東北復興に至るのは細くて長い棘の道

3.11から3年が経過した。予想した様にテレビは特番を組み、ネットにも3.11の特集が溢れている。その多くはセンチメンタルなものであり、被災者の境遇に同情するというものが多い様に思う。確かに放置すれば風化してしまうかも知れない3.11を、マスコミやネットが集中的に取り上げる事で今尚厳しい状況に放置された被災者の日常に日本中が改めて注目するというのは決して悪い話ではない。
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3.11から3年が経過した。予想した様にテレビは特番を組み、ネットにも3.11の特集が溢れている。その多くはセンチメンタルなものであり、被災者の境遇に同情するというものが多い様に思う。確かに放置すれば風化してしまうかも知れない3.11を、マスコミやネットが集中的に取り上げる事で今尚厳しい状況に放置された被災者の日常に日本中が改めて注目するというのは決して悪い話ではない。

しかしながら、今の様な事を続けていても桜の咲く前の春の風物詩になってしまう様な気もする。矢張り、決して楽しい作業ではないが、「東北復興に至る細くて長い棘の道」としっかり対峙すべきであろう。今回はそういった視点から東北復興を妨げるものは何か? について論考を試みたい。

■被災地の雇用状況

被災直後であれば暖の取れるスペースと食糧の確保が何より重要であろう。しかしながら、被災から3年となれば雇用が重要である。仮説住宅であれ、取り敢えず住むところが確保出来ているのであれば、被災者に取って国や地方行政に依存せず、自ら働いて金を稼ぎ生活に必要な物を購入し、兎に角自立する事が重要である。

厚生労働省が公表した一般職業紹介状況(平成26年1月分)について、に記載されている第6表 都道府県・地域別有効求人倍率を参照する。宮城県と福島県が同じく1.31。岩手県は1.09である。被災地域は何れも1.0を超えており、この事は職の選り好みさえしなければ職にあり付ける事を示している。問題はこの状況が復興ブームによる一時的なものなのか、或いは恒常的なものなのか、という事である。

■増加していない電力需要

景気が上向いておれば当然電力少量も増大しているはずである。しかしながら、一番最近の東北電力のプレスリリースが示すのは真逆の内容である。平成24年度実績 販 売 電 力 量(億kWh)が778 だったのに対し、平成25年度 の予想は772程度 と僅かだが減少している。

製造業は期待された様に再開出来ておらず廃業に追い込まれているケースも多いのだろう。或いは、国内移転、海外移転により辛うじて生き延びているのかも知れない。この理由を突き止める事は勿論重要である。仮に、東北電力管内の女川原子力発電所東通原子力発電所の停止により地元製造業経営者が将来の電力供給や電力料金高騰に不安を覚えた結果であるとしたら、東北復興のためには原発再開を急ぐべしとの結論になる。

■枯渇する復興財源

財務省が発表した平成26年1月中 国際収支状況(速報)の概要を参照する。1月の経常収支は単月では史上最大の1兆5890億円の赤字となった。内訳はサービス収支を含む貿易収支が2兆8128億円の赤字、所得収支が1兆2238億円の黒字である。

昨年1月はサービス収支を含む貿易収支が1兆6458億円の赤字に対し、所得収支が今年とほぼ同様の1兆2974億円の黒字で、経常収支は3848億円の赤字に留まっている。この一年で貿易収支が急速に悪化しており、これが経常収支の悪化に直結している。

1月の経常収支1兆5890億円の赤字をどう理解するか? であるが、一番分かり易い説明は1兆5890億円日本が貧しくなったという事であろう。日本は商品を生産するより、より消費する国になってしまった訳だから資産を売り食いしてやり繰りするしかないという事である。そして、まるで追い打ちをかける様に、先進経済で日本だけ減速か-PIMCOが今後1年の世界を予想の如き予想が今や世界常識になってしまったのも決して無視出来ない。

そうでなくても日本では福祉に金のかかる高齢者が今後激増する。一方、高度成長時代に作られた社会インフラは老朽化が進み、この対応には莫大な資金が必要となる。日本は貧しくなるのに、歳出は膨張する。果たして東北被災地復興財源の予算が確保出来るのであろうか?

■貧しくなる日本人

日本人は団結し東北復興を支援せねばならない。しかしながら、どうも肝心の日本人の貧困化が急速に進みそうである。その背景については、悪化する経常収支と失われる国内雇用で詳細に説明しているのでこれを参照願いたい。

厚生労働省が公表した、非正規雇用の現状はどうなっているの? が示すのは、増え続ける低賃金で働く非正規雇用労働者の実態である。非正規雇用、1年で133万人増加し1956万人に 1月の労働力調査で、を読む限り非正規雇用で働く人の割合は来年には全体の4割を超え、更にその2~3年後には5割を超えると推測される。

国内の製造業が先を争い海外移転を急いでいるからである。その結果、貿易収支は悪化し日本は貧しくなって行く。一方、製造業で正社員として年収800万円を得ていた人達も企業の海外移転に伴い、不本意かも知れないが年収200万円のために非正規雇用の身分で働かざるを得ない。勿論、東北復興を支援したい気持ちはあっても本人が生きて行くのが精一杯で、とてもではないが納税出来る状況ではない。

東北復興に至るのは細くて長い棘の道だと思う。そして、日本人の団結力、苦境に耐える力を試す試金石になると思う。決して楽な道のりではないが逃げる訳には行かない。日本人は覚悟を決めるべきであろう。

震災復興 画像集
東日本大震災・手を合わせる女性 (01 of23)
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東日本大震災から2年半を迎え、多数の犠牲者が出た宮城県南三陸町の防災庁舎前で手を合わせる女性=11日午後 \n\n撮影日: 2013/09/11 (credit:時事通信社)
気仙沼に秋の味覚(02 of23)
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東日本大震災から2年半の11日、宮城県気仙沼市の気仙沼漁港で今季初のサンマが水揚げされた。北海道沖で捕れた約80トンを水揚げしたのは第六安洋丸(同県石巻市)。同港に係留中、津波で陸に打ち上げられたが、修理して出漁している。漁労長は「今年は群れが薄くて苦労したが、大きいものが捕れてほっとしている」と話した。 \n\n撮影日: 2013/09/11 (credit:時事通信社)
東日本大震災・第十八共徳丸とコスモス(03 of23)
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朝日に照らされる「第十八共徳丸」とコスモス=11日午前、宮城県気仙沼市 \n\n撮影日: 2013/09/11 (credit:時事通信社)
東日本大震災・2年半ぶりに灯った明かり (04 of23)
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宮城県石巻市の長面(ながつら)、尾崎(おのさき)地区に25日、東日本大震災以来約2年半ぶりに電気が届いた。同地区は居住が認められない「災害危険区域」だが、仕事などで日中滞在する住民らにとっては待望のライフライン。東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域を除いた被災地では最後の復旧となった。水産業に従事する小川英樹さん(32歳、中央)は「電気がきたことによって、できる作業の幅が広がる。これが復興の第一歩」と作業場に灯った明かりを見上げた。 \n\n撮影日: 2013/08/25 (credit:時事通信社)
大熊町のJR大野駅構内 (05 of23)
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立ち入りが規制されている福島第1原発がある福島県大熊町のJR常磐線大野駅構内。 \n\n撮影日: 2013/08/15 (credit:時事通信社)
漁業の復興・生イカの水揚げ (06 of23)
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日本有数の漁獲量を誇る八戸漁港の市場に水揚げされる生鮮スルメイカ。東日本大震災の被害から復興が進むものの、円安による原油価格の高騰が漁業関係者の痛手となっている=1日午後、青森県八戸市 \n\n撮影日: 2013/08/01 (credit:時事通信社)
仙台七夕まつり (07 of23)
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商店街に鮮やかな吹き流しが飾られた「仙台七夕まつり」。今年のテーマは、東日本大震災の復興への思いと、全国の支援者の気持ちをつなげていくとの意味を込めた「つなぐ」=6日夜、宮城県仙台市内 \n\n撮影日: 2013/08/06 (credit:時事通信社)
jlp15031626(08 of23)
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(credit:時事通信社)
スイカ割りで祝う3年ぶり海開き (09 of23)
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東日本大震災以来3年ぶりの海開きで行われたスイカ割り大会=7月28日、茨城県北茨城市の磯原二ツ島海水浴場 \n\n撮影日: 2013/07/28 (credit:時事通信社)
被災地つなぐ1000キロリレー (10 of23)
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東日本大震災の被災地をランニングと自転車で駆け抜ける「未来(あした)への道1000キロ縦断リレー」が行われている。25日に青森県八戸市を出発し、約700人のランナーが東京(8月7日)までたすきをつなぐ。30日はバルセロナ五輪金メダリストの岩崎恭子さんらが津波の爪痕が残る宮城県南三陸町の防災庁舎前を通過した(写真)。コースは東京五輪が実現した場合の聖火リレーのルートを想定している。 \n\n撮影日: 2013/07/30 (credit:時事通信社)
日本酒を購入する安倍首相 (11 of23)
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「南三陸さんさん商店街」で日本酒を購入する安倍晋三首相=29日午後、宮城県南三陸町[代表撮影] \n\n撮影日: 2013/07/29 (credit:時事通信社)
3年ぶりに復活したトコヤッサイ (12 of23)
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東日本大震災で開催が途切れ、3年ぶりに復活した創作踊り「トコヤッサイ」のコンテスト=27日午後、宮城県南三陸町 \n\n撮影日: 2013/07/27 (credit:時事通信社)
成長する松の苗木 (13 of23)
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高田松原の松ぼっくりから採れた種から育った松の苗木=3日、岩手県陸前高田市 \n\n撮影日: 2013/07/03 (credit:時事通信社)
福島の海水浴場 (14 of23)
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東日本大震災のがれき撤去が終わり、3年ぶりに海開きした四倉海水浴場。東京電力福島第1原発事故による放射能汚染水漏れの風評被害で訪れる海水浴客もまばら=15日午前、福島県いわき市 \n\n撮影日: 2013/07/15 (credit:時事通信社)
福島県いわき市で3年ぶりの海開き (15 of23)
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東日本大震災のがれき撤去が終わり、3年ぶりに海開きした四倉海水浴場。打ち寄せる波に子どもたちが歓声を上げていた=15日午前、福島県いわき市 \n\n撮影日: 2013/07/15 (credit:時事通信社)
プロ野球球宴・黙とうする全セマスコットキャラクター (16 of23)
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試合前、東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげる全セのマスコットキャラクター=22日、福島・いわきグリーンスタジアム \n\n撮影日: 2013/07/22 (credit:時事通信社)
漁業の復興・サメの水揚げ (17 of23)
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東日本大震災の津波で被災した気仙沼港に水揚げされたモウカザメ。高級食材のフカヒレが切り取られ、身は加工食品などの原料となる=5月23日午前、宮城県気仙沼市の気仙沼漁港 \n\n撮影日: 2013/05/23 (credit:時事通信社)
「千年希望の丘」が完成 (18 of23)
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東日本大震災の津波で生じたがれきを使い造成された「千年希望の丘」。津波の勢いを弱めるための防災拠点、震災の教訓を後世に伝える公園の役割も持たせる=9日午前、宮城県岩沼市 \n\n撮影日: 2013/06/09 (credit:時事通信社)
飛行するブルーインパルス (19 of23)
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「東北六魂祭」で、上空に白いスモークでハートマークを描く航空自衛隊の「ブルーインパルス」=1日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/01 (credit:時事通信社)
飛行するブルーインパルス (20 of23)
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東北六魂祭パレードが行われる国道4号の上空を飛行するブルーインパルス=1日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/01 (credit:時事通信社)
パレードの青森ねぶた (21 of23)
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福島市で2日間にわたり行われた「東北六魂祭」が2日、閉幕した。福島わらじまつりや青森ねぶた祭など東北6県の夏祭りが勢ぞろいし、東日本大震災の鎮魂と復興を祈った。来場者数は計25万人に上った。写真は2日目のパレードに登場した青森ねぶた=2日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/02 (credit:時事通信社)
六魂祭の山形花笠まつり (22 of23)
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東北六魂祭2日目のパレードで、練り歩く山形花笠まつりの踊り子=2日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/02 (credit:時事通信社)
被災地の仮設商店街 (23 of23)
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東日本大震災の被災地で営業する仮設商店街=5月23日、宮城県気仙沼市 \n\n撮影日: 2013/05/23 (credit:時事通信社)