「ミトコンドリアとカレーうどん」では元気が出ないな

個性的な人材、さらにその輝きをもった若い人材は数多いのでしょうが、そういった個性を生かす社会づくり、起業の環境づくり、あるいは組織づくりができるかどうかのほうがほんとうの課題なのでしょう。
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いったいなにのことかと思われたのではないでしょうか。実は、今後30年の日本のあるべき姿、目指すべき姿のなかで重要になってくる日本人観だそうです。経済同友会から「日本の将来ビジョン 2045」が発表されたのですが、そのタイトルが『 ミトコンドリアとカレーうどん 』です。変わっていますね。カレーうどんは美味しいですが、隣にミトコンドリアでは食欲が失せてしまいそうです。いいセンスだとはお世辞にも言えません。

それでもなにか深い意味があるのかと目を通してみたのですが、ミトコンドリアは、「長い時間をかけて継承してきた独自の文化や伝統といった 普遍的な要素を持ちながら、環境変化に柔軟に対応できる DNA を内包している」日本人の持つ優れた気質であり、カレーうどんは、「インド由来のカレーと中国由来のうどんを和風だしで味付けした画期的な料理だ。極東のアンカーとして、異文化を許容し、さらに融合して新しい価値を創り上げる日本人の独創性の象徴」だそうです。優れた文化の「継承」と新しい価値の「創造」をめざせということらしいのです。日本がハイブリッド文化の歴史を持ち、人種的にもハイブリッドだというのはその通りです。

今の日本が自虐的になりすぎているという下りは、なにかネトウヨ的な情緒を感じさせますが、集団や組織ではなく、「個」が主役の時代になってくる、またそうしなければならないというのはその通りだと感じます。だからこれからは個々の人が世界に通用する匠(TAKUMI)をめざせということになったのでしょう。

しかし、どうも素直に読めないところがあって、それなら、経済同友会が先頭に立って日本の隅々に根付き「個」を排除するメカニズムを生み出している「ムラ」の解体をめざす運動でも起こしていただければと思ってしまうのです。「ムラ」パワーは恐るべしなのですから。ホンネとタテマエの使い分けも日本の文化で、タテマエでは、個が主役の時代がくる、そうでなければいけないといわれて久しいのですが、ホンネはさまざまな業界、官僚組織、政治家のムラを守るパワーが渦巻いているのが日本です。

古い産業との競合があまりないITの世界では、個人が活躍できる場とか、新しい企業が台頭して来ましたが、グローバルな視点で見れば、まだまだ存在感が薄く、遅れてしまった感が否めません。

日本人が「これまでの画一的な教育を受けているにもかかわらず、十分に個性的で、国内はもちろんのこと世界でも活躍している日本人はたくさんいる」として、片づけコンサルタントの近藤 麻理恵さん、学校設立をライフワークとされている小林りんさん、アイリッシュダンサーとして活躍する林 孝之さん、「オテル・ドゥ・ミクニ」の オーナー・シェフ三國清三さん、また「現代の名工」としての日産のテストドライバー加藤博義さんをとりあげていらっしゃいます。

いずれの方も個性や情熱また才能にあふれているのでしょうが、個性も暴走するとどうかという感じがします。結構ブラックじゃないかという人も混じっているようですが、それも個性ということでしょうか。

「オテル・ドゥ・ミクニ」のコック三国清三が、新米コックを蹴り挙げるシーン拝見。さすが、傷害容疑で書類送検の過去あるコックらしい: 憂き世の日々に埋もれて、たまには温泉へ:

個性的な人材、さらにその輝きをもった若い人材は数多いのでしょうが、そういった個性を生かす社会づくり、起業の環境づくり、あるいは組織づくりができるかどうかのほうがほんとうの課題なのでしょう。

しかし、企業の利益率はせめて欧米並みに「ミニマム10%」とか、現在より「5倍稼ぐ」ことができるようにしようという方向は間違っていないと思います。それを達成するにはそうとう価値観の転換がはかられ、産業や人材の世代交代と新陳代謝を促すことが求められてくるはずです。

多くの産業が成熟してしまい、社会も停滞してきたなかでは、日本の産業や社会の「リインベンション(再発明)」が必要になってくるのではないかとつねづね感じています。しかし「リインベンション(再発明)」として日本の目指すべきところを提示するにしても、「ミトコンドリアとカレーうどん」では心が萎えてしまうのです。

いったいいつの日本のことを言っているのかよくわからない自民党の「日本を取り戻す」といった言葉もありますが、コンペでもして、もっと多くのクリエーターにコンセプト提案してもらったほうがいい言葉が生まれてきそうです。

この前に紹介したこの二冊を同友会のみなさまにもご一読いただければ、きっとタイトルは違うものになってたのではないかと思えます。

このビジョンではおそらく2045年までには道州制が導入されているとして、地域の個性化やグローバル化をはかることも目指すべきだとしていますが、こちらのほうが現実的には経済の閉塞状況に風穴をあける動きになってくるのではないでしょうか。

その山場が大阪の堺市長選だと思っています。もし維新が堺市長選で勝てば、大阪都構想の住民投票にも影響し、実現の可能性が高まるばかりか、野党再編の動きも加速されてくるのではないでしょうか。逆の場合は、地方主権への動きは停滞し、また野党再編の求心力も低下してしまうことが避けられません。

いずれにしても、経済同友会が示したゴールにたどり着くには、現実には新旧の勢力間でさまざまな軋轢が起こってきます。それを乗り越えためには、もっと現実に踏み込んで動いてくれるリーダーを同友会がバックアップしていくこと、しっかりスポンサーシップを発揮されたほうが現実味がでてきそうです。