【リオオリンピック】世界の一流選手を支える日本の技術 復興の卓球台からラケット職人まで

日本が世界に誇る「技」の数々を紹介しよう。

リオデジャネイロ・オリンピックが日本時間8月6日、開幕した。21日までの17日間、世界各国のトップアスリートによる熱戦を繰り広げられる。数多くの日本のテクノロジー・サービスが舞台裏を支える。日本が世界に誇る「技」の数々を紹介しよう。

震災復興の思いがこもった「三英」の卓球台

「三英」(千葉県流山市)は、福原愛や石川佳純などが出場する卓球の公式卓球台を製作する。水平が厳しく問われる国際基準では、台の反り返りの範囲は3ミリ以内。これに対して三英の新製品「インフィニティ」は、誤差1ミリ以内を実現している。

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三英は1990年代初頭、従来の深緑とは異なる青い卓球台を開発。インフィニティでは青にも緑にも見える「レジュブルー(フランス語で“青い瞳”の意味)」を世界で初めて使用した。現在でも深緑の卓球台が多く使われるヨーロッパで違和感なく溶け込めるよう、海外展開を見据えたためだ。

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脚部には岩手県産のブナ材を使用した。水平な卓球台で定評のある三英が、脚部に金属よりも強度が足りない木材を使うことはチャレンジだった。木材は振動が収まりにくいという弱みもあったが、家具メーカーの「天童木工」(山形県天童市)と共同で難題をクリアした。東日本大震災からの復興に取り組む東北への思いを、リオにも届けたかった。

デザイン案を練っていた2011年3月、震災が起きた。みんなが卓球を楽しむはずの体育館は急きょ避難所になり、東北に納品予定だった卓球台は倉庫に残った。

東北の木材が世界の舞台で使われることが、被災者の力にならないか―。そう考えた吉沢さんたちは、岩手県宮古市産のブナを脚部の素材に選んだ。ブナは粘りがあり、曲線に加工するのに優れているという。

復興の思い、卓球台に込め=リオ大会、岩手のブナ使用 – ブラジル知るならニッケイ新聞WEBより 2016年7月19日)

バレーボール、選手のプレーが変わった「ミカサ」製の公式球

リオ五輪のバレボールとビーチバレー競技では、広島市に本社がある「ミカサ」のボールが公式球として使われる

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スパイクを決める木村沙織(奥、東レ)=2016年05月22日、東京体育館

ミカサのバレーボールはオリンピックの常連で、1980年のモスクワ大会以降すべてのオリンピックで公式試合球に採用されている

現在の試合球は国際バレーボール連盟(FIVB)がミカサに、「ラリーが続くボールを作ってほしい」と依頼し、2年がかりで開発された。青と黄の2色を使ったボールは、従来型よりもボールの視認性を向上させ、サーブの回転方向が見やすくなっている。これにより選手が、向かってくるボールをその場で待つのではなく、自ら前に出てプレーするようになったと評価されている

世界のメダリストが愛するメイド・イン・ジャパンの帆

ノースセール・ジャパン(横浜市)が製作するヨット用のセール(帆)は、世界の五輪メダリストたちに愛用されている。1996年アトランタ大会から5大会連続で使用され、出場国のおよそ8割が使用。「470級」という2人乗りの競技に限ると、2012年ロンドン大会までに獲得したメダルの数は金8個を含めて23個。メダルの占有率は76%を誇り、アメリカの親会社「ノースセール」やイタリアなどのライバル会社を寄せ付けない強さだ

帆に風を受けて揚力を発生させる470級では、風を受けた時に生まれる帆の膨らみが、ヨットの性能につながる。この膨らみを、規定の範囲内でどのように開発するかがメーカーの腕の見せどころとなる。

ノースセール・ジャパンの帆は、複数のパーツを、選手の特性に合わせて熟練の職人たちが手作業で縫い合わせてつくられている。風などの影響に比べて、帆のデザインの違いによるスピードの差はごくわずかだが、地道な研究によって、他社の追随を許さない製品を生み出した。

少しでも裁断や縫製がずれると、求める性能が得られない。そのため、0.1ミリ単位のずれも許さないように、極めて丁寧につくられているという。

日本から唯一選出。テニスのガット張替え職人

鳥取市でテニスショップを経営する玉川裕康さんは、日本から唯一、リオ五輪においてテニス選手のラケットのガットを張り替える「公式ストリンガー」に選出された

大会の公式ストリンガーは10人。大会側で担当する選手をストリンガーに割り振り、ストリンガーは選手の要望に合わせて、ガットの張りの強さやバランスを調整する。

玉川さんは、北京・ロンドンに続き3大会連続の出場。毎日新聞によると、国内の大会で手伝ううちに精密な作業を素早くこなす仕事ぶりが評判を呼び、国際大会での公式ストリンガーに抜擢された。これまでのテニス4大大会では、錦織圭やセリーナ・ウィリアムズを担当した

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試合期間の途中で帰ってしまうストリンガーもいるが、玉川さんは最後の試合まで滞在するため、上位のシード選手も担当することになりそうだ。「選手がストレスを感じることなくプレーできるよう、要望を正確に実現したい」と、意気込んだ

なお、玉川さんらリオ五輪のストリンガーが使う大会公式ストリングマシンは、埼玉県新座市の東洋造機が製造する製品だ。このストリングマシンは、テニスだけでなくバドミントン競技でも使われる。

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