韓国の禁輸措置は東京五輪つぶしか?

回の禁輸措置を受けて、記者が最初にどの様な記事を書こうと思ったかによって誰に取材するかが決まっていた可能性が高いという話です。これは別に『朝日新聞』に限った話ではなく、『夕刊フジ』のジャーナリストの室谷克実氏にしても、『夕刊フジ』で「新悪韓論」を連載されている方なので、どのような発言をするかは初めからわかっていたはずです。
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何度か書いておりますが、私の基本理念として、この世に「真実」などというものは存在せず、あるのは、見た人がそれを如何に解釈(認識)するかだけだというものがあります(領土問題における「真実」らしさの重要性このブログは「公平」「中立」を重んじている?)。

その典型例の1つがマスコミ報道で、同じことを報道しても読者に対してかなり違う印象を与えることが多々あります。今回韓国が日本産の魚介類の禁輸措置をとりましたが、これに対する『朝日新聞』と『夕刊フジ』の報道が大分対照的で興味深かったので、これについて少し。

1 朝日新聞

『朝日新聞』は「『なぜ、今』 韓国の禁輸措置、被災地の漁業に衝撃」という記事で、標題に「なぜ、今」とあるように、確かにこれに焦点を当てた記事にはなっています。

実際「漁業や五輪招致関係者からは、影響を懸念する声があがった」とか、「『なぜこのタイミングなのかわからない。汚染水漏れの発覚から時間がたっている。東電が認めたのも1カ月以上前だ』。水産庁幹部は困惑する」ともしています。

しかし、宮城県漁協の菊地伸悦会長の発言「最悪だ。国の(汚染水への)対策が後手後手にまわった結果だ」「国は本気で漁業者の救済に当たってほしい。絶対に国内の消費者の不買につながらないようにしてほしい」を引用しており、日本国政府に対する批判にもなっている記事です。

2 夕刊フジ

その点分かり易いのはこちらの「韓国、東京五輪潰し画策か!水産物禁輸で"危ない国"印象付け」です。

「輸入全面禁止の対象県は、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県」だったわけですが、「汚染水流出が原因ならば、海がなく、韓国に水産物を輸出していない栃木、群馬両県が含まれることは」おかしいとしています。

その上で、ジャーナリストの室谷克実氏の意見「このタイミングの発表は『日本=危ない国』という印象付けをして、東京五輪を妨害しているとしか思えない」を紹介しております。

つまり、「もともと韓国の民間団体が日本の五輪招致に反対してきたが、国家規模になった」というわけだそうです。

3 政策決定

今回の韓国の禁輸措置がどのような政策決定過程を経て出されたものか知らないので、これが本当に「東京オリンピック潰し」かどうかについてどうこういうつもりはありません。

ただ、このタイミングでということについては、確かにいろいろ思う人がいても何の不思議もないという話です。

それに『夕刊フジ』の指摘に有るように、栃木と群馬を指定しているのはおかしい話ですし、こうした恣意的な禁輸措置が可能となれば自由貿易を維持するという立場的(WTO的)にもどうなのかという話も出てくるのはないでしょうか。

ちなみ中国なぞも領土問題でフィリピンと揉めた時に、バナナの輸入などでいろいろ嫌がらせをしてきましたが、あくまで事務的手続きレベルの話で(中国がフィリピンとの関係改善に5ヶ月、では日本とは?)、今回の様な表だった措置はとっておらず、こうした両国の対応の違いなぞも考えてみるといろいろ面白いかもしれません。

4 宮城県会長の発言

水産業関係者が東電だけでなく、政府の対応に不満を持っているのは当然の話です。それにしても何故宮城県なのかという気もしないではありません。

というのは、実際全面的な漁業自粛により、それなりの補償が行われている福島県の漁業者より、なまじ中途半端に漁ができるが故に宮城県の漁業者は補償などでも揉めることが多いという話を聞いたことがあります。

つまりそれだけ政府や東電などに対して批判的になりがちで、こうした発言がでるのはある程度予想できた面があるからです。

5 最後に

つまり、今回の禁輸措置を受けて、記者が最初にどの様な記事を書こうと思ったかによって誰に取材するかが決まっていた可能性が高いという話です。

これは別に『朝日新聞』に限った話ではなく、『夕刊フジ』のジャーナリストの室谷克実氏にしても、『夕刊フジ』で「新悪韓論」を連載されている方なので、どのような発言をするかは初めからわかっていたはずです。

取材という形をして、如何にも「客観的」に報道しているような形をとっているわけですが、実際は斯様に初めから書く内容を決めて取材を行っているわけで、あまりにも露骨に2つの媒体が正反対のことをしており、いろいろ興味深かったが故の今日のエントリーでした。