保健医療のグローバル化が日本を救う

日本は、今後増えていく地球規模の課題を解決するイノベーションを世界との連携の中で追求すべきだ。世界の人々の健康を守ることに貢献し、国家としての健全なリーダーシップを確立する。それができるのが、グローバルヘルス分野なのだ。
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先日、北京で開催された中国の保健医療戦略に関する会議に招かれた。

多くの人が知らないか、忘れているのだと思うのだが、中国が脳卒中や大気汚染による健康被害に悩む現地の様子は、1960〜70年代の日本の状況と良く似ている。中国からの参加者からは、「日本から学びたい」という真摯な意見を幾度となく聞いた。

他国から学ぶことによって、健康被害を減らしてゆく、そこに新しい希望が見える。世界中、それぞれの国で、それぞれの状況化においての健康についての課題を抱えている。

世界の多くの国では、大気汚染以外にも、高齢化社会を迎えての生活習慣病対策や保険制度構築を模索している。この点でも、日本は、1961年に国民皆保険を達成し、低医療費で高い保健アウトカムと公平性を維持してきた経験を持っている。

私は、日本が直面している課題を解くためのキーワードは、グローバル連携とイノベーションではないかと思っている。

その理由はふたつある。

まず、日本が過去50年間に達成してきた「安価で良い保健アウトカムを国民が享受することを達成する」ことが、現在の世界の多くの国での保健医療の中心課題となっていること。戦後の混乱から復興し、平均寿命世界一を達成した知見は、成長著しいアジアやアフリカの国では今まさに使えるはずだ。その点で世界は、今日本を必要としている。

それとは逆に、日本が抱える、または今後大きく問題になるであろう、さまざまな保健医療の課題に対するさまざまな試みが、世界中で試行錯誤されているのをご存知だろうか?

実は、日本の今の問題の解決の糸口が、発展途上国で起こるイノベーションに多く隠されている。限界まで必要に迫られた場所で起こる課題解決策が、いわゆるリバース・イノベーションの形で日本にも応用できる可能性が高い。

保健医療は、日本に大きな比較優位がある分野であり、日本がリーダーシップがとれる数少ない分野である。それは、世界の成長セクターの一つでもある。また、保健医療は、政治や宗教などにも左右されにくい。

日本は、今までの知見を活用し、世界の人々の健康を守ることに貢献できる。

それは同時に日本の直面する問題の解決を模索に役立つはずだ。疲弊する地方の医療問題も、グローバル規模で日本の立ち位置を考えれば、解決できる策がでてくる可能性がある。日本人の応用力がどんなに優れているものかを我々自身が一番知っているではないか。

保健医療は、コストでも施しでもない。それは、将来への投資である。

先進国と発展途上国間での双方向の連携及び経験と知識の共有をしながら、新しい保健医療(グローバルヘルス)のあり方を考えることが必要だ。

今こそ、発想の転換をする時期ではないだろうか。

日本は、今後増えていく地球規模の課題を解決するイノベーションを世界との連携の中で追求すべきだ。世界の人々の健康を守ることに貢献し、国家としての健全なリーダーシップを確立する。

それができるのが、グローバルヘルス分野なのだ。