デジタルアーカイブとジャーナリズム/ジャーナリズム・イノベーション・アワード最優秀賞 #jcej

資料の元となった「ひと」の顔写真を,アイコンとして用いていることによって,各々の「関係」と「量」をともに俯瞰する手段を提供することができます.
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ジャーナリズム・イノベーション・アワード2016」(主催:日本ジャーナリスト教育センター)が講談社にて3/12に開催され,首都大学東京 渡邉英徳研究室,沖縄タイムス,GIS沖縄研究室で共同制作した「沖縄戦デジタルアーカイブ 〜戦世からぬ伝言〜」が最優秀賞を受賞しました

一次予選で総数307票のうち23票を獲得し,一位通過.決勝プレゼンテーション後に行われた決戦投票でも一位となり,最優秀賞に選ばれました.他のファイナリストは,日本経済新聞社の「データディスカバリー」,朝日新聞デジタル部の「築地 時代の台所」,読売新聞社の「検証・戦争責任」,宮崎てげてげ通信の「2015年テゲツー!で最もよまれた記事は?」,そしてステルスマーケティング問題を追及して話題となった山本一郎さんの作品でした.

なお昨年のアワードでは,渡邉英徳研究室の「台風リアルタイム・ウォッチャー」が最優秀賞,沖縄タイムスの「地図が語る戦没者の足跡」がデータジャーナリズム特別賞に,それぞれ選ばれました.表彰式の壇上で,沖縄タイムスの與那覇里子記者と「これはご縁なので一緒にやりましょう」と意気投合し,共同制作に至ったものです.

この例をはじめ,近年,新聞社とのコラボレーションの機会が増えています.長崎新聞社(ナガサキ・アーカイブ),中国新聞社(ヒロシマ・アーカイブ),朝日新聞社(東京五輪アーカイブ東日本大震災アーカイブ),沖縄タイムス(沖縄戦デジタルアーカイブ),そして岩手日報社(震災犠牲者の行動記録マップ)といった実績があります.月刊「Journalism」に寄稿した記事でも触れたように,私たちがナガサキ・ヒロシマから継続的に取り組んできた「多元的デジタルアーカイブズ」の手法と,ジャーナリズムは相性が良いのかもしれません.

多元的デジタルアーカイブズでは,掲載する資料をダイジェスト化せず,デジタル地球儀に「そのまま」載せています.その際に,資料の元となった「ひと」の顔写真を,アイコンとして用いています.このことによって,資料の「内容」の一部を摘まず,そのままのかたちで伝えるとともに,各々の「関係」と「量」をともに俯瞰する手段を提供することができます.さらに顔写真のアイコンは,人々の息づかいを表現するとともに,各資料を識別しやすくします.

こうしたアーカイブの特徴は,広い「面積」を活かして紙面を「構成」することができる,新聞本来のかたちと似ています.新聞は近年デジタル化し,PCのディスプレイやスマートフォンの画面が主要なインターフェイスとなりつつあります.紙面に比べると「面積」が小さいため,各記事の「関係」は示しづらい.いきおい,記事のダイジェストである「見出し」を並べ,「量」を示す傾向にあります.その結果,各々の記事の関係や文脈を示しづらくなっているように思われます.私たちの手法は,こうした弱点を補うものとして捉えられているのかも知れません.

さて,ブースにいらしたBuzzFeedの古田大輔さんには「データの出自と文脈をウェブサイトできちんと記述した方が良い」というご指摘をいただきました.然りだと思います.例えば「沖縄戦デジタルアーカイブ」においては,記者と戦争体験者の信頼関係にもとづいて,密度の高い証言の収録と,戦時下における行動軌跡の再現が実現しています.「震災犠牲者の行動記録マップ」についても,同じことがいえます.しかし,前述したデジタルアースのインターフェイスに,こうした「信頼関係」が十分に表現されているとは,必ずしも言えません.

この信頼関係の構築が,ジャーナリズムの礎となっているはずです.これは,研究者と研究対象のありようにも似ています.私は講演などにおいて,口頭で,あるいは「アーカイブ活動」をとらえたテレビ映像の紹介を通して,この信頼関係に言及してきました.しかし,アーカイブにダイレクトにアクセスするユーザに,この点を伝えることは難しい.今後は,デジタル・アースの向こう側にある「人々のつながり」も,インターフェイス上に表現する必要があるのかも知れません.日々,模索していきたいと思います.