起業家はインドを目指す 元祖シリコンバレーから技術者が流入

テクノロジー業界のハブとして知られているサンフランシスコの「ベイエリア」に続く新しい「ベイエリア」は、サンフランシスコから遠く離れた、インドのベンガル湾周辺になるかもしれない。
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This is Bagmane Tech Park, Bangalore. The view is from the terrace of my apartment. My first attempt at HDR. Not sure whether the clouds are looking nice or bad :)
amalakar/Flickr

テクノロジー業界のハブとして知られているサンフランシスコのベイエリアに続く新しいベイエリアは、サンフランシスコから遠く離れた場所になるのかもしれない。ベンガル湾周辺のベイエリアが、次なる人気の起業の場所になろうとしているのだ。

高い経済成長が見込まれるインドは、購買力平価で、GDPが日本を抜いて世界第3位になったと2014年5月に世界銀行が発表した。2011年時点ですでに日本を抜いていたという。なお、名目GDPでは日本は3位でインドは10位。

そして今、高い技術力を持つインド人技術者たちが次々とアメリカから母国へ帰ったり(一部には就労ビザの問題もある)、アメリカを本社とするテクノロジー企業のインド部門を辞めてインドで起業したりしている。

ビジネスに特化したソーシャルネットワークサービス「LinkedIn」が、3億人以上にのぼるユーザーを対象に調査を行った結果では、テクノロジー関係の技術者たちを惹き付けている世界の都市の1位から4位までは、すべてインドの都市で占められていた。

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LinkedIn提供

第1位は、「インドのシリコンバレー」として知られる南インドのバンガロール。第2位が、ムンバイの南170kmにあるプネー。第3位が、中南部にあるハイデラバードで、第4位が、南インドのチェンナイだ。

「元祖シリコンバレー」があるカリフォルニア州サンフランシスコのベイエリアは、この4つの都市に続く第5位となっている。

また、ベンチャーへの資金投資も増えているようだ。国際的な会計事務所「アーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young:E&Y)の最新レポートによると、インドは2013年に合計で18億ドルのベンチャー資金を集めた。これは2006年の3倍以上にあたる。

さらに、インドの起業家向けメディアサイト「Your Story」は、2014年前半の6カ月だけで、世界のベンチャー投資家が推定12億6000万ドルをインドの企業に投資したと報じている

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インドは2013年に18億ドルのベンチャーキャピタル資金を集めた(このグラフでは一番明るいグレーの部分:世界のベンチャーキャピタルに関するE&Yの2014年のレポートより引用)。


これらの額は、2013年に35億ドルを調達した中国にはまだ及ばない。そして、E&Yによれば、アメリカは依然として巨額のベンチャー投資資金を集め続けており、2013年の総額は330億ドルに上った。

だが、インドでは12億人の国民が続々とインターネットを利用しつつあり、いくつもの兆しが同国の今後の成長を示唆している。

インド・インターネット&モバイル協会(IAMAI)によると、いまやインド全人口の4分の1がネットワークにアクセスできる。そして、同協会は2014年11月のプレスリリースで、同年12月にはその数がアメリカを抜き、インドは世界第2位のインターネット市場になるだろうと述べた。

インドの英字日刊紙The Hinduが引用したIAMAIのリリースには、次のような文言がある。「インドのインターネット利用者数が、1000万人から1億人になるには10年、1億人から2億人になるには3年かかった。だが、2億人から3億人になるまでに要したのはわずか1年だった」

同時に、インドでは中流階級が成長中だ。E&Yによると、いまや同国の人口の5%にあたる約5000万人が、国際的な基準でも中流階級の所得を稼いでおり、この人数は2020年までに2億人に増える見込みだという。

さらに、インドのオンラインショッピング市場も活気がある。最近のインドのオンラインショッピング市場は、年間約20億ドルを売り上げている。その額は、年間約3000億ドルとされる中国や、アメリカの2013年の売り上げ額の2600億ドルと比べれば、決して大きくはない。しかし、ウォールストリート・ジャーナルによると、インドのオンラインショッピングの売り上げは、2020年までに300億ドル規模に達する可能性があるという

7年前にバンガロールで創設され、現在はインドの電子商取引最大手のネット通販サイトである「フリップカート(Flipkart)」は、2014年7月に10億ドルの資金調達に成功して話題になった。これは、インドの企業が集めた投資額としては過去最大の規模だ。フリップカート社の共同創業者でCEOを務めるサチン・バンサル氏は、上級ソフトウェア・エンジニアとしてAmazonのインド法人に勤務した経歴がある。同氏は7月の資金調達の直後に、向こう5年間で1000億ドルを売り上げる巨大企業への成長を目指すと述べた。そして、フリップカートが10億ドルを調達した日の翌日には、アメリカのAmazonも、同社のインド法人に20億ドルを投資することを明らかにし、ジェフ・ベゾスCEOがいつもはボリウッド映画のスターたちの指定席である「GQ India」誌の表紙を飾った。

また、2014年10月には、日本の実業界の大物、孫正義氏が率いる携帯電話大手のソフトバンクが、フリップカートのライバルでニューデリーに本拠を置くオンラインショッピング・サイト「スナップディール(Snapdeal)」の株式35%を6億2700万ドルで取得して、筆頭株主となった。ソフトバンクは同時に、タクシー配車プラットフォーム事業者「オラ」への出資も発表。向こう数年間でインドのIT業界に100億ドルを投資する計画を明らかにした。

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2014年前半の6カ月におけるeコマース(インターネット通販)への投資は、他のセクターを圧倒している(グラフは「Your Story」による)。


インドでは、ウェブ関連の起業の数も増えている。ニューヨークを拠点とする国際的なコンサルティング会社「ベイン・アンド・カンパニー」(Bain & Co.)に勤めていた元経営コンサルタントが、2008年にニューデリーで創業した「Zomato」は、「Yelp」に似たレストラン評価検索サイトで、2014年11月には6000万ドルを調達し、企業評価額は6億6000万ドルに達した。

また、「FarmVille(ファームビル)」などで知られるソーシャルゲーム会社「Zynga」の元エンジニアが共同創立した、料理愛好家向けの人気ソーシャルネットワーク「Cucumbertown」は、2014年10月に「RecipeWriter」と呼ばれる新機能をリリース。インドのフードブログというニッチ市場を支配しようと目論んでいる。

さらに、インドの都市部をターゲットとして誕生したばかりのカーシェアリングサービス「ZoomCar」は、10月にシリコンバレーの有力なベンチャー投資会社「Sequoia Capital」を中心に資金調達し、800万ドルを集めた。

アメリカのスタンフォード大学で経済学を教えるヨッシ・ファインバーグ教授は、3年前から「Stanford Ignite」プログラムを主宰している。このプログラムは、インドのバンガロールをはじめとする世界各地の学生が、カリフォルニアのキャンパスで行われている経営大学院の講義をコンピューターで受けられるようにしたものだ。同教授は最近のインド人学生たちについて、「若い人々だけではなく、30代や40代の人々も、進んで起業のリスクを取ろうとするようになってきた」と言う。「インドではもともと、経済的成功とは、家族と一緒に暮らし、安定した仕事があることを意味した。しかし今では、人々が起業に対してより積極的になっている。たとえ失敗しても、労働市場ではそれが価値ある経験になるからだ」

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

[日本語版:水書健司、合原弘子/ガリレオ]

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