給食でマフィアと闘う―血塗られた土地を美食で再生するイタリアの取り組み

給食は、子どもの昼ご飯という以上に、さまざまな役割を担っている。
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国連の報告書によれば、世界中で少なくとも3億7千万人の子どもたちが学校給食を食べている。この給食、子どもの昼ご飯という以上に、さまざまな役割を担っている。教育や食料政策、格差の是正。スローフードと美食の国で知られるイタリアでは、給食でマフィアと闘う自治体も――。

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〈写真:ピアチェンツァ。中世には宿場町として栄えた photo/Goto Eri〉

イタリア半島のつけ根にあるエミリア・ロマーニャ州。豊かな穀倉地帯を抱え、農薬や化学肥料を使わない有機農業が盛んだ。ロンバルディアとの州境にあるピアチェンツァ市では、マフィアから没収した農地でとれた小麦でつくったパスタを学校給食で使い、その意義を授業で教えるユニークな取り組みをしている。

マフィアと聞くと、南部イタリアを連想するが、もはや南部だけの問題ではないという。ここ数年、北部では同種の犯罪組織「ヌドランゲタ」が勢力を伸ばしており、今年1月にはエミリア・ロマーニャ州内の関係者100人以上が一斉に逮捕された。今回、GLOBE記者が訪れたピアチェンツァ市のパオロ・ドージ市長は「反社会的組織は全土に広がっている。北部の私たちにも他人事ではない」と話す。

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〈写真:パオロ・ドージ市長 photo/Goto Eri 〉

市の中心部から10キロほど離れた小学校では、陽光差し込むランチルームで子どもたちが教師とにぎやかにテーブルを囲んでいた。市の給食予算は年間414万ユーロ(約6千万円)。食材の7割以上に有機農産物を使っているが、その中に「反マフィア」ブランドのパスタも含まれる。給食費は1食5.57ユーロ(約720円)と、日本の水準と比べるとかなり高い。ただ、低所得世帯は所得の水準に応じて細かく減免される。

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〈写真:ピアチェンツァ市の小学校の給食風景 photo/Goto Eri〉

「反マフィア」ブランドの農産物は、全国組織の市民団体「リベラ」の手によるものだ。リベラは1995年に北イタリア・トリノの神父が設立し、現在は国内外の一千以上の団体とネットワークを築く。犯罪組織関係者の没収財産を社会的な目的に使えるよう、法律の制定を政府に働きかけたり、没収した土地を農園や若者の研修施設に変えたりしてきた。ピアチェンツァには2008年に支部ができ、11年から特製パスタを給食に納入している。イタリア全土でも珍しい取り組みだという。

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〈写真:特製パスタ。袋の下部に「マフィアから自由にした土地」の表記がある photo/Goto Eri〉

リベラのピアチェンツァ支部代表のアントネッラ・リオッティさんは元高校教師。反マフィア闘争の記念日などに小中学校を訪れ、子どもたちに活動の歴史や意義について話している。「かつて犯罪の資金源となった土地で、安全でおいしい食物をつくる。『味覚』を通して、市民の力で社会は変えられることを教えたい」と言う。

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〈写真:給食のセコンドピアット(2皿目)ジャガイモのガレット photo/Goto Eri〉

ピアチェンツァは、イタリアの農業協同組合運動の発祥の地ともいわれる。ドージ市長は「給食を通して法を守り、人を大切にする市民を育てる。協同組合を生んだ町らしい取り組みでしょう」と胸を張った。

詳しくは朝日新聞GLOBEの特集 「給食のつくり方」でお読みください。