日中関係をどうやって改善するか?

現在の日中関係は間違いなく戦後最悪といって良いだろう。基本的な認識として、関係悪化の主たる原因は中国側にあり、安倍政権に特段の落ち度があるとは思えない。ネットを閲覧すると、アメリカ政府が「終わった話」と終了宣言を出している安倍首相による靖国参拝が日中関係を毀損したと今尚批判する声も散見される。
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現在の日中関係は間違いなく戦後最悪といって良いだろう。基本的な認識として、関係悪化の主たる原因は中国側にあり、安倍政権に特段の落ち度があるとは思えない。ネットを閲覧すると、アメリカ政府が「終わった話」と終了宣言を出している安倍首相による靖国参拝が日中関係を毀損したと今尚批判する声も散見される。

「安倍首相を非難して、日中関係問題の本質について思考停止する」という態度を続ければ、何時まで経ってもトンネルの出口が見えて来ない。冷徹に評価すれば今や秒読み段階になったとも言える「北朝鮮の暴発」に対し、日本としての手持ちのカードは日米同盟のみとなってしまう。かかる背景から、今回のアメリカ、ケリー国務長官の訪中実績を精査し、日本として対中関係改善のために何が出来るか考えた次第である。

■中国の抱える三つの爆弾

中国は何れ中国自身を粉々に粉砕する事になる三つの爆弾を抱え込んでいる。第一に、PM2.5に代表される環境問題。第二は、理財商品に象徴される不良債権問題である。中国:地方都市に「住宅相場クラッシュ」の予兆、資金撤退の動きも、或いは、中国「影の銀行」新たに850億円回収危機 デフォルト懸念さらに、といったニュースが連日の様に報じられている。中国で発生したバブルはそんなに遠くない将来確実に破裂し、その後中国経済は長い期間調整を強いられる展開となる。社会不安や国民の不満は極限まで高まるに違いない。

最後は、ウイグル系中国人に代表される少数民族問題である。BBCが報じる、中国当局によるウイグル系中国人殺害のニュースは今年になって既に何度も目にした。日常的に行われているのであろう。最近、アメリカで博士号を取得した後国際機関で働いているパキスタン人と話す機会があった。彼の話では、ニュースは氷山の一角に過ぎず、多くのウイグル系中国人が捉えられ、拷問を受けた後、殺害されているのだそうだ。そして、その事実に世界のイスラム教徒は憤慨していると。

事件が起こっている新疆ウイグル自治区は16億人のイスラム教徒の大部分が暮らす、西アフリカ、サヘル地区から北アフリカ、中東、イラン、中央アジアに繋がる、イスラム東西回廊の東の果てに位置する。中国が幾ら力で新疆ウイグル自治区を封じ込めようとしても、国境をイスラム教徒の国々と接しており、物心両面でこれらの国から支援を受ける事になるのは必然である。中国政府は16億人のイスラム教徒を相手に消耗戦を戦い続けるつもりなのであろうか?

■北京の大気汚染は人類の居住に適さぬレベル

産経新聞の伝えるところでは、北京「人類の居住に適さぬレベル」 大気汚染、シンクタンク報告書との事である。中国国民は政府の対応の不味さに相当不満を溜め込んでいる様である。放置すれば近い将来暴動が起こるのではないのか?

中国北京市周辺でここ数日、深刻な大気汚染が続いている。米大使館サイトによると、15日未明には微小粒子状物質「PM2・5」を含む大気汚染指数が、最悪レベル(危険)の値の範囲を超える600近くとなった。

政府系シンクタンク、上海社会科学院などがこのほどまとめた報告書は、北京の大気汚染状況を「人類の居住に適さないレベル」と指摘。呼吸器系疾患などの健康被害も相次いでおり、当局の対応の遅れに対する市民の不満が高まっている。

■中国の地球温暖化ガス排出削減、大気汚染問題解決にアメリカが協力する

地球温暖化ガス排出削減、大気汚染問題解決のため米中が協力する事が、今回米中共同宣言で明らかになった。この趣旨とフレームワークについては大いに評価したい。

U.S.-China Joint Statement on Climate Change

In light of the overwhelming scientific consensus on climate change and its worsening impacts, and the related issue of air pollution from burning fossil fuels, the United States and China recognize the urgent need for action to meet these twin challenges. Both sides reaffirm their commitment to contribute significantly to successful 2015 global efforts to meet this challenge. Accordingly, China and the United States will work together, within the vehicle of the U.S.-China Climate Change Working Group (CCWG) launched last year, to collaborate through enhanced policy dialogue, including the sharing of information regarding their respective post-2020 plans to limit greenhouse gas emissions. Regarding practical cooperative actions to reduce greenhouse gas emissions and other air pollutants, the two sides have reached agreement on the implementation plans on the five initiatives launched under the CCWG, including Emission Reductions from Heavy Duty and Other Vehicles, Smart Grids, Carbon Capture Utilization and Storage, Collecting and Managing Greenhouse Gas Emissions Data, and Energy Efficiency in Buildings and Industry, and commit to devote significant effort and resources to secure concrete results by the Sixth U.S.-China Strategic and Economic Dialogue in 2014.

■中国の地球温暖化ガス排出削減、大気汚染問題解決のためには日本の協力が必要

中国政府が地球温暖化ガス排出削減、大気汚染問題解決に舵を切った事は素直に評価したい。しかしながら、中国独自でやれるか? というと大いに疑問が残る。矢張り、隣国日本の協力が必要なのではないのか? 中国大気汚染の元凶は大別すれば、先ずは、質の悪い石炭を燃料に使い、集塵、脱硫、脱硝をきちんとやっていない事。今一つは、石油精製が充分ではなく、市内を走り回る自動車が質の悪いガソリンを燃焼させ、結果、大気汚染を引き起こしている事である。

従って、石炭火力、製鉄やセメントといった熱源に石炭を使用する産業は日本から集塵、脱硫、脱硝設備を導入すれば大気汚染問題解決は大きく前進するはずである。市内を走り回る自動車に質の悪いガソリンを現在提供している製油所も基本同じ理屈である。こう考えてみると、中国の大気汚染問題は随分と重篤で放置すれば中国国民の暴動も起こり得る状況であるが、解決は左程難しいと思えない。政治が解決のネックとなっているという事であろう。この辺り、アメリカが巧い斡旋をしてくれれば話は一気に進むと思う。

■安倍政権、成長戦略の目玉に成り得る燃料電池車

燃料電池車の可能性については、「エネルギー安全保障と成長戦略、TPP」を参照願いたい。中国の様なこれからも新車購入の増加が期待出来る市場では、環境に全く負荷をかけない燃料電池車に切り替え、一気に環境先進国を目指す事も可能だと思う。

燃料電池車の対中輸出、現地生産、水素製造関連技術の開発が順調に進めば、火山国日本は地熱を活用した水素製造が可能となる。燃料電池車と共に、燃料となる水素の対中輸出が可能となれば貿易収支は大幅に改善し、この分野が経済成長の機関車役になる事も強ち夢ではないと思う。日本国民は対中関係といえば、条件反射的に安倍首相の靖国参拝を批判しそこで思考停止に陥るのではなく、今少し建設的に物事を考えるべきであろう。

■トヨタ自動車が注力する燃料電池車

資源エネルギー庁が公表している一次エネルギーの動向を見る限り石油使用の内訳は輸送機が突出して高い。街のガソリンスタンドに引っ切り無しに自動車やトラックが入って来るのを見れば分る通り、燃料としてガソリンや軽油を燃焼している訳である。ガソリンや軽油をメタノールに転換出来れば、エネルギーソースをリスクの高い中東からリスクのない北米に転換出来る。

更に一歩進め、メタノールを原料に水素を製造してはどうだろうか?水素を燃料とする燃料電池車はH2+1/2O2⇒H2O+エネルギーで、水蒸気以外の排気ガスを出す事のない究極のエコカーである。従って、従来のガソリンエンジン車から燃料電池車に転換すれば大気汚染問題解決に大きく貢献する事になる。燃料電池車は日本に取って夢の車といって良いのかも知れない。

それでは、この燃料電池車は何時我々の前に姿を現すのであろうか? 先月開催の第43回東京モーターショーで、トヨタは2015年アメリカ市場に投入すると説明している。

FCV CONCEPTは、床下に小型・軽量化した新型の燃料電池(FCスタック)や70MPaの高圧水素タンク2本を搭載。FCスタックは、「トヨタ FCHV-adv」に搭載されていたものの2倍以上となる出力密度3kW/Lを実現している。約3分で水素をフル充填でき、実用航続距離は500km以上。同車は5万ドル(約506万円)前後で米国市場に投入されると言われているが、今回トヨタは価格については明らかにしていない。

かつてトヨタが米国向けの大衆車として発表したハイブリッド車の概念には、当初懐疑的な見方も多かったが、技術の改善を重ねた結果、今やプリウスシリーズは米国のハイブリッドカー市場で6割以上のシェアを誇るまでになった。トヨタは、その成功例にならい、2015年に市販を開始する今回の燃料電池車のシェア拡大を目指すようだ。

自動車大国アメリカは燃料となる石油を永らく中東に依存して来た。従って、イスラエル問題と共に、アメリカは中東の地政学的リスクとは無縁ではいられなかった。しかしながら、アメリカ国内のシェールオイル・ガスの開発、生産が軌道に乗り、しかもシェールオイル・ガスを原料とする水素を燃料に使う燃料電池車が、従来のガソリンエンジン車に取って代れば状況は一変する。アメリカは最早煩わしい中東を必要としないという事である。私は、この事がアメリカ外交の中東からアジア・太平洋へのPivot移動の背景にあると考えている。

■燃料電池車の対中輸出

中国といえば、すっかり大気汚染、PM2.5の国のイメージが定着してしまった。こればかりは百聞は一見にしかずで、中国共産党といえども言い訳出来ない。長期的には老朽化している上に、元々脱硫、脱硝といった環境対策が不充分な石炭火力や製鉄所を閉鎖する事が最も効果の見込める対策と思う。

しかしながら、地方経済や地域の雇用といった経済・社会問題とも関係しており迅速な対応は難しいと思う。従って、即効性のある対応はガソリン車から燃料電池車への転換というシナリオになる。この流れに巧く乗れば、トヨタが世界最大の自動車市場である中国でトップブランドになる事も決して夢ではないだろう。