を見るという、慎重な対応をしてきた東京都が最初の一歩を踏み出すことは、勇気がいるのかもしれません。しかし、新生児を里親措置するこの赤ちゃん縁組の方式をスタートした矢満田氏の著作によれば、赤ちゃん縁組のケースで不調になった例はほぼ皆無であると言います。平成23年にはついに、厚労省がこの「愛知方式・赤ちゃん縁組」を有用であると認め、里親委託ガイドラインを定めました。

ここまでの実績があれば、あとは政治的な決断です。家庭的養護を進めていくとの姿勢は過去の答弁から理解をしておりますし、現状に比べれば前進ではありますが、グループホームや施設の小規模化を里親と同列に扱う姿勢は疑問視されますし、施設措置が約9割に及ぶ東京都の現状は、国際的に見ても大変遅れているものと評価されてしまっています。

児童福祉でも東京世界一を目指す舛添知事には、子どもたちに継続的な愛着関係を与える里親委託、特にこの新生児を始めとする里親委託の推進を中心として、さらなる家庭的養護の増進に臨む決意をお示しいただきたく、最後にぜひお伺いさせてください。

(2015年3月16日「おときた駿公式ブログ」より転載)