「プレミアムフライデー、"ゆう活"のように消えるかも」 労働問題専門の弁護士に、『午後3時退社』が定着するか聞いてみた

「長時間労働そのものを削減することはあまり期待できないのではないでしょうか」。
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Laurie Noble via Getty Images

毎月最終週の金曜日は午後3時に退勤するよう呼びかけ個人消費を促す取り組み「プレミアムフライデー」について、日本企業に勤める法務担当者は、「一部の企業の間でしか進まないのではないか」と指摘した

賛同企業がプレミアムフライデー向けのキャンペーンを急速に進める中、このような批判的な意見は後を絶たない。

プレミアムフライデーは、日本社会に浸透するのだろうか?この取り組みに、働き方改善に繋がる要素はあるのだろうか?

民間企業で8年間弱の人事部勤務経験がある神内伸浩弁護士に話を聞いた。

——プレミアムフライデーを導入しやすいフレックスタイム制を採用している企業の割合はごくわずか(4.3%)です。多くの企業にとって、プレミアムフライデーを導入する障壁は、やはり高いと言えるのでしょうか。

やり方はいろいろあります。フレックスタイム制以外の変形労働時間制(※)、例えば「1カ月単位の変形労働時間制」などを採用している企業であれば、理論上は午後3時退社を実現することも可能です。

とはいえ、変形労働時間制のもとで午後3時退社を実現しようとした場合、どこか別の日に早帰りした分の時間を回すことになるので、トータルで働く時間は変わりません。

(※)調査によると、何らかの変形労働時間制を採用している企業割合は52.8%に上る。

——例え導入が進んだとしても、「業務のしわ寄せ」など、それによって派生する問題点は山積みのように感じられます。

そうですね。別の日の労働時間が長くなり、私生活に影響が出ることも考えられます。例えば、子供の送り迎えがあって早出や残業ができない人がいた場合、どうするのかといった問題です。

職種によっては、取引先との納期の関係でどうしても時間を融通できない場合もあるでしょう。月末締めに向けた業務の繁忙期に午後3時に退社するため、前日に徹夜しなければならない、ということにもなりかねません。本当にそれでよいのか、ということは労使できちんと協議を重ねなければならないでしょう。

パートやアルバイトなど、時給制で働いている人はどうするのかという問題もあります。飲食・娯楽等のサービス業、役所、医療関係者など、プレミアムフライデーをそもそも導入することが困難な事業も存在します。

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——プレミアムフライデーは、長時間労働の改善といった「働き方改革」に何かしらの好影響をもたらす可能性はあるでしょうか?

長時間労働そのものを削減することはあまり期待できないのではないでしょうか。この制度の恩恵を受けることができる人は、もともと長時間労働を行う環境下にはなく、比較的残業の少ない人たちではないかと思われます。

日々長時間労働をしている人たちは、プレミアムフライデー当日だけは早く帰ることができたとしても、他の日にその分のしわ寄せを受けて、結局総労働時間は変わらず、むしろ納期がタイトになった関係等で余計に残業は増えるかもしれません。そういった意味において、二極化が進むのではないかと考えます。

そもそも、プレミアムフライデーは長時間労働を是正する制度ではありません。政府が打ち出しているのはあくまでも消費喚起策であって、労働時間の削減効果は二次的、あるいは派生的に、期待できるかもしれない、というレベルのものにすぎません。

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——プレミアムフライデーでは、結局「働き方改革」の効果はさほど見込めない、ということでしょうか?

一定の範囲では、効果はあると考えられます。日本では、まだまだ「周りが残業しているから退社しにくい」という考え方が定着しているため、そういった職場においては気兼ねなく帰ることが出来る、という大義名分となるかもしれません。その側面では、いわゆる「付き合い残業」のような無駄な残業を削減することは出来るかもしれません。

——改めて、プレミアムフライデーという取り組みは日本社会に浸透するでしょうか?

そもそも午後3時退社を実現するためのハードルも高く、恩恵を受けることが出来る人も限られています。プレミアムフライデー自体、「ゆう活」のようにうやむやになって消えてしまうかもしれません。

今後、日本に浸透していくかどうかは、まさに政府がどうPRしていくか、これに賛同し導入を進める企業がどれくらい出てくるかにもよるのではないでしょうか。

もっとも、こうして様々な意見や考えが話し合われ、議論されることで、働き方そのものが見直されるきっかけとなるのであれば、その意味において、効果はあったと言えるかもしれません。

(取材協力:神内伸浩弁護士 事業会社の人事部勤務を8年間弱経て、2007年弁護士登録。社会保険労務士の実績も併せ持つ。2014年7月神内法律事務所開設。第一東京弁護士会労働法制員会委員)

■さまざまな議論が広がるプレミアムフライデー。開始日は2月24日から。

ハフィントンポスト編集部でも、2月24日は実験的にプレミアムフライデーを実施する予定だ。その模様は後日、「やってみてどうだったか?」という体験談としてお伝えする。

当日は、「#みんな3時に帰れる?」というハッシュタグで、メンバーがその時何をしているのかTwitterで呟く予定です。みなさんの状況や、プレミアムフライデーに対する率直なご意見もお待ちしておりますので、ぜひハッシュタグをつけてツイートしてください。

集まったご意見は参考にさせていただき、場合によっては、記事内でご紹介させていただきます。