ヘイトクライム犠牲者の母「暴力を批判して」トランプ大統領に願いを込めた手紙を送る

不安を感じずに電車に乗れる。それは全ての人から奪うことのできない権利です。

アメリカ・オレゴン州ポートランドで、ヘイトクライムの被害にあった女性を助けた乗客が刺されて亡くなった事件は、アメリカに大きな衝撃を与えた。

事件はメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)の週末を迎える直前の金曜日、5月26日に起きた。

白人至上主義的な行動で知られていたジェレミー・クリスチャン容疑者が、電車に乗っていた17歳の黒人女性と16歳のヒジャブを着ていた女性に「お前らは何の役にも立たない、死んだ方がいい」などの暴言を浴びせ、ふたりを守ろうとした乗客を刺した。2人の男性が亡くなり、1人が重傷を負った。

亡くなったうちの1人、23歳のタリシーン・ムルジン・ナムカイ・メシェさんの母親アシャ・デリヴァランスさんは、事件後にトランプ大統領に公開書簡を送った。「暴力を許さない社会にするために、大統領として行動して欲しい」という母の切実な願いが綴られている。

(トランプ大統領への公開書簡)

2017年5月29日 メモリアルデーに

親愛なるトランプ大統領

戦没者追悼記念日の今日、息子を失った母親として気持ちを伝えたいと思います。

自由のために命を落とした大勢のアメリカ人と同じように、タリシーンは英雄として生涯を閉じました。わずか23歳でした。大学で経済学を学んで1年前に卒業し、働いて最初の家を購入したばかりでした。家族をつくろうと考えていました。私たち家族は悲しみに暮れています。しかし、自己犠牲を省みずに2人の女性を助け、世界を変えた息子を誇りに思っています。彼は全くためらわずに、憎しみに愛で立ち向かいました。

戦没者追悼記念日の週末、ポートランドで2人の尊い命が失われ、1人があやうく亡くなるところでした。3人はお互いに初対面で、守ろうとした相手のことも知りませんでした。その3人が、偏見と憎しみの恐怖にさらされていた2人の女性のために、恐れずに命を危険にさらしたのです。

彼らは間違った行為を目にして、ためらわずに立ち上がりました。「私たち人間は、違いより類似点の方が多い」という事実を、彼らは知っていました。「肌の色や宗教を理由に攻撃されるかもしれない」という不安を感じずに電車に乗れる。それは全ての人から奪うことのできない権利です。

お願いがあります。あなたは「すべての人のための大統領になる」と言いました。だからこの事件について行動してほしいのです。あなたの言葉や行動は、アメリカだけでなく世界中で大きな意味を持ちます。

アメリカ国民すべてに、お互いを守り助け合うことの大切さを伝えてください。すべての暴力を批判してください。暴力はヘイトスピーチやヘイト団体を助長します。だから、あなたにリーダーシップをとって欲しいと願っています。

そうすることで、タリシーンの犠牲が報われます。今回の悲劇を知った、何百万もの人たちが私たち家族を支えてくれています。それは、タリシーンが犠牲が大きな意味を持っていることの証です。

心の平穏とともに

アシャ・デリヴァランス

アシャさんは、Facebookにもナムカイ・メシェさんの写真を投稿しており、18万人近くにシェアされている。

「昨日、私の大切な息子タリシーン・ムルジン・ナムカイ・メシェは、ポートランドの電車の中で2人のイスラム教徒の少女を人種差別者から守って亡くなりました。彼は今までも、そしてこれからも英雄です。あなたは輝ける星です。私はあなたを生涯愛し続けます」

トランプ氏がデリヴァランスさんの公開書簡を読んだかどうかは明らかになっていないが、29日に同氏は「ポートランドで起きた暴力行為は、認められるものではない。被害者はヘイトと不寛容に立ち上がった。彼らのために祈ります」とツイートしている。

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