「チャラ男」「ビッグマウス」と揶揄される元青学・2区が競技種目を変えた理由

彼がトライアスリートとしての活動に至った理由と、その「ビッグマウス」の裏側にあるものを探るためお話を聞きました。

最近、トライアスロン業界を賑わせている選手がいます。大谷遼太郎選手です。

大谷選手は、青山学院大学時代に、出雲駅伝初優勝に貢献し、4年次の箱根駅伝はエース区間でもある花の2区を担当。その後はトヨタ紡織に入社し、ニューイヤー駅伝への出場経験を持つトップアスリートです。

そんなエリートランナー街道を突き進んでいるように見えた生活から一変。今年1月に突如トヨタ紡織を引退する旨を発表したかと思うと、3月27日に開催された日本トライアスロン連合(JTU)認定の記録会に出場。いきなり日本歴代3位相当となる記録をたたき出し、JTU強化指定選手としての資格を得ました。本人はこの記録会以前から、トライアスロンで東京五輪のメダルを目指すことを公言しており、出だしは好調と言ったところ。

時に「チャラ男」としてネタにされる大谷選手。その派手な見た目から"何かしでかす"感がありましたが、このトライアスロン転向に驚いた方も多いはず。

今回はそんな彼がトライアスリートとしての活動に至った理由と、その「ビッグマウス」の裏側にあるものを探るためお話を聞きました。

Open Image Modal

■トライアスロン転向の理由はライバル・出岐選手

---大谷くん、さっそくですが単刀直入に。どうして実業団を辞めたんですか?

大きな理由としては、ずっと自分に嘘を付きながら走っていたという点ですね。

学生時代の同期に出岐くんという選手(フルマラソン2時間10分02秒で学生歴代3位の記録保持者)がいるのですが、彼の走りを見て素直に"マラソンでは彼に勝てない"と思ってしまったんです。でも実業団として走る以上、マラソンでオリンピック出場は目指さなければなりません。心の底では勝てないと認めてしまっているのに、それに自分自身気がつかないふりをして「マラソンでオリンピック目指します!」と言い続けることが辛くなってしまったのが正直なところです。自分が納得した目標を目指したくてモヤモヤしていました。

あとは、チームとの練習方針があわないとか、結果がでないことを外的要因のせいにしてしまっている自分がいて、せっかくチームに入れていただいたのに、そんなことを考えてしまう自分も嫌で、だったら一人でやろうと思い立ったんです。

---なるほど、それで見つけたのがトライアスロンということですか?

実はトライアスロンは大学4年生の頃から意識はしていました。たまたま実業団の合宿に参加した時に、北京オリンピック出場経験もある山本良介選手も一緒に練習していたのです。トライアスリートといっても陸上の実業団選手と一緒に練習できているし、「こういう選択肢もあるんだ」って思ったのがきっかけです。

幸いにも1歳から12歳まで水泳をやっていて、全国大会に出場した経験もあるので、泳ぐのは得意でした。また、長距離と違ってバイクやスイムは抵抗との戦いという面もあるので、"戦術"次第で勝ち続けることも可能です。

僕は長距離選手としては体が大きいので疲労も溜まりやすく、陸上向いてないのではないかと何度も思ったのですが、トライアスロンではこの体も有利に働くのではと思っています。

Open Image Modal

---実際にトライアスロンの練習をはじめてみてどうですか?

ラン・バイク・スイムの3種目の練習をするので、どうしても1種目ごとの練習量は落ちます。だからこそ、これまで以上に"質"が大事だと考えるようになりました。

その考え方は前から試したかったのですが、1人じゃないとなかなかそうもいかなくて。でも実際に取り入れてみて、ランの調子もむしろ実業団時代よりも上がってきていると思います。先日も1,000m×4本を2分40秒切りで行えました。

■トップアスリートが向き合う"結果"の出し方

---え、はやっ!!(笑)ちなみに、"質"について興味のある視点なんですが、どんな風に考えていますか?

「質は量をかねる」が僕の考え方です。

"質"を追い求めると、その過程として"量"がついてくることもありますが、"量"を目的にすると"質"を下げることが多いと思っています。量をこなすことで満足してはダメだと思っていて、これはスポーツだけでなくビジネスも同じだと思っています。

質を追い求めることで時間も出来てくるので、空き時間でしっかり勉強もして、スポーツだけでなくビジネスもできる人間になりたいと思っています。今までの枠にとらわれないアスリートを目指したいと思っています。

Open Image Modal

---いいですね、ガンガン新しいことチャレンジしてください!トライアスロンでの目標は東京オリンピックですか?

もちろん。メダルを狙うし取れると思っています。何色を取るかっていう部分にこだわりたいと思っています。

---すごい自信!ちなみに自分で与えたプレッシャーとの向き合い方ってどうコントロールしてるんですか?

文字通り、自分を信じることしかないと思います。

これまでやってきたプロセスを自分で信じられるかどうかですよね。実業団の時は迷いながら走っていたので、これができなくてとても悩みました。でも、自分が自分を信じられなくて、誰が自分を信じてくれるのか、っていうことを今は常に意識しています。

---これまでプレッシャーに打ち勝てた会心のレースっていつですか?

4年目の箱根駅伝で2区を走った時ですね。あれは男として一皮も二皮もむけたと思います(笑)

エースの出岐くんが調子を崩して走れないことが直前にわかって、1週間前に「大谷2区いくぞ」って監督から言われたんです。正直眠れなかった。びびりました(笑)。それまでは監督と揉めたり、怪我をしたりとチームにはいろいろ迷惑かけてきてたから、あんなにチームに頼られたことはありませんでした。

そんな風に仲間の事を意識したらプレッシャーも吹き飛んで、スタート地点に立つ時は、これまでのことを振り返って感謝の気持ちになっていました。これは個人的にすごく意外な感覚で、初めて抱いた感情でした。

「人の思いを乗せて走る」ってこういう事かと学ばせてもらった経験です。

---走ることって個人競技ですけど、襷の重さというか繋がりで強くなることって本当にありますよね。

実は初めてハーフマラソンの沿道で市民ランナーの方の応援をしたんです。そしたら、その時自分は応援する側だったのにすっごく元気をもらえて驚きました。最近フリーになって、一人では生きられないんだってことを改めて理解しています。

だからこそ、オリンピックでもより多くの人の想いを乗せて走れたら幸せですし、多くの人に元気を与えられる存在になりたいです。

■プロフィール

Open Image Modal

1990.10.18 埼玉県出身

職業:アスリート

経歴:

青山学院大学

第88回箱根駅伝 10区

第89回箱根駅伝 2区

トヨタ紡織

第58回全日本実業団対抗駅伝1区

第59回全日本実業団対抗駅伝1区

第60回全日本実業団対抗駅伝 6区

※同記事は『Runtrip Magazine』に掲載されたものを加筆・編集したものです。

【『Runtrip Magazine』とは】

"自分史上最高の波"を求めて旅をするサーファーの「サーフトリップ」のように、"自分史上最高の道"を探るランナーの「ラントリップ」。

Runtrip Magazine』は、「ラントリップ」というライフスタイルを広く伝える、株式会社ラントリップのオウンドメディアです。