ロート製薬、希望する全社員に「風疹ワクチン」 職場で集団予防接種

深刻な「風疹」対策、企業の取り組みが始まった。
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Stethoscope and Syringe with Measles Vaccine
CatLane via Getty Images

「風疹」の感染が拡大している。国立感染症研究所によると、風疹患者は首都圏を中心に急増しており、10月10日時点で1103人(昨年の12倍)となっている。この感染拡大を背景に、大企業が対策に乗り出した。

大手製薬会社ロートは希望する全社員を対象に、職場で風疹ワクチンを受けられる取り組みを始めた。集団予防接種は10月19日、まず東京支社で始まった。今後、大阪本社などでも実施していく。ワクチン接種の費用は1人1万円程度かかるが、ロートが全額負担する。「従業員と、将来生まれてくる赤ちゃんの健康を守る」ことが目的だという。

ロートでは風疹の感染を拡大させないことが「会社をあげて取り組むべき課題」と考えた。同社広報によると、約1700人の従業員中、3〜4割がこの制度を利用してワクチン接種を受ける見込みだという。

風疹ウイルスは感染力が高く、咳やくしゃみなどで感染が広がる危険性がある。症状が軽い人もいるため、気付かないうちに周囲に感染を拡大してしまうこともある。

一方で、妊娠20週ごろまでの女性が風疹ウイルスに感染すると、胎児にも感染が広がり、「先天性風疹症候群」の子どもが生まれる可能性がある。ロートでは、女性社員が6割で、出産後もほぼ100%が仕事を続けている。そうした状況を踏まえて、「社員とその家族、さらに生まれてくる赤ちゃんの健康を守るため、妊娠をのぞむ女性社員はもちろんのこと、全社員の抗体保有率を高める必要がある」と考えたという。

日本では、学校での集団予防接種が行われなかった時期があり、特に30代後半〜50代前半の男性の抗体保有率が低い。ロートでは、働き盛りの30〜50代男性の場合、仕事の多忙さから予防接種を受けられていない現状があると考え、費用負担だけではなく、各職場での集団予防接種を決めた。

同社広報によると、予防接種を受けた社員からは「受けようと思っていたけれど、受けられていなかったのでありがたい」「ニュースで風疹が広がっていることを知り、周囲に迷惑をかけてはいけないと思った」など、歓迎の声が寄せられたという。