「クラブが一切つくれない県も出てくる」 藤森純弁護士が指摘する、改正風営法に残る問題点

ロンドンオリンピックの浄化作戦の中で、パブやバーが、営業形態などを理由に一掃されることになった。「同じ轍は踏まないように」と考えた方もいらっしゃったと思います。
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2016年6月23日、改正風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律)が施行された。

風営法の改正がなぜ必要だったのかを聞いた前編に続き、改正風営法によって何が変わったのか、そして残る課題について、クラブとクラブカルチャーを守る会(CCCC)の事務局長・藤森純弁護士に尋ねた。

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――今回の改正風営法とその施行について、それによる主な変更点を解説いただけますか。

まず、「ダンス」の営業に関する規制が撤廃されたことがあります。社交ダンスのような「ダンスをさせる」だけの営業に関しては風俗営業から外れましたので、許可を得ないと営業ができない状態がなくなったのは評価できるポイントだと思います。

また、午前6時から夜中の翌午前0時まで、要するに昼間と夜の営業に関しては、旧風営法の3号営業にあたる形態の営業であっても、特に風営法の許可をとらなくてよいことになりました。

それによって、「ライブハウスが3号営業に当たるんじゃないか」という懸念は、ほぼ解消されたと思っています。ライブハウスに関しては深夜営業をやらないお店もかなり多いと思いますので、そういうところは風俗営業の許可をとらなくてよくなったことは良かったんじゃないかと思っています。

なお、ほかにグレーだったものが正式に合法となった例としては、レストランがDJブースなどを設けてお客さんにダンスをさせる場合や、結婚式の二次会でダンスをさせるような場合があります。

もう1つは、「特定遊興飲食店営業」という新たなカテゴリーが設けられ、この許可を取得すれば、飲食店でも深夜に客へお酒を提供しつつ、かつ客に「遊興」を楽しんでもらうことができるようになりました。

「飲食店での深夜における『遊興』が解禁された」のがこの「特定遊興飲食店営業」という考え方で、大きな変化の一つだと思います。

――今回、改正が実現したことについて、ターニングポイントはどこだったと評価されていますか。

なかなか難しいところですが、オリンピックが決まったというのは、大きな要素の1つとしてあると思います。

日本経済が停滞している中で、どうやって消費を増やしていこうかという話になったときに、ナイトエンターテインメント、ナイトカルチャーをもっと盛り上げていくと。それによってインバウンド客の要請に応え、日本も景気を良くしていくという発想が、国会議員の方々にすごく響いていました。

その意味で、オリンピックが決まったこともあいまって、2020年に向けて日本のナイトカルチャーをより盛り上げていく気運になったという追い風は大きかったと思っています。

――オリンピックといえば、ロンドンオリンピックの際にライブハウス、あるいは音楽バー的なものが一掃されたということなんですが、何がおこったのですか。

ライブハウスというか、あっちだとパブでしょうか。イギリスは、パブで演奏などが日常的に行われている文化がある国だと思うんですけれども。そういう小さいお店、パブとかバーとかが、ロンドンオリンピックの浄化作戦の中で、営業形態などを理由に一掃されることになったと聞いています。

――それはオリンピック中の営業停止ではなくて、浄化作戦を期に、営業を止められてしまったと。

そう聞いています。

――その背景には、日本と同じような状況があったんでしょうか。法律的に突き詰めていくと違法な営業だったという。

おっしゃるとおり、突き詰めていくと違法であったというのが理由だったようです。

――そうすると、活動されている方の中には「ロンドンと同じ轍は踏まないように」とお考えの方もいたのでしょうか。

そういう風に考えておられた方もいらっしゃったと思います。

ほかにも、物件に対する賃貸借の契約という観点でいえば、契約の内容にもよりますが、風営法の許可をとっていない営業をしていた時点で契約の解除事由になる可能性も秘めていたと思います。そのような可能性がある中で営業するのは不安も大きいでしょうし、その不安を解消することに意味があると思っておられた方が多いと思います。

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――改正風営法に残る問題点についてお伺いしたいと思います。

まず、「特定遊興飲食店営業」という営業形態が認められたのは評価できるところなんですけれども、その許可取得に必要な要件が、個人的には若干厳しいかなと思っています。これが1つ目の問題点です。

それから、「特定遊興」における「遊興」の定義をどう考えればいいのか、というのが問題点としてあると思っております。

――まず「許可の厳しさ」についてお伺いしたいんですが、具体的に許可を得るためのハードルはどのようなものがあるんでしょうか。

「特定遊興飲食店営業」の営業所を設置できる地域が決まっています。その範囲が、当初私が思っていたよりも狭く設定されてしまっています。結果、その地域に入っていないお店に関しては、許可をとりたくてもとれないという状況が生じてしまうのが非常に問題だと認識しています。

自治体によっては「特定遊興飲食店営業」の営業所設置許容地域を指定していない都道府県もあります。そういった都道府県については、せっかく規制緩和のために新たなカテゴリーを設けたにもかかわらず、実質的にはその形態での営業ができない状態が生じている。大きな問題だと考えています。

――2つ確認させていただければと思います。まず、地域の指定に関しては、都道府県の条例で決まるという認識でよろしいでしょうか。

基本的には、そうですね。

――営業所設置許容地域を指定しなかった県では、一般論としてナイトクラブがもう作れないという理解でよいんでしょうか。

現状の条例のままでは、特定遊興飲食店営業の許可取得はできないということになります。

ただもちろん、条例を変えて、営業所設置許容地域の指定をすれば、特定遊興飲食店営業の許可取得ができるようになります。そこはこれから、必要に応じて声を上げていかれたほうがいいんじゃないかと思います。

――改正風営法が施行されると、指定地域になっていないところにすでに存在しているナイトクラブというのは、どのような扱いになるんでしょうか。

そこはまだ未知数です。どういうふうに警察が対応するのかが怖い部分ではあります。

ただまあ、今までも許可を取得しないまま営業していたクラブが、なぜ摘発を逃れてきたかといえば、近隣住民の理解を得ていたり、騒音などの問題にきちんと配慮されていたりしたことが理由だと思います。そんな風にきちんと対策をされてきたお店に関して、警察がどこまで取り締まるかは未知数です。

なので、心配な気持ちもありつつ、大丈夫なんじゃないかなという気持ちもありつつ。今後の警察の動きをきちんと見ていきたいですし、もし何か問題が生じた場合には、それに対応できるような形にできればと思っています。風営法の規制の趣旨が何であるのかとか、今回の風営法改正が何のために行われたのか、といったことが恣意的な運用などで骨抜きにならないように注視したいですね。

――CCCCとして、現時点で対応支援を考えておられますか。

団体として、今のところ具体的なことは検討していないです。事業者の団体ではないので。まずは事業者団体が対応すべきだとは思います。アーティストはアーティストでしかやれないことがあると思っているので、今のところは、そちらに注力していきたいと思っています。ただ、全体的にいろいろ問題が生じた場合に、何らかの形で取り組んでいくということはあると思います。

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――ちなみに「東京ではここが危なそう」というのはありますか。

結構あります。

今回の「特定遊興飲食店営業」の営業所設置許容地域がどのように指定されたかというと、もともと旧風営法で、本来だと深夜0時までしか営業できないところ、「深夜1時まで営業を延長していいですよ」という地域、「営業延長許容地域」というのがありました。これは各地の条例等で指定されていて、その地域を今回の「特定遊興飲食店営業」の営業所設置許容地域にほぼスライドさせているんですね。

なので、「営業延長許容地域」がもともと指定されていない県に関しては、「特定遊興飲食店営業」の営業所設置許容地域も指定されていないという事態が起きています。先ほど申し上げたように、全然地域が設けられていない県があると。

しかも、東京なんかの例でもそうですけれども、「営業延長許容地域」の指定というのは、何年も前に行われて、そのあと特に見直しがされていないと思われるんですよね。なので、はたして今の街の実態に合っているのかというと、疑問符が付きます。

東京都の「営業所設置許容地域」として指定されている町名をみても、「あれ、ここは指定されているのにこっちは指定されていないんだ」みたいな地域があるんですね。この指定については検証が必要だと思います。

――風営法改正の運動の中で、設置地域の問題は議題に上がってこなかったんでしょうか。

議題としては上げていたんです。

――とすると、それが立法にあたってうまく反映されなかったという理解でよいでしょうか。

必ずしもそういうわけではなくて、今回の風営法改正とともに、実は建築基準法なども変わっていて、ナイトクラブ用途の建物を建築できる用途地域が広がっています。今までの風俗営業ができる用途地域よりも、法律的にはかなり広げているんですよ。

ただ、それを条例に落としこむ段階になって、どんどん範囲が狭められてしまい、問題がある感じになっちゃってるという状態だと思います。

法律を作る側としては、規制を緩和してなるべく多くの事業者に許可をとってもらいつつ、許可を得た中で警察と対話をしながら営業をしてもらう。そうやって日本の経済を活性化させていって欲しいという思いで法律を変えているんだけれども、条例等によって結果的に立地規制が厳しくなった地域もあります。これについては、規制緩和の趣旨が反映されていないと思います。

そこは本来、今まで私たちがやっていた国に向けたロビー活動とは違うやりかたで変えなくてはならない。地域でどうやってやっていくのか、地域の中でどう定めていくか、というのは国のレベルとは違うので、そこまで力が及んでいないのかなというのは思っています。

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――国が今回の改正風営法に込めた理念と、地域自治体が課題として捉えている実情に温度差があった、というイメージでしょうか。

そうですね。で、それをきちんと議論の中ですりあわせたかというと、そこまでできていないと思うんですね。

やはり、法が変わってからその施行までに、あまり時間がなかったというのがあって。条例でどういう地域を指定するのがいいのかというのは、あまり検証されていないと思うんですね。

地域であまり、実際にどうすればいいのかというのを検討できないから、指針として示された「旧法の『営業所延長許容地域』を指針として、地域を定めなさい」という警察庁側の指針にそのまま従って、みなさん横並びで条例を定めていったという実態があると思います。

――そこを改善するプロセスとしては、地域自治体とその地域で活動されている事業者さんとの議論ということになってくるんでしょうか。

と、思います。地方自治というのは、その場所にいらっしゃる皆さんが、地域の実情に合わせてどう変えたいのか、行政にどうしてほしいのかというのを訴えていかなければ変わっていかない部分ではないでしょうか。ですので、問題点があるのであれば、そこを指摘して変えていくというプロセスをこれから辿っていければいいんじゃないかなと思っています。

――個人的な所感でよいのですが、「この地域が指定されなかったのか、驚いた」というような地域はありましたか。

もったいないなと思ったのは、ウォーターフロントのあたり。いま、都心の商業地域なんかでは大きなクラブが運営できるようなスペースを取ることは難しいんですが、ウォーターフロント・湾岸周りであれば夜に住民もあまりいらっしゃらないし、大きなクラブも作り得たはず。そこがきちんと指定されなかったというのは、ちょっともったいないと思います。

――地域指定の問題以外に、ほかの要件はありますか。

客室の面積に関しては、評価が分かれると思っています。

旧風営法では、客室1室の面積が66㎡以上なければいけなかったんですけれども、「特定遊興飲食店営業」に関しては、33㎡以上という風になったので、66㎡から考えれば2分の1になっている。

ただ、33㎡が果たして妥当な数字なのかどうかは議論の余地があると思いますし、当初私たちがロビーしていた段階でも、こちらの案としてはもう少し面積を小さくして欲しいと要望を出していました。

――すでに営業されている店舗に照らし合わせると、33㎡を守れている、基準をクリアしているお店は多いんでしょうか。それとも、それ以下のお店もたくさんある状況なんでしょうか。

具体的な数として把握しているわけではないですけれども、旧3号営業の66㎡以上は許可基準が厳しいけれども、33㎡に下がれば許可をとれる、というところは結構あります。66㎡が33㎡に下がったことで救われるお店は、相当増えているんじゃないかなと思います。

――指定地域の問題・面積の問題とお伺いしてきたんですが、それ以外に考えられる許可へのハードルはありますか。

照度の話ですかね。明るさの話で、お店の明るさが10ルクス以上なきゃいけないという決まりがあります。クラブやライブハウスで、演出上の効果として10ルクスを下回るということがままあると思うんですが、その場合にどうすればいいのかが懸念点として残っています。

――そもそも10ルクスというのは、どれくらいの明るさなんですか?

一般的に、10ルクスは「映画館の休憩中の明るさぐらい」といわれています。クラブとかだと、10ルクス以上の明るさをずっと維持するのは、演出上の問題として厳しいんじゃないかなというところはあると思います。

まあ警察の方も、照度の測定方法など、ある程度妥協点を探ろうとしていただいているので。それによってある程度解消されるといいなと思っています。ただ、現場でどう対応されていくかはこれからの部分でもあるので、そこはちゃんと情報を集め、みなさんで意見をすりあわせつつ、ふさわしい規制がされているのかどうかをきちんと検証していかなければいけないと思っています。

どの部分を客席と捉えて、どこで明るさを計るのかというのは、現場の対応がかなり大きい要素を占めてくるところです。そこで本来予定していないような運用がなされないようにしていかないといけないんじゃないかなと。

――「特定遊興飲食店営業」の許可の厳しさに関しては、以上でしょうか。地域、面積、照度の問題という。

そうですね。主な問題点としてはそのあたりだと思います。

あとちょっと照度の点に付け加えさせてもらうと、照度の測り方は、警察としては2つのパターンを想定しているようです。

1つは、客が遊興をするスペースと飲食をするスペースが分かれているタイプのお店。クラブをそういうものと想定しているみたいなんですけれども。

その場合は、照度を計るのは、飲食をするスペースになります。その部分だけ照度10ルクスを超える形にしておけばよくて、遊興をする部分、ダンスフロアと言ってもいいのかもしれないですが、ダンスフロアのほうは10ルクスを下回っていてもいいですよというような運用にしようと警察は考えています。

もう1つは、飲食をする客席と、遊興を楽しむ席が一緒のタイプ。これは、警察側としてはライブハウスがそういうタイプだと考えています。

客は飲食をするフロアからステージをみて遊興を楽しんで、というタイプのお店に関しては、照度を計るにあたって、遊興のスペースと飲食のスペースが切り分けられていないので、どうしてもお店全体で照度を測らなければいけない。

そうした場合に、営業時間の半分以下であれば、10ルクスを下回ってもいいですよという言い方をしているんですね。じゃあ現実的にそれをどうやって判断するんだというのはあるんですけれども、そういう切り分けをしながら、照度問題について歩み寄りはみせているとは思います。

それをこれからどう適正に運用していくのかは、警察と相談していくべき話だと思っています。

後編では、改正風営法におけるもう1つのポイント、「遊興」の定義問題について、そして法改正後の課題について聞く)