働くことを諦めたくない! 専業主婦ママは「2回目の就活」をしよう

大切なのは「何の仕事をするか」よりも、 「どう生きていきたいか」を考えること

こんにちは。キャリアコンサルタントの小橋友美です。

今日のテーマは「また働きたい専業主婦のママのためのキャリアプロセス」です。

ワーキングマザーを対象としたメディア「LAXIC」で、今回専業主婦のママをテーマにするのは、ふたつの理由があります。

ひとつは、働くママから、

「今の仕事を続けるのはつらい。ちょっと休んで新しい働き方を考えたい。でもブランクができたら正社員に戻れない気がしてできない」

という話をよく聞くこと、

もうひとつは、

たくさんの専業主婦のママがキャリアに迷っているのに、なかなか話せない

という現実を知ったことです。

私は今、仕事は控えめで在宅ワークなので、専業主婦に近い生活スタイルです。日々の暮らしの中でも専業主婦のママとの関わりが多いです。

そんな毎日の中でよく耳にするキャリアの悩みを、私自身の経験も交えながらキャリアコンサルタントの視点で考えてみたいと思います。

今まさに専業主婦で、これからどうやって仕事を始めればいいのか悩んでいるママには、同じように悩む人がいることを知ってもらいたいと思います。

そして解決策が少しでも助けになることを願っています。

また、今働いているけど、少し休みたい、または働き方を変えたいと感じている方には、こんな復帰のステップもあることを知っていただき、自分らしいキャリアのヒントを見つけてもらえると嬉しいです。

キャリア形成を戦略的に!

キャリア・プランニング・プロセスとは

専業主婦と一言で言ってもバックグラウンドはさまざまですよね。

自ら選んだ人もいれば、夫の海外赴任や転勤で仕事を辞めざるを得なかった人もいます。

子どもが保育園に入れなかったり、夫や姑など家族の意向で仕事ができないという人もいます。

それでも世間では「女性活躍」が叫ばれ、専業主婦は楽でいいよねと思われる風潮に、肩身の狭い思いをしているという話をよく聞きます。

仕事に対する考えは人それぞれですが、いつかは働きたいと考えている専業主婦のママはたくさんいるのです。

また働きたいママのために、ひとつのモデルを紹介したいと思います。

上の三角形は「キャリア・プランニング・プロセス」と呼ばれるモデルで、キャリアの意思決定の際に一般的に人がたどるプロセスを図にしたものです。

この図の下の4つのプロセスを順序を問わずしっかり吟味することが、納得いくキャリアを支えるとされています。

4つのプロセスは具体的には次のようなことです。

  • 自己理解(Self):職業への興味関心、自分の価値観、抱えている問題などに関する情報を収集する
  • 選択肢に関する情報収集(Option):職業・仕事を調べるなど、就職の可能性などに関する情報を収集する。また、自分がとりうる選択肢に関する情報を収集する
  • 統合・意思決定(Match):可能性の確認、自分にとっての価値の評価などによって、長期・短期の選択肢を選ぶ
  • 目標設定・行動(Action):目標を設定し、目標達成のために必要なステップを考え、行動に移す

自己理解や情報収集と言うと、まるで就職活動みたいですが、

「仕事を始めたいけど、何から手をつければいいかわからない」

というママは、ぜひ2回目の就職活動だと思って、このモデルを参考に行動してみてください。

効率的、戦略的にキャリア形成を進めることができると思います。

大切なのは「何の仕事をするか」よりも、

「どう生きていきたいか」を考えること

「キャリア・プランニング・プロセス」を眺めていると、私自身いまの子育て中心生活になって随分できていないなあと痛感することが多いのです。

私の実体験から具体例をあげると次のような感じでしょうか。

まず仕事から離れると、「自己理解」が難しくなります。

どんな仕事にやりがいを感じたのか忘れていきますし、どんなスキルを評価されていて、それがどの程度のレベルなのか、そうした客観的評価を受ける機会もなくなってしまいます。

「選択肢に関する情報収集」についても、例えば最近の採用動向などが肌感覚でとらえられなくなって、自分で情報を取りに行く努力をしなければついていけなくなります。仕事でどの程度のスキルが必要なのかもわからなくなるため、自分のスキルがまだ通用するのか不安で仕方ありません。

働くことから離れると、このふたつがどうしても不十分になっていくのです。

その結果「統合・意思決定」の選択肢は少なくなり、「私はこうありたい」「こうしてみたい」という前向きな選択肢が持てません

これは自分自身の問題だけではなく、夫から家のことを完璧にしてほしいと言われるなど、家族の意向で働くことが難しいときも同じではないでしょうか。

こうなると「目標設定・行動」をしようという気にならないのです

こうして考えると、働き始めるには、それぞれのプロセスで足りなくなったポイントを補うことが必要なのですよね。

だから、例えば「自分は何がしたいのか」と自己理解だけ深めても不十分ですし、求人情報ばかりチェックしても納得いくキャリアにはならないのです。

また「こんな風に働きたい、こんな人生を歩みたい」と自分の可能性に思いを巡らせたり、そのためにはどんな準備が必要かを調べて一歩踏み出すような行動力も大事です。

これは専業主婦に限ったことではありません。

誰でもしばらく仕事から離れると、「キャリア」を支える4つのプロセスは弱っていくものであり、その状態でいきなり「さあ働こう」と言われても不安を感じるのが当然です。

それぞれのプロセスを補うために具体的にどんなことができるのでしょうか。

これから、私自身の経験と周りのママたちの話、そして児童館の先生たちから聞いた話をもとに、

「乳幼児を育てる専業主婦ママのキャリアの悩み」と、

「そのときどきでできること」を、

子どもの年齢ごとに紹介したいと思います。

これは児童館の先生から聞き、私もとても納得したのですが、子どもが小さいうちは特に、子どもの成長に伴ってママのキャリアの悩みも変わっていきます。

だから0歳の赤ちゃんのママと2歳児のママでは、同じ専業主婦でも悩みが違うのです。

なお、今回の記事の作成にあたり、マザーズハローワーク(※1)の職員の方にもお話を伺いました。その内容も交えながら紹介していきます。

キャリア選択とは、何の仕事をするかではなく、どう生きるかです。

今は働いていなくても、幸せな人生のために、仕事も含めてどんな風に生きていきたいかを考えることがキャリアを考えることです。

その考えをもとに、紹介していきたいと思います。

※1:マザーズハローワーク、マザーズコーナー

子育てをしながら就職を希望している方に対して就職支援を行うことを目的に作られたハローワークです(マザーズコーナーは通常のハローワークの中にあります)。

無料で利用でき、キッズコーナーの設置など子ども連れでも利用しやすい環境です。

職業相談、保育園の情報提供、仕事と子育ての両立がしやすい求人情報の提供など、総合的かつ一貫した就職支援を行っています。

平成18年から開設され、平成29年7月時点で全国にマザーズハローワークが21か所、マザーズコーナーが173か所あります。

東京では渋谷、日暮里、立川に、大阪では難波、堺にマザーズハローワークがあります。

出産~3か月:キーワードは「人それぞれ」

みなさんは子どもが1、2か月の頃、どんな生活でしたか?

私はとにかく大変だったという記憶ばかりです。

もちろん子どもはかわいくて、産まれてきてくれてありがとうという気持ちもたくさんあったのですが、ベッドに横になれたのが合計2~3時間という日もよくあり、睡眠不足が苦手な私にはきつかったです。

出産前にほとんどの仕事の契約を終わらせていただいたため、再開の段取りをしたかったのですが、仕事のことを考えるにはあまりにしんどい時期でした。

それが産後3か月経つと少しずつ育児にも慣れてきました。

そしてだんだん、フリーランス仲間が仕事復帰したり、育休中のママが赤ちゃん連れで勉強会に行っている、というような話が気になり始めたのです。

もう仕事に向けて動き出しているママがいる、なのに私は育児しかできていない、と焦るようになりました。

でも焦るばかりで身体が重くて動かず、何もできませんでした。

産後3か月というと、育休中のママの中には仕事復帰に向けて動き出す方もいるのでしょうが、専業主婦のママだと一から仕事のことを考えなければならず、まだ大変な時期かもしれません。

何をすればいいのかわからないまま時間ばかりが過ぎていく、そんな気持ちの方も多いのではないでしょうか。

この頃のことを専業主婦のママ友に聞くと、焦ったり葛藤したりしながら過ごしていたという人がたくさんいました。

仕事をしたい、自分の時間がほしい、ひたすら休みたい......

やりたいと思うことは人それぞれでしたが、「そんなことをしていいのか?もっとすべきことをちゃんとやらないといけないんじゃないか?」と葛藤の中で過ごしていたという話をたくさん聞きました。

今振り返って感じるのは、「妊娠出産にまつわることは人それぞれ」ということです。

赤ちゃんの性格も違えば、家族のサポート体制も、そもそもママの体力も違いますよね。

私は産後1年経って行った整体で筋力の衰えを指摘されました。

産前に2か月以上安静生活だったので、筋肉が落ちていたのです。だからあんなにしんどかったんだなとそのときやっと理解できました。

こんな些細なことでしたが、このことで、人並みに動けない自分は怠け者だと負い目を感じていたことに気づき、「人それぞれ、事情が違う」ということを実感しました。

私もそうでしたが、1人目の赤ちゃんだとまだママ友が少ない頃だと思います。

身近に同じような環境の友人がいれば、人それぞれ事情が違うこともわかりますし、「そんなに何でもうまくいくはずないよね~」と笑い合えるのですが、そんな相手もいないと、つい自分ができないことばかりに目がいってしまうのですよね。

最近はメディアやSNSで妊娠・出産にまつわる個人的な話を目にすることが多くなりましたが、どうしても良い側面のみ発信したものが目立ってしまいます。

赤ちゃんがよく寝てよく飲んで、ママは自分時間を満喫できたり、産後すぐに仕事復帰して子育てとも両立できたり......

でも現実はそんなにうまくいかないですよね。

この時期は人それぞれと割り切っていきましょう。

限られた時間と体力だからこそ、他人の基準よりも自分の基準でやりたいことをやりましょう。

自分の基準は何かと考えることは、キャリア・プランニング・プロセスで言うなら「自己理解」を深めることにつながります。

専業主婦のママの中にも、この時期に「やっぱり働きたい」と考える方もいると思います。

特に、出産前に何らかの理由があって仕事を辞めた人は、一区切りついたところで改めて仕事について考えたいと思う時期でしょう。

今すぐにではなくても、いつか働くためにできることはないか知っておきたいという方もいると思います。

その場合は、外出できるならマザーズハローワーク、またはハローワークのマザーズコーナーに足を運んでみてください。

仕事探しというと転職支援会社が思い浮かびますが、残念ながらそうした会社のほとんどでは、子どもの預け先がわからない、またはいつから働けるかわからない状態では、具体的な話をしてもらえないのです。

マザーズハローワークやマザーズコーナーは、「いつかは働きたいけれど、今何をすればいいのかわからない」という悩みにも対応してくれます。

保育園探しのポイントから職務経歴書の書き方まで、こちらの状況に合わせたアドバイスをしてくれたり、再就職のためのさまざまなセミナーもあります。もちろん求人票も見られます。

キャリア・プランニング・プロセスの4つすべてのサポートを一か所で受けることができるので、赤ちゃん連れでなにかと大変なママにとっては、最も効率よく一歩を踏み出せる場所です。

まだあまり出かけたくないという方は、次に紹介する「キャリアの棚卸し」をしておくといいですよ。

これはマザーズハローワークでも勧められる作業なのですが、自分のスキルや強みだけでなく、これからどんな働き方がしたいのかも見え、主観・客観両面から自己理解が進みます。

3か月~1歳:キーワードは「キャリアの棚卸し」

「一応、保活はしてみたよ。でも認可外でも50人待ちで。保育料も高いし、いつ入れるかもわからないのに働くところを探しても無駄だと思って、もういいかーと思ったんだよね。」

専業主婦のママ友が教えてくれた、この頃の話です。

保育園に入れるのなら働こう、と考える専業主婦のママは、私の周りにも多いのです。

でも、特に東京など都市部では、

「仕事が決まっていないと保育園に入るのは難しい」

「でも保育園が決まっていないと雇ってもらえない」

という厳しい現実があります。

この時に、たくさんのママが保育園を諦めるのと同時に、働くことを諦めるしかなくなることを知りました。

子どもが3か月から1歳ごろは、育休中だったママが仕事復帰し始める時期でもあります。

自分はしばらく働けないのに、どんどん職場復帰していくママ友たち。

誰でも取り残された感じになり、これでいいのかな、と焦ると思います。

この頃から仕事について考えないようにするママが多いのかな、と悲しいことですが感じています。

でも、この先数年働けないからと言って、ずっと働けないわけでは決してありません。

もしいつか働こうと考えているなら、この時期に「キャリアの棚卸し」をしておくことが必ず役に立ちます。

まだ働いていた記憶が新しいうちに、仕事内容と実績、それに対する自己評価や満足度を整理しておきましょう。

まずは自分で思い出して整理しておくことが大事なので書式は何でもいいのですが、ワークシートがあれば書きやすいでしょう。

あまり細かいものよりも、上の写真のような簡単なものを使ってまず書いてみましょう。時系列で文字にすることで、意外なほど客観的に振り返りができることを実感できると思います。

さらに詳しく振り返りたい方には、下のようなサイトにあるシートもお勧めです。

キャリアの棚卸しと聞くと、どんなスキルがあるか書き出す作業かと思うかもしれませんが、仕事には客観的に評価される側面(実績)と、主観的に評価できる側面(自己評価・満足度)があり、そのどちらも自覚するのがキャリアの棚卸しの目的です。

全体を眺めてみると、あなただけの強みや仕事のやりがいが自然と見えてきませんか?

そうした気付きは誰も教えてくれない一番貴重な情報です。

ぜひ一緒に書き留めておいてください。

キャリアの棚卸しは、キャリア・プランニング・プロセスで言う「自己理解」を進めてくれて、「統合・意思決定」の際の基準を作ってくれます。

誰にとっても、この先の新しいキャリアを作るために必要な作業です。

特にいま専業主婦のママにとっては、キャリアの棚卸しを通じて自覚した強みやスキルがこの先自分を支えてくれるでしょう。

働いていない期間が長くなるほど、つい「自分にできる仕事はない」と無力感にとらわれがちですが(実際はそんなことありません!)、このとき得られた自信が救ってくれるはずです。

私はこの頃、早く仕事を再開しないとと焦っていました。保活の末、幸運にもある保育園から内定をいただいたのですが、いざ正式申込みとなるとどうしても預ける気になれず、結局は辞退しました。

そのとき判断の基準になったのが、キャリアの棚卸しを通じて見えてきた

「どんな働き方をして、どう生きていきたいのか」

という自分なりのキャリア指針でした。

保活をしていた頃、偶然にもいろいろな仕事の紹介をいただきました。

とてもありがたいことで、迷いながらお断りさせいただいたのですが、結果的にはそのことで私はこんなスキルが期待されているという客観的評価を再確認でき、より強くキャリアの棚卸しができました。

このことは今に続く子育て生活のなかでも、働くことを諦めず、ビジネスマインドをサビさせないでいようという前向きな気持ちを支えてくれています。

(次回に続きます)

※2:ダウンロード手順

「労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究技法」

「女性向けキャリアコンサルティング技法」

(2)自己棚卸しシート

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キャリアカウンセラー小橋の「越えていこうよ、ワーママもやもや期」

小橋友美

米国CCE, Inc認定

GCDF-­Japan

キャリアカウンセラー

1979年香川県生まれ。お茶の水女子大学卒業後、信託銀行に10年勤務。

病気と結婚を機に退職し、キャリアカウンセラーとして活動を始める。

採用実務経験を活かした若年層向けの就職支援を行う一方で、ワーママ、プレワーママが抱える「働くことへの悩み」を共に解決したいと考え、

仕事も生活も楽しむためのキャリア支援活動を行っている。

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ワーママを、楽しく。LAXIC

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LAXICは、「ワーママを、楽しく」をキャッチフレーズに子育ても仕事も自分らしく楽しみたいワーママやワーパパ、彼らを取り巻く人々のための情報を集めたWEBメディアです