「解約殺到」でも「奇っ怪買収」で拡大する「脱毛エステ」の危うさ--内木場重人

そして売り上げの2~4割をつぎ込むという巨額の広告費による大量の広告も、先述の通り、再び行政処分を受けかねない内容だ。新たな被害事案の発生が懸念される。

初夏を迎えるこの季節、若い女性をターゲットにした広告がやたら目に入る。脱毛サロン、エステサロン。が、この業界にはあまりにも大きな問題が常に内在しており、そして身体的金銭的被害も後を絶たない。

「これって詐欺ですか? とんだ悪徳業者です。私は20万円ほど返ってきていません」

「私は計77万2716円です」「『こちらでは分からない』の一点張り」

「期限を過ぎても返金されない」「返金しないくせにのうのうと営業をしているところが許せません」

これらのネット上の書き込みは、今年4月5日、東京地方裁判所で破産手続開始決定を受けて倒産した「(株)グロワール・ブリエ東京」(以下GB社)が展開していた大手脱毛サロン「エターナル・ラビリンス」(以下エタラビ)に対するもの。

エタラビは昨2016年8月24日、消費者庁から「特定商取引法違反」を認定され、9カ月の業務停止処分を受けていた。格安の定額制と勧誘しながらその実、高額の複数月契約だったなど「虚偽誇大広告」(同法第43条)違反を問われた。

先の書き込みは、複数回の施術を前提に高額の「前受金」を支払ったものの実際には予約が取れず、解約を申し出ても返金がなされないと相談し合っている被害者たちのサイトである。

民間信用調査会社によれば、GB社は倒産時、前受金が約42億円計上されていたのに、決算上の現預金はわずか1000万円弱しかなかったという。返金できないはずである。

フォーサイトでは2年前、当時最大手の脱毛エステだった「ミュゼプラチナム」について、医師法違反疑惑や前受金商法の危うさを複数回報じた。直後、同社は指摘通りに経営破たん。その後、東証2部上場のシステム開発会社「RVH」の支援を受け、子会社化された。

今回倒産したエタラビもこのRVH社の傘下に入った。さらにRVH社は今年2月、経営危機に瀕していたエステ最大手「たかの友梨ビューティクリニック」も買収した。

そもそもの本業は半導体開発なのに、まったくの異業種であるエステ業界で相次いで大型買収を繰り返すRVH社。2部とは言え上場企業であるだけに、資金力、経営(再建)手腕に長けているということなのか。

が、実態はかなり疑問符がつく。しかも、経営トップにはかつて「反社会勢力」との濃密な関係もあった。

キャッシュは1円も動かず

「ミュゼ」「たかの」「エタラビ」それぞれの買収・再建手法は、一種奇術的錬金術的である。

非上場であった「ミュゼ」の運営会社は破たん時、約590億円もの巨額簿外債務があった。本来であれば裁判所を通じた法的整理をすべき案件だが、裁判所の介入によって乱脈経営の責任を問われることを恐れたとの指摘もあった。詳細は、前述のフォーサイト過去記事を参照されたい。

この負債を抱えた会社はそのままにし、事業だけ新たに作った新会社に譲渡。これをRVH社の100%子会社として、同じ「ミュゼ」ブランドで現在も営業を続けている。「再建は順調」とRVH社も「ミュゼ」も喧伝するが、果たしてそうか。何しろ、負債が消えてなくなったわけではない。

負債の大半は、顧客との契約時にあらかじめ全額受け取った施術代金(未消化役務)で、解約返金を求められれば応じなければならない。故に、会計上は負債となる。実際、旧社は返金に応じるだけの資金繰りが困難になったため、破たんした。

買収方法はまるで奇術だ。本来、RVH社は旧ミュゼを買収する際、現金なり資産なりの対価を支払わねばならない。が、旧会社には約590億円の負債があったが、この負債すなわち未消化の役務を譲り受け事業として継承するため、債務を肩代わりするということで対価の相殺とした。つまり、キャッシュは1円も動いていない。

株価も急落

「たかの」買収手法も奇っ怪だ。RVH社は2月14日、「たかの」運営会社「(株)不二ビューティ」の株式67.7%を約54億円の「現金」で取得し、残りは自社株との交換で100%子会社化すると、2017年3月期第3四半期決算短信で発表した。が、前期のRVH社の保有現預金は、決算資料によれば6億円強しかない。市場関係者からは訝しむ声が噴出した。

するとそのわずか10日後、今度は現金ではなく、保有不動産で代物弁済すると発表し直した。先に「不二」社の親会社「G.Pホールディング」から株の譲渡を未決済のまま受けて完全子会社とし、そのあとで「不二」社保有の不動産を54億円分の代金として引き渡すという手法だ。

前述の「ミュゼ」買収と同様、RVH社としては1円の現金も動かしていない、まさに錬金術。が、この不動産の評価が54億円に相当するかの検証は正しくなされたのか。RVH社が開示したIR資料には当該不動産の概要は何の説明もなく、単に評価額が記載されているのみ。

加えて、「同不動産の運用収益については、株式評価の算定基礎となる5カ年事業計画には含んでおりません」ともある。収益も定かでない「非営業資産」である不動産に54億円の評価をつけるには、相当の根拠が必要だろう。

こうした不透明な手法は、当然、株式市場にも影響を及ぼした。RVH社の株価をみると、最初の発表前日まで908円だったものの、発表翌日は売りが殺到して出来高も3倍以上に膨らみ、一挙に90円以上も下落した(終値814円)。10日後の発表では不透明さが増したため、回復材料にはなりえなかった。

その後は一時616円の最安値を付け(5月18日)、現在は600円台後半を推移している(6月15日)。奇異な買収劇が株主はじめステークホルダーに負の影響を及ぼしたことは確かであろう(ちなみに16、19、20の3日間は逆に突如、出来高もそれ以前の10倍に膨らみ、株価は100円以上の異様な急騰をしている)。

また、「たかの」は従業員への残業代不払いなどで複数の裁判を起こされてブラック企業のイメージが定着し、解約が殺到したことで経営危機に陥った。その前受金は160億円といわれるが、全額応じられるだけの現預金は「たかの」にもRVH社にもない。

意図的に誤解させる広告手法

「エタラビ」支援も危うさが漂う。昨年の業務停止からの信用不安を払しょくするため、グループ全店を新ブランド「ラットタット」に変更したものの解約がとまらず、昨年9月にRVH社の傘下に入る。そして4月の倒産直前、事業を「ミュゼ」に譲渡した。

そして「ミュゼ」は業界団体を通じ、「少しでも会員様の被害を軽減する為に、今般の優遇措置をご提示」と案内しており、何とか解約をさせずに顧客を丸ごと取り込もうと苦心しているのが見てとれる。

が、その「優遇措置」も、実に巧妙な仕掛けが施してある。説明では、1回当たりの定価の35%を支払うだけで継続してサービスを受けられると強調し、しかも、いかにも安いと思い込ませるためか、わざわざ4分の1の価格「2309円」(エタラビ会員)を表示している。

しかし、この優遇措置を受けられるのは、すでに全額を支払い済みだった顧客に限定している。何のことはない、本来ならばそのまま施術を受けられるはずだった顧客からさらに追加料金を取っているようなもので、これのどこが「優遇」なのか。

しかも、この旧「エタラビ」グループの店舗は4月から新ブランド「colorée(コロリー)」に衣替えしてリスタートしているが、

「その広告手法は、昨年業務停止を受けた内容とほぼ同様か、さらに誤解させやすくしている。たとえば『3カ月分無料』などと宣伝しているが、実際には36回分割払いの開始が3カ月"先送り"になるだけで、決して無料になるわけではない。意図的に誤解させるように欺く手法で、かなり悪質」(消費者問題に詳しい弁護士)

「暴力団」と証言

さらに、RVH社の現経営者の履歴を遡ると、上場企業としては尋常でない負の部分が浮かび上がる。

当初は「リアルビジョン」という社名だったRVH社の設立は1996年。4年後に東証マザーズに上場して以後、たびたび大株主が変動するも、2014年6月、沼田英也氏が社長に就任したことで次々に大型買収を実現してきた。

沼田氏は証券会社勤務などを経て、あの旧「ライブドア」のグループ会社だった「ライブドアマーケティング」という会社の監査役を務めていたこともある。その頃に関係を深めたのが、旧ライブドアの元社長、熊谷史人氏。

この2人は2007年、「東千葉カントリー倶楽部」というゴルフ場を韓国企業が買収するにあたり、債権債務の整理役として深く関与する。買収資金は約50億円といわれるが、結局買収は失敗。しかし、そのうちの約30億円が「行方不明」となり、2人は一部の返還を請求された。2015年6月、その裁判の過程で熊谷、沼田両氏は被告として証人尋問を受けたが、そこで衝撃的な証言が飛び出した。

「沼田氏らの役割は、ゴルフ場の有力会員らを現金で"買収"し、会員らの同意をとりまとめること。実際、都内で貸金業を営んでいた有力会員に5000万円を領収書なしで渡したと証言したのですが、その人物について熊谷氏は、最初は『厄介な人たち』としか言わなかったが、詳しく追及されると『暴力団』と証言。沼田氏も『反社会的勢力』と明言したのです」(ゴルフ場関係者)

裏金のやり取りをしていた暴力団、少なくとも反社と認識していたその相手と沼田氏らとの現在の関係は不明である。が、証言した時、すでに沼田氏は上場会社であるRVH社の社長だ。

東京証券取引所では、新規上場や市場変更を申請する場合、「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」などの書類提出を求めている。上場したあとに就任した社長にそうした関係が疑われる場合の既定はないが、ガバナンス、コンプライアンスの面で看過してはならない問題ではあろう。

返金の資金力なし

こうして畑違いのシステム開発会社RVH社は、いまやエステ業界で最大規模となった。業績も2017年3月期の決算短信(連結)によれば、売り上げは対前期比129.9%増の約415億円で、経常利益は約28億円と堂々たる内容。だが、前期の経常利益は423.8%増という驚異的数字だったのに、今期末時点での「現金及び現金同等物残高」は29億1900万円しかない。

RVH社は、これら一連の指摘に対して、解約返金については旧社の破産管財人に聞け、代物弁済の不動産評価は第三者機関にやってもらった、沼田社長と暴力団、反社関係者との取引は確かにあったが、当時において違法性のない業務上の取引だと認識している、と広報室が答えるのみだった。

だが、「ミュゼ」も新ブランド「コロリー」も、衣は変えたが、施術の内容が「医師法違反」に当たるのではという点や、予約の困難さから解約が後を絶たないという構造的問題には何ら変わりはない。

しかも、新ブランド「コロリー」オープン時、ホームページや広告では「経験豊富なスタッフによる安心の施術」などと謳いながら、スタッフ募集の「求人情報」サイトでは「9割が未経験者スタート」「資格も経験も必要なし!!」だから誰でも安心して始められ、スタッフになれば「全身美容脱毛が0円!」などの「優遇措置」で素人を大量雇用している。

そして売り上げの2~4割をつぎ込むという巨額の広告費による大量の広告も、先述の通り、再び行政処分を受けかねない内容だ。さらに何より、解約返金に応じられるだけの資金力が圧倒的に乏しい。新たな被害事案の発生が懸念される。

内木場重人

フォーサイト編集長

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(2017年6月21日フォーサイトより転載)