「情報はつねに広がりたがる」とは? メディアの成熟とコンテンツづくりの行方

渋谷のloftwork Labで開催された「Prophet(プロフェット)未来について」というイベントに参加してきました。
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Keiichi Sato

先週末、渋谷のloftwork Labで開催された「Prophet(プロフェット)未来について」というイベントに参加してきました。これはサザエBotを運営するナカノヒトヨさんがさまざまなジャンルのゲストを招いて「未来」について語り合うイベントシリーズ。

初回は、アート・ディレクター/クリエイティブ・ディレクターの重冨健一郎さん、イラストレーターのたかくらかずきさん、メディアプロデューサー/元KAI-YOU.LLC.代表の武田俊さんをゲストに迎え、「メディア」について語るというものでした。

ゲスト3名とも独自の問題意識やアプローチをとっている方々で、メディアのメインストリームからあえてはずれています。そのため、以下のツイートのように、いろいろとメモを取りたくなるようなパンチラインが多かったです。多分野を横断していったのでたいへん刺激的でした。

■情報はつねに広がりたがる性質を持っている

最初に、昨年はじめから日本でも拡散/流通に強いバイラルメディアが目立つことから、ナカノさんの「情報は広がりたがる」という言葉が紹介されました。自身のコラムでは以下のように表現しています。

バイラルメディアの出現が意味する通り、情報はつねに(ときに作者を置き去りにしてでも)広がりたがる性質を持っているから、あなたは身体から離れて拡散され続けることばを追いかけ回しては、欠け続けるなにかの穴埋めに必死だ。しかも「質」ではなく「量」で。

「足音~Be Strong」いまという時代は── - いまトピ

武田さんはバイラルメディアについて「存在そのものはありだけれど、コンテンツの扱い方が悪い」と発言。重冨さんからは、現在のメディアがPVやリーチなど計測可能な数値がマーケットに対する影響力となっているという問題意識もシェアされました。

■メディアは成熟するとすぐに答えに直結させたくなる

そして、そもそものメディアというものを紐解いていくためのキーワードとして、芸能・技芸を日本独自のかたちで体系化したものを指す「芸道」が挙げられました。芸がコンテンツ、道がメディアといったかたちで、芸と道がつながるとカルチャーになるという捉え方です。

バイラルメディアの問題では、コンテンツ(芸)をないがしろにして、メディア(道)という名のスタイル/体系/システムのほうにかなり重心を傾けているため、たかくらさんは「道の暴走」と表現していました。

また、新しいメディアづくりについて、道をつくってもフォロワーがいないと意味がないけれど、どんなコンテンツでもルートができれば行き場がなくなる、といった言葉も印象的でした。

メディアが成熟するとすぐに答えに直結させたくなるようなこともそのひとつだそう。いまソーシャル上に「〜するための〜の方法」といった答えの安売りが流行っていることからも共感するところです。

このようにメディア/システム/体系/ルールは成熟の末に朽ちていく性質を帯びていくため、コンテンツの質を上げつづけるしかないという発言もありました。たとえば人気ゲームのキャラクターは、ゲーム以外にも映画やアニメ、おもちゃ、スタンプなどメディアを問わず展開されることも珍しくありません。

■「人間の特権はエラーを起こすこと」

メディア論とは違うトピックも話されました。ナカノさんはTEDxTokyoをはじめさまざまなところでAI(人工知能)について話をしています。そこで、人間がAI(道でありルールでありシステム側)に勝つにはなにが必要なのかという議論もありました。

結論としては、ふざけることやはずれること、ギャグ、サプライズなどの要素が挙げられ、「人間の特権はエラーを起こすこと」がAIに勝つ方法ではないかと議論されました。

イベント全体を通してはこのほかにも、ツイッターとフェイスブックというメディアの違いや、メディアが成熟したときにはアップデートを促すものが必要だということなど、ジャンル横断的な話がおもしろかったです。

このイベントシリーズは全12回あるのですが、個人的にはメディアアーティスト・落合陽一さんがゲストの「魔法×未来」、ピースオブケイク代表・加藤貞顕さんがゲストの「コンテンツ×未来」の回もおもしろそうだなあと思います。

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(2015年1月19日「メディアの輪郭」より転載)