政府の原子力関係閣僚会議は12月21日、福井県敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉を正式決定した。「夢の原子炉」と期待された高速増殖炉だったが、1兆円以上の事業費を投じながら、相次ぐトラブルで幕を下ろした。一方で、使用済み核燃料の再利用を目指す核燃料サイクル政策は維持することも決めた。「新たなチャレンジを求める」として、もんじゅに代わる高速炉の開発を続けることになった。
コトバンクなどによると、高速増殖炉「もんじゅ」は、1985年から6年かけて建設された。プルトニウムとウランを燃料にして、消費した以上の燃料を生み出すため「夢の原子炉」として期待されていた。しかし1995年の試運転中に、冷却材のナトリウムが漏れる事故を起こして運転停止。15年ぶりに運転を再開した直後の2010年には、核燃料の交換装置が原子炉容器内に落下し、再び停止した。2013年5月、原子力規制委員会より運転準備中止命令が出されていた。
1995年の事故の際に、組織の隠蔽体質を問われ、当時の動燃(動力炉核燃料開発事業団)が解体される事態にまで発展した。その後、日本原子力研究開発機構がもんじゅの運営主体となったが、組織が変わっても安全に関わる問題はなくならなかった。
原子力規制委員会は2015年11月、「もんじゅ」を安全に運転する能力が日本原子力研究開発機構にはないとして、新たな運営主体を明示するように当時の馳浩文科相に勧告。政府内では廃炉も含め、検討が大詰めの段階に入っていた。
■専門家からは「合意形成ができていない」という指摘も
原発問題に詳しく『私たちはこうして「原発大国」を選んだ』などの著書がある恵泉女学園大学の武田徹教授は、ハフィントンポストの取材に次のように答えた。
「トラブル続きで運営主体の管理能力にも疑問がもたれていた『もんじゅ』を辞める選択は避けられなかったと思う。しかし、もんじゅをやめることと交換するかのように新型の高速炉の開発を打ち出しているように見えてしまうことは問題だ。高速炉に技術的可能性があること、廃炉を含めた原子力利用技術の未来に資するものがないわけではないと思うが、これまでも原発の再稼働を政府が強引に進めたことで、国民の合意とはほど遠い状況が生まれてしまっている。多少遠回りになっても、『なぜ高速炉が必要と考えるのか』を丁寧に説明して、合意形成をした上で研究開発に乗り出すべきではないか」
日本の主な原子力発電所と関連施設
北海道電力の泊原発(01 of18)
Open Image Modal北海道電力の泊原子力発電所。右端が3号機(北海道泊村)\n\n撮影日:2012年05月05日 (credit:時事通信社)
東北電力東通原発 (02 of18)
Open Image Modal敷地内に活断層があると指摘された東北電力の東通原子力発電所1号機の原子炉建屋(中央奥の白い建物)。右端の塔は排気筒。左端の茶色の建物は事務本館=2013年06月19日午後、青森県東通村 (credit:時事通信社)
東日本大震災・女川原子力発電所 (03 of18)
Open Image Modal女川原子力発電所(宮城・女川町)\n\n撮影日:2011年04月12日 (credit:時事通信社)
福島第2原子力発電所(04 of18)
Open Image Modal東京電力福島第2原子力発電所=5日、福島県楢葉町、富岡町(時事通信社チャーター機より)\n撮影日:2013年03月05日 (credit:時事通信社)
福島原発/福島第1原発の4号機(05 of18)
Open Image Modal福島第1原発の4号機=15日午前11時48分、福島県大熊町[代表撮影]\n\n撮影日:2014年01月15日 (credit:時事通信社)
東海第2発電所(06 of18)
Open Image Modal日本原子力発電の東海第2原子力発電所=5日、茨城県東海村(時事通信社チャーター機より)\n撮影日:2013年03月05日 (credit:時事通信社)
新潟県中越沖地震・柏崎刈羽原子力発電所(07 of18)
Open Image Modal東京電力の柏崎刈羽原子力発電所。(左から)5,6,7号機(16日午後、新潟県柏崎市)[時事通信ヘリコプターより]\n撮影日:2007年07月16日 (credit:時事通信社)
浜岡原発と御前崎市街地(08 of18)
Open Image Modal中部電力浜岡原子力発電所(奥)と御前崎市街地=2012年10月03日、静岡県 (credit:時事通信社)
志賀原発訴訟・志賀原発 (09 of18)
Open Image Modal北陸電力の志賀原子力発電所。左側が2号機(石川・志賀町赤住)\n撮影日:2009年03月12日 (credit:時事通信社)
日本原電敦賀発電所(10 of18)
Open Image Modal日本原子力発電敦賀発電所。左が日本初の軽水炉として1970(昭和45)年に営業運転を開始した1号機。右は2号機(福井・敦賀市明神町\n\n撮影日:2012年03月06日 (credit:時事通信社)
関西電力美浜発電所(11 of18)
Open Image Modal敷地内の断層が活断層の疑いがあるとして、原子力規制委員会の調査対象となっている関西電力美浜原発(右から1号機、2号機、3号機)=8日午後、福井県美浜町 \n\n撮影日:2013年12月08日 (credit:時事通信社)
大飯原発(12 of18)
Open Image Modal関西電力大飯原発3、4号機の建屋。写真左側では、敷地内断層調査のため試掘溝を掘削する工事が行われている=2013年06月15日午前、福井県おおい町 (credit:時事通信社)
関西電力高浜原子力発電所(13 of18)
Open Image Modal関西電力高浜原発。右手前から1、2号機、左手前から3、4号機の建屋=27日、福井県高浜町\n\n2013年06月27日午前、福井県高浜町 (credit:時事通信社)
島根原発の1号機と2号機 (14 of18)
Open Image Modal中国電力島根原発1号機(手前)と2号機(島根県松江市)\n\n撮影日:2011年11月28日 (credit:時事通信社)
四国電力伊方原子力発電所(15 of18)
Open Image Modal佐田岬半島の瀬戸内海側にある四国電力伊方原子力発電所。頭が青色の建物が左から1号機、2号機、3号機=2012年11月18日、愛媛県西宇和郡伊方町 (credit:時事通信社)
玄海原発(16 of18)
Open Image Modal九州電力玄海原子力発電所(奥)。左から4号機、3号機(佐賀・東松浦郡玄海町)\n\n撮影日:2011年05月24日 (credit:時事通信社)
川内原子力発電所 (17 of18)
Open Image Modal再稼働の前提となる安全審査に絡む川内原発の現地調査で、九州電力(左側)から説明を受ける原子力規制委員会の委員ら=2013年09月20日午前、鹿児島県薩摩川内市[代表撮影]\n\n (credit:時事通信社)
高速増殖炉「もんじゅ」(18 of18)
Open Image Modal日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」=2013年6月6日、福井県敦賀市 (credit:時事通信社)