記者の不勉強と角度をつけた報道

週刊エコノミストの編集部から、「盗聴法(通信傍受法)」について取材を依頼されたが、丁重にお断りした。
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This is an old Telephone from my Grandpa. It stood, since i can remember, in his workshop.He died one year ago. This Phone is a big connection between me and him, because i always played with it when i was there.
Tim G. Photography/Flickr

週刊エコノミストの編集部から、「盗聴法(通信傍受法)」について取材を依頼されたが、丁重にお断りした。

最初に引っ掛かったのは、盗聴法(通信傍受法)という書き方である。犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(通信傍受法)は1999年に成立した法律であるが、憲法が保障する通信の秘密を犯すとの批判が制定当時に起こり、反対派はこの法律を盗聴法と呼んだ。「盗聴法(通信傍受法)」についてという依頼は、取材前から、記者が反対派に同調しているかのようだ。

依頼には取材の具体的な内容が書かれていたが、もっと不可思議だった。まず、「盗聴法(通信傍受法)改正案の内容」について聞きたいというのだ。通信傍受法の改正は、法制審議会に設置された新時代の刑事司法制度特別部会が2014年7月に公表した報告書が起点である。報告書には改正に関する詳細な説明がある。法務省サイトには、今通常国会に提出された改正案に関する情報が、改正案の条文を含めて、掲載されている。どうして、僕が記者に説明しなければならないのだろう。

法律に基づく通信傍受(Lawful interception)は世界各国で広く実施されている。このことは、ボーダフォンが公表したカントリーレポートなどを読めばすぐにわかる。わが国では、各国に比べて極めて抑制的に通信傍受が実施されてきた。今回の改正はその範囲を少し拡大するものだが、わが国と同様に自由と民主主義を標榜する各国に比べれば、依然として抑制的である。

取材内容で最も驚いたのは、「秘密保護法と盗聴法の拡大、共謀罪がそろうと、社会の隅々にまで監視の網が張り巡らされることになると言われているが実際はどうか」という質問だった。福島みずほ氏のような反対派も「今後秘密保護法違反や新設が計画されている共謀罪が対象犯罪とされれば、どのような事態になるのでしょうか。」と言っているだけなのだが。

記者は反対派と接触し、触発されて記事を書こうとしたのかもしれない。しかし、全く勉強もしないで取材しようというのは理解できない。朝日新聞の従軍慰安婦報道に関する第三者委員会で、岡本委員が「記事に『角度』をつけ過ぎるな」と言ったが、週刊エコノミスト編集部の取材姿勢も角度をつけ過ぎている。これが、僕が取材を丁重にお断りした理由だ。