年収1100万円なのに貯金が出来ませんという男性に、本気でアドバイスをしてみた。

先日とあるサイトからメールが届いた。質問の内容は年収が1100万円で貯金が出来ないという40代男性からの内容だった。
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自分はファイナンシャルプランナー(FP)として開業して、今年で5年目になった。年齢も収入も考え方も全く違う人にアドバイスをするのは中々骨の折れる仕事だが、やりがいのある仕事であることは間違いない。

FPが扱う分野は住宅・保険・投資など、様々なカテゴリがあるが、実は一番やっかいな話は家計管理、つまり貯金や節約だ。他の分野と比べて簡単そうな仕事に見えるが、家計の分析は手間がかかる上に正しい手順も確立されていない。

結果的に100人のFPがいれば100人全員が独自に、悪く言えば好き勝手にアドバイスをしている。これは税理士や会計士、弁護士などまともな資格業に携わる人からすれば恐るべき状況と言えるだろう(家計に限らず全ての分野がそんな惨状だが、この話は一旦別の機会に譲る)。

■年収が高いのに貯金が出来ない理由。

先日とあるサイトからメールが届いた。お金の相談をしたい人が無料で書き込めるサイトだ。自分は無料の仕事は一切やらないと開業前に決めたが、開業後にまだ客が少なく、あまりにヒマな時や気が向いた時だけこのサイトで回答をしていた頃もあった。登録したまま放置しているので今でも時々メールが届くのだが、質問の内容は年収が1100万円で貯金が出来ないという40代男性からの内容だった。

すでに結婚をしていて、奥さんは専業主婦でまだ小さな子供も二人いるという。住宅は買ったばかりのようだが、毎月のローン返済額は10万円台半ばと収入を考えれば少な目と言っても良い額だ。

他のFPはどんな回答をしているのか興味を覚えて確認をしてみると、食費を減らしてみてはどうかとか、○○の支出は収入の何%までに抑えると良いなど、はっきり言ってどうでも良いアドバイスばかりが並んでいる。まさか普段こんなアドバイスでお金取ってるの......? と心配になるような内容だ。あまりの酷さにイラっと来たので本気で回答してみた。

■本気の回答がコレ。

以下、回答として書き込んだ内容だ(一部修正済み)。

「収入は結構あるし、そんなに贅沢してないのに貯金が増えないのはなんで......?という状況かと思います。

答えは簡単で、生活水準が高いからです。支出を減らして貯金をするには生活水準を落として下さい。例えば世帯年収が600万円のご家庭でも子供を育てながら貯金もしています。そういったご家庭と比べれば年間500万円くらい貯金が出来てもおかしくないはずですが、それが出来ないのは単純に生活水準が高いからです。

年収1100万円に見合った生活を送る限り貯金額は出来ません。細々としたアドバイスはいくらでも出来ますが、質問者様にとって無駄な支出はあまりしていないと思いますし、その感覚もおそらく間違っていません。

支出を削るには『無駄を削る』のではなく『生活の水準を落とす』と考えて下さい。せっかく一生懸命稼いでいるのだからそこまで我慢する生活はしたくない、というのならそれでも構いません。ただし、将来お子様が二人とも私立高校・私立大学に通うような状況になれば生活は破たんします。

定年退職の時点でローンは半分以上残っていると思いますが、貯金が出来ないということは繰り上げ返済をする余裕も無いという事ですから、多額のローンを抱えて老後に突入します。

現状は企業で言えば売り上げは大きいけど赤字が出ているシャープのような状態です。シャープは赤字を無くすために給料を減らし、リストラもしています。

損益分岐点を下げて黒字にする、つまり貯金を増やすには他の人が回答しているようなチマチマとした節約ではどうにもなりません。どうすれば良いかというと、それがリストラ=生活水準を下げる事です。幸い住宅ローンの返済額もそこまで大きくありませんので、削る事は十分可能かと思います。

というわけですので、まずは『節約』という意識を捨てて下さい。リストラ=生活水準を落とす、と考えて下さい」

■無駄な支出なんてお金を捨てる以外に無い!

以上が自分の書いたアドバイスだ。これは普段有料で提供しているアドバイスと基本的に方向性は同じだ。

質問をしている人はどこかに無駄があると信じ込んでいる。FPに限らず、お金を貯めることは無駄を削って支出を減らす事だと多くの人が思い込んでいる。しかし、実際には「無駄な支出なんてない」というほかない。

これだけ収入が高い人ならば貯金をするなんて簡単だと見えるだろう。しかし、この男性が今後は毎年100万円貯めたいと考えたとすると、1か月あたりに直せば8万円以上の無駄を「発見」する必要がある。どんなにズボラな人でも8万円も無駄な支出があるはずもない。

また、支出を削る=節約=食費や光熱費を減らす事......と短絡的に考えてしまう人もいるが、食費や光熱費を削っても一ヵ月に8万円もねん出する事は絶対に出来ない。たとえば2割の支出を削って8万円も節約できるのは食費と光熱費で40万円も使っている家庭で、そんな家は大豪邸に住んでいるよっぽどのお金持ちかビッグダディ並みの大家族だけだろう。

結局は「無駄使い」の定義という話にまでなってしまうが、お金を払っている以上、対価として何かしらの価値を得ている事は間違いない。節約をしたいと思っているのだから本当に無駄だと判断していればとっくにその支出をストップしているはずだ。つまり「無駄な支出なんてお金を捨てる以外にはない」という事になる。

無駄という元々存在しないものを探しても意味が無いので辞めて下さいというアドバイスだ。ではどうすればいいのかというと、生活水準を落とすという事になる。

■生活水準は収入で決まる。

収入が1100万円の家族が収入600万円の人と同じ生活をすれば年間で500万円も貯金出来る(税金・社会保険料は一旦無視)。しかし、実際には収入が高ければ支出も増える。例えば住宅ならば、世帯年収1000万円超の夫婦が2000万円のマンションを買う、という事例は過去の相談では一度も無い。世帯年収1000万円超ならば予算はは5000万円前後といったところか。世帯年収が2000万円に近付くと、子供の習い事だけで月に10万円以上という事も珍しくない。

そんな高額なマンションも習い事も無駄だ!と思う人もいるだろうが、これが無駄かどうかは本人が決めることだ。無駄だと思っていればそもそもお金を使わないので、当の本人には無駄使いだという意識があるわけもない。

結局は無駄なんてないという事になるので、貯金を増やすには生活水準を落として下さい、という身もフタもないアドバイスにしかならない。生活水準を落とすとは本人が当たり前だと思っている支出、必要だと思っている支出にまで踏み込む事になるので、確実に痛みをともなう。これが本当の意味での家計のリストラだ。

■天からお金は降ってこない。

この原則さえ納得できれば、支出を削る事は難しくない。生活水準を落とす際にやる事が、お小遣いを削る事なのか、海外旅行を国内旅行に変える事か、子供の習い事を減らす事か、外食の回数を減らすのか、どこから削るかやり方は人それぞれだが決して難しい事ではない。

無駄を削る、という言葉の意味をより深く考えると「ウチの家計支出には無駄が含まれているはずで、それを削れば今の生活スタイルを全く変えずに貯金を増やす事が出来るはず......」という、都合の良い発想が無意識のうちにひそんでいる。

自分の指摘は「そういう天からお金が降ってくるような都合の良い話は無いですよ」という、当たり前だが誰も言わない指摘だ。これを投資や経済学の世界では「フリーランチ(タダ飯)は無い」と表現する。メリットやリターンを得るにはデメリットやリスクを受け入れなければいけないという事だ。

■当たり前のアドバイスでお金をもらってます。

フェイスブックで、思わずムキになってこんなアドバイスを無料でしちゃったよ(・ω