インテル社が導入、「瞑想で業績を上げる」マインドフルネスプログラム

インテル社は世界10万人の従業員に対し、9週間にわたる瞑想の基本的なトレーニングをベースとした、マインドフルネスプログラムの展開を決定した。
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■ インテル、マインドフルネス入ってる!

先頃、インテル社は世界10万人の従業員に対し、9週間にわたる瞑想の基本的なトレーニングをベースとした、マインドフルネスプログラムの展開を決定した。

10万人を対象にしたグローバルな研修を一挙に展開、というだけでも多くの経営者やビジネスパーソンは驚くだろう。しかもそれが瞑想とあらば、なおさらのこと。

この「マインドフルネス」という概念が注目される背景に、さまざまな仕事のパフォーマンス(営業成績、定着率、労働災害の減少など)を向上させるEI(エモーショナルインテリジェンス)との因果関係があることは、前回のブログでお伝えした。

今回は冒頭に述べたインテル社を含む二つの調査結果をご紹介しながら、マインドフルネスとビジネスパフォーマンスの関係を探ってみたい。

【マインドフルネスとは】

様々な定義があるマインドフルネスだが、端的に言うと「今・ここで自分の内面と外で起こっていることに、しっかり意識を向けること」であり、その結果「自分の感情・思考をより明確に認識し、つながりを感じ、創造・直感力を発揮しやすい」心の状態を指す。(詳しくは弊社HPにてこちらで解説。)

最近ではEI、リーダーシップ、エンゲージメントを高めるメンタルトレーニングとして、Google、General Mills、Target、など大手各社やハーバードビジネススクール、クレアモント大学でも採用され、注目を浴びている。(ハフィントンポスト2013年7月8日の記事より)

マインドフルネスは、健康(免疫力↑、痛み・炎症↓)、メンタルヘルス(うつ、不安症、ストレス↓)、人間関係(EI・思いやり↑、寂しさ↓)、自己管理力(感情の制御、内省力、注意力↑)、生産性(集中・注意力、記憶力↑)などの効果があることが科学的に実証されている。(Psychology Today 2013年9月11日"20 Scientific reasons to start meditating today"より)

そして重要なのは、このマインドフルネスの状態を創る能力は、トレーニングによって誰もが改善できるということである。

その基本トレーニングは、呼吸を意識して「今・ここ」を一瞬一瞬受け入れ続けるメディテーション(マインドフルネストレーニング、インサイトメディテーションとも言う)である。

そう、「ビジネスの業績を上げたければ、メディテーション」なのだ!

こんなラディカルなアプローチが世界中のトップリーダー達に広まっており、スティーブ・ジョブズは有名な例であるが、ハフィントンポスト創設者アリアナ・ハフィントン氏、脳科学者のデイビッド・リチャードソン博士など次々と瞑想実践者であることを「カミングアウト」しているのである。

【マインドフルネスのビジネスへの直接的影響】

多くの企業研修と同様に、マインドフルネストレーニングのROI(投資利益率)は未知であるが、最近2つの強力なリサーチ結果が発表されている。

1.インテル社でのマインドフルネスプログラム(Awake@Intel)

The Guardian紙2014年4月8日There is no price tag on a clear mind: Intel to launch mindfulness programでは、インテル社が1500名もの従業員に対して行ったパイロットプログラムのビフォア&アフターの調査結果を発表している。

10点満点自己評価で:

ストレス・切迫感-2ポイント

幸福感+3ポイント

新しいアイデア・気づき+2ポイント

心の明晰さ+2ポイント

クリエイティビティ+2ポイント

集中力+2ポイント

人間関係+2ポイント

エンゲージメント+2ポイント

(=プロジェクト、チームワーク、ミーティングでの取り組みの深さ)

この結果をもって、インテルは「クリアな心に値段はつけられない」と、ROIの情報なしに世界10万人の従業員に対し、9週間のマインドフルネスプログラムを展開することを決定したのである。

⒉.外食産業のマインドフルネス査定とパフォーマンス・離職との相関

マインドフルネスには個人差があり、それが仕事のパフォーマンスと離職傾向にどう相関があるか、という興味深い統計的調査も最近発表された。

Rice大学Erik DaneとUniversity of TulsaのBradley J. Brummelの統計的リサーチ"Examining workplace mindfulness and its relations to job performance and turnover intention (2013)" では、102人のアメリカ南西部の外食チェーンのウェイトレス・ウェイター対象に、下記の3つについての相関を確認した*:

1.各自のマインドフルネス度合

2.上司による仕事の評価

3.本人の離職希望の程度

そこでわかったことは下記の3点であった:

A. マインドフルネスはパフォーマンス(上司による評価)と正の相関がある。

B. マインドフルネスは本人の離職希望の度合いと負の相関がある。

C. マインドフルネスは将来のパフォーマンスを予測するうえで、他の主要要素(活力、専念など)より大きな差をうむ。

*MAAS(Mindful Attention Awareness Scale)というマインドフルネスの査定を行い、マネジャーによるパフォーマンス評価と、本人による離職希望度合、そのほか影響要因(忙しさ、マネジャーごとの査定の個人差、他)を統計的に調整し、統計的に有意差のある相関がみられるかどうかを調べた。

以上をふまえて、Google、Facebook、SAP、LinkedInを始め各地で最も評価の高いマインドフルネスプログラムを展開しているSIYLIのCEO、マーク・レサー氏のこのビデオメッセージをご覧いただきたい。

Q「マインドフルネスはビジネスの何と関係があるか?」

A「全て」

【補足:基本のマインドフルネストレーニング】

※マインドフルネスとEIのトレーニングとして、GoogleやSAP、LinkedInで採用され、Times、New York Times、Wired、The Guardian各誌で高く評価されているSIY(Search Inside Yourself )が弊社MiLI主催で日本初上陸します。28%お得な超早割は5月31日まで。ご興味のある方はこちらをご覧ください。

一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)

理事 木蔵(ぼくら)シャフェ君子

7 Fascinating Facts About Meditation
脳の柔軟性が向上(01 of07)
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持続的な瞑想は、「神経の可塑性」につながる。環境に合わせて、構造的かつ機能的に変化できる脳の能力だ。\n\n前世紀の科学では、成人期を迎えたあとの脳は変化しないと考えられてきた。しかし、米ウィスコンシン大学の神経科学者リチャード・デビッドソン博士の研究によると、瞑想に慣れた人の脳では、瞑想後にも高レベルのガンマ波が発生し、特定の刺激にとらわれない能力があるという。つまり、こうした人は、自分の考えや反応を自動的にコントロールできているということになる。
大脳皮質の厚みが増えた(02 of07)
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1日に40分間の瞑想を行っている米国の男女を対象に行った2005年の研究では、対象者の大脳皮質が、瞑想をしない人と比べて厚くなっていることがわかった。つまりこれは、瞑想をしない人よりも脳の老化がゆっくりと進んでいることを意味する。また、皮質の厚みは、決断力や注意力、記憶力にも関連している。
「注意力の向上」に(睡眠より)効果的(03 of07)
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2006年には、「眠る」、「瞑想する」、「テレビを見る」という行動をとった学生が、それぞれの行動のあとの注意力を測定する調査が実施された(画面が光ると同時にボタンを押すという方法だった)。この結果からは、瞑想をしていた学生が、ほかの行動をとった学生よりも10%高い注意力を持つことがわかっている。\n
血圧低下に効果的(04 of07)
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2008年、マサチューセッツ総合病院のランディ・ザスマン医師は、高血圧の患者を対象に、3カ月間の瞑想をベースとしたリラクゼーションのプログラムを実施した。このプログラムに参加した患者は、薬による血圧のコントロールを受けていない。\n\n定期的な瞑想を3カ月間行った結果、60人中40人の患者に大幅な血圧の降下が見られ、薬の量を減らすことに成功した。この研究からは、リラクゼーションが血管を拡張させる一酸化窒素の生成にもたらす効果がわかっている。
テロメアを保護する(05 of07)
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テロメア」と呼ばれる、染色体の末端部にある保護カバーは、老化防止の科学で現在注目されている。テロメアが長ければ、長生きできる可能性も高いというのだ。\n\n米カリフォルニア大学デービス校の「シャマサ・プロジェクト(Shamatha Project)」が行った研究によると、瞑想をしている人は、瞑想をしていない人に比べてテロメアの活動が非常に高いことがわかった。テロメアの構築を手助けする酵素である「テロメラーゼ」が活性化すると、強固で長いテロメアができる可能性が高いと言われる。
HIVの進行を遅らせる(06 of07)
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リンパ球や白血球は、身体の免疫系システムの「中枢部」であり、HIV感染者にとって特に重要なものとされる。\n\n2008年にHIV感染者を対象に行った研究によると、瞑想をしていない感染者が大幅なリンパ球の減少を示したのに対し、8週間の瞑想コースを受けた感染者では、リンパ球の減少がまったく見られなかったことが示されている。\n\nまた研究からは、瞑想したあとにリンパ球が増加することもわかっている。ただし、この研究の被験者は48人と少数なため、決定的な結論とは言い切れない。
痛み止めの効果もある(07 of07)
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2012年初頭にウェイク・フォレスト・バプテスト大学(Wake Forest Baptist University)が実施した実験では、瞑想によって痛みの強度を40%、痛みの不快感を57%減少させることができ、モルヒネや鎮痛剤を使用した場合の痛みの減少率(25%)よりも効果があったという[実験では、5分間にわたって右脚に摂氏49度の装置を当て、痛みのレーティングを尋ねた。瞑想の練習を行った者では、少ない者は11%、多いものは93%減少したと答えた]。\n\n瞑想は、体性感覚皮質の活動を抑え、脳のほかの部分の活動を増加させるのに効果があると考えられている。ただしこの研究もサンプル数が少ないので、断定的な結論を出すことはできない。