ジャーナリストが反対する法は「悪法」?

私も特定秘密保護法案に全く問題がないと考えていません。しかし反対するのであれば、具体的に法案の不備を記事にすべきで、それをジャーナリストが反対と言っているから「悪法」だ「反対」というだけで、誰がその主張を支持するのかという話です。
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『週刊朝日』12月6日号に掲載された「定秘密保護法案反対 メディアはなぜ敗北したのか」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 記事の紹介

「ジャーナリストの田原総一朗氏や鳥越俊太郎氏などが、11月20日、都内で特定秘密保護法案に反対する集会を開催し」た際の、参加者たちの声を記事にしたものです。

田勢康弘(日本経済新聞)氏は、「『これほどひどい法案が出てきたことはかつて経験がない』と呆れ」、岸井成格氏(毎日新聞)も「『秘密保護法は必要なのか』と取材で政府に聞くと、『それは秘密です』と答える。冗談じゃない」と怒っていたそうです。

斯様に参加した「著名なジャーナリストら」はみな「悪法」だと反対しているのに、「衆院通過は確実視されている状況」で、「なぜ、メディアは安倍政権の"暴走"を食い止められなかったのか」という問題提起を行っています。

理由は、「権力監視が疎(おろそ)かになっている状況」があるためで、「新聞もテレビも、いかに首相はじめ重要閣僚を自社に呼ぶのかを考えている」ことが背景にあるとしています。

そして、アメリカで、「NYタイムズは『大統領の(単独)インタビューなんて下品なものできるか』という気風があるのとは対照的だ」としてもしています。

また、鳥越俊太郎氏の意見として、「連日、秘密保護法反対の記事を出しているが、こんな大事な法律が国民全体の中で問題にされない。メディアにも責任がある。新聞やテレビはまだまだ本気じゃない。書きようが甘い。『(消費増税の際の)軽減税率が絡んでいるのではないか』と思いたくなる」というものを紹介しております。

2 メディアの責任

今回の記事は一言で言ってしまえば、特定秘密保護法案の様な「悪法」が衆院を通過するのはメディアが権力と慣れ合って反対の声をしっかり挙げないからだという内容です。

その前提として、特定の法律が良いか悪いかは判断するのは国民の代表たる国会議員ではなく、単なる民間会社にしか過ぎないマスコミに勤めているだけにしか過ぎない「ジャーナリスト」にあるという前提で書かれております。

そして、そうした人たちが本気で反対すれば、つぶせない法案などないとでも言うかのような書きぶりとなっています。

3 権力

何故、国会議員達が権力を有してるかというと、国民の代表として、選挙という過程を経ているからです。では、ジャーナリスト達が何故「権力」を有しているかという話になるわけですが、それも同様に彼(女)らを支持している人がいるからでしょう。

彼らの発言に同調する方が多いからこそ、あれだけの影響力があるという話になるわけですが、両者が根本的に違うのは、ジャーナリストは国民の代表でも何でもないという話です。

確かに政治権力に対する批判を行う機関というのは大事で、それこそが言論の自由の最大の目的の1つとなっています。

実際中国の様に言論の自由が制限され、政府を批判できない状態となると、自分たちの健康という最も大事な権利さえ、失われてしまう可能性も出てきます(大気汚染問題で中国人が政府を批判しない理由)。

4 マスコミの立場

しかし、その一方で、ジャーナリスト(マスコミ)が皆反対することは悪いことなのかというと、必ずしもそうではないわけで、その典型が元記事にも出てきた消費増税の軽減税率です(スズキ会長の軽自動車税増税反対発言は理解できるか?)。

これ以外にも政府の出してきた法案に対し、マスコミは自分たちにとって都合の良い意見を如何にも正当な問題提起のような形で記事にすることがあり、如何なものかと思っております(派遣労働者と「テレビ番組の質」)。

こうしたことをしているから、自分たちが反対しているのに、国民が反対しないのはある意味当然で、これはマスコミ(ジャーナリスト)がしっかりしないからだからという話なのかもしれませんが、今回の元記事について言わせてもらうと考え違いをしているのではないかというのが私の考えです。

5 最後に

私も特定秘密保護法案に全く問題がないと考えていません。しかし反対するのであれば、具体的に法案の不備を記事にすべきで、それをジャーナリストが反対と言っているから「悪法」だ「反対」というだけで、誰がその主張を支持するのかという話です。

ジャーナリストは国民の代表でも何でもなく、自分たちの表明した意見で、国民の支持を集めてるにすぎない以上、きちんとした記事(意見)を提示すべきであり、それもしていないのに、自分たちが反対しているから「悪法」だと言われても自惚れが過ぎるとしか私は思えません。

(※この記事は、2013年11月28日の「政治学に関係するものらしきもの」から転載しました)

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