セールは一時的なカンフル剤。アパレル業界を本質的に救うための行動とは

ブラックフライデーを日本にも浸透させようという動きが広まっていますが、新春を待たずして年内からセールを行う背景には、アパレル業界の苦境が見え隠れしてしまいます。

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かつては夏と新春の年2回が定番だったアパレル業界のセール。ところが最近は、一年を通して様々な場面でセールが行われています。昨年11月には、日本でもブラックフライデーに合わせてセールを行うショップが数多く見られました。

ブラックフライデーは、全米で最も買い物が行われる大セールの日。毎年11月第4木曜日に催される感謝祭(Thanksgiving Day)の翌日に開催されます。消費の喚起を促すという名目で、日本にも浸透させようという動きが広まっていますが、新春を待たずして年内からセールを行う背景には、アパレル業界の苦境が見え隠れしてしまいます。

■下降し続ける消化率

商品を開発する際には、MDや企画チームから「どれくらいの数が定価で売れて、どれくらいの数がセールで売れるか」という予測を元に品数や販売価格が算出されます。以前は、百貨店の定価消化率は70%と言われていたのですが、今この数字をクリア出来ているブランドは一体どれほどあるのでしょうか。それどころかセールでも捌き切れず、余った多くの商品を廃棄するというケースが散見されます。

■しわ寄せは発展途上国へ

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(写真出展:Reuters/Andrew Biraj)

この現象によって何が起こるのか。各ブランドは、商品の売れ残りを予測した上で、利益が出る仕組みを構築する他に道はありません。しわ寄せが行くのは、製造現場と生産現場。売れ残りを想定して商品を作るとなると、原価を低く抑えることが必須となるからです。バングラデッシュの縫製工場での時給は14セントと言われ、劣悪な環境下で、多くの人たちが低賃金で働かされています。

今以上に原価を抑えるとなると、賃金はより下がり、環境はより悪化していくでしょう。これからさらに商品の売れ残りが増えていくと、その傾向はさらに強まっていきます。それが分かっていてもスパイラルから抜け出せないのは、大量生産・大量消費の幻想が未だにつきまとっているからです。

■アウトレット・コンセプトの形骸化

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本来、アウトレットは店舗で売れ残った商品が行き着く場所とされてきました。しかし、現在は多くのブランドでアウトレット用に商品の企画・生産チームが作られています。「アウトレットで購入するとお得」という消費者の心理を読んだ上で、最初からアウトレット向けに商品開発した方が売れやすいと判断しているのです。

この流れが浸透すると、本来アウトレットが果たすべき機能は形骸化し、安い商品が求められるだけの場所に成り果てていきます。そこでもやはり売れ残りを想定して商品が開発され、加えてアウトレットはそもそもの価格が低く設定されているため、原価の抑制化はますます進んでいきます。

■良い商品を大切に使い続けるという美徳

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2月からは、こちらも消費の喚起を名目にプレミアムフライデーが施行されセールも予定されているようですが、一時的なカンフル剤に過ぎません。抜本的な問題解決に必要なのは、大量生産・大量消費の幻想を捨て去り、「良い商品を大切に使い続けることが美徳である」という意識を各自が持つことです。

着物に代表されるように、日本には1つのものを長く使い続ける文化があります。私が思う一番の理想は、消費者のクローゼットから"着ていない服"がなくなること。愛着を持ち続けられる服を適正な対価で手に入れ、長く愛用するという行動こそがアパレル業界を救い、ひいては発展途上国の人たちをも救うはずだと思っています。