サービスマンはお客様に名前を覚えられたら一流、覚えられなかったら超一流

「お客様にとってどのような時間にするか」を考えてサービス業に従事しているサービスマンが少なすぎる気がするのです。
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Waiter taking payment from couple
Jupiterimages via Getty Images

レストランなどでよくある光景ですが、良いサービスをした店員にお客様が名前を聞いたり、逆に店員からお客様の名前を尋ねたりしているのを見たことがあると思います。

名前を聞かれるのは、接客業にとってこの上ない喜びです。実際、僕自身もはじめは嬉しかったものです。それが勘違いだと気づくまでは。

世の中にはさまざまな勘違いが存在します。これもその一つなのです。

レストランを例にとってみましょう。

レストランで食事をする時間は、長くて2〜3時間です。お酒を飲めばもっとかかる場合もありますが、この3時間を「お客様にとってどのような時間にしてもらうか」がサービスマンの腕の見せどころと言えます。

お客様に媚びるサービスマンは論外として、まずこの「お客様にとってどのような時間にするか」を考えてサービス業に従事しているサービスマンが少なすぎる気がするのです。

読者のみなさんも、大事な話をしている時に料理の説明をされたり、話が盛り上がっている時にドリンクを持って来られたりといった経験があると思います。

サービスマンは当たり前のようにやっているのですが、彼らは「小さな邪魔」に気づいていないのです。

「サービスなんだから、それが当たり前だ」と思っているうちは、邪魔していることに一生気づかないでしょう。

実際、自分以外に、そういう考えを持ってサービスをしていると感じるサービスマンに出会ったことがありません。いえ、どこかにはいると思うのですが、実際に会ったことがないのです。意識の差と言ってしまえばそれまでですが、マニュアル通りのサービスが多すぎるからでしょうか。

マニュアルがあるとマニュアル以上のサービスはできません。サービスは、生き物だからです。マニュアルに固定されたら、サービスではなくなります。それが大前提なのです。

話を勘違いに戻しましょう。

サービスマンによくある勘違いとして、お客様と世間話をするなど、コミュニケーションを積極的にとれば良いサービスと思い込んでいるサービスマンがたくさんいます。でも、お客様は、食事の3時間を誰と過ごし、誰と話したいのと思っているでしょうか?

お客様が服を選んでいる時、誰に可愛い、格好良い、似合うと思われたくて売り場にいるのか、あるいはお客様が家具を選んでいる時、誰と過ごし、くつろぎたいと思っているのか――サービスマンがそこまで想像を巡らせることができれば、「新作です、お勧めですよ」と言って割り込むことに意味はないと分かるはずです。

お客様の中でも、サービスマンと話したいと思って来る人も確かにいるでしょう。バーなんてそうですよね。でも、たいていの場合は一緒に来た相手と楽しい時間を過ごしたいのではないでしょうか。

お店に来るお客様は、恋人、家族、上司、部下、友達、取引先、そしてお忍びの相手との時間を楽しむものなのです。

それなのに、ベラベラとサービスマンが知識をひけらかしたり、必要ない会話や、ムダに話に割り込むなど、ただの傲慢でしかありません。

3時間の間、何分間、お客様の時間を邪魔したのか? 勘違いしているサービスマンは、おそらく邪魔しているという感覚はないのでしょう。

サービスマンは黒子であり、主役は、お客様。お客様が2人で来ていれば、主役は2人。4人なら主役は4人なのです。

サービスマンが主役の舞台に入り込む余地なんてあるわけがないのです。4人いれば、4人のストーリーがあります。お客様はお互いのストーリーを話したいし、聞きたいわけで、黒子の話は必要ないのです。

できるだけ邪魔せず、時間をかけずサービスし、何もなかったかのように食事が運ばれ、欲しい時にメニューが手元にきて、欲しい時にワインが注がれる。お客様が楽しい時間をスムーズに過ごしていただくことが重要なのです。

サービスマンの存在に気を取られることなく、お客様が心からくつろいでいられるひと時――そんなサービスが出来たら、サービスマンが名前を聞かれることなんてありませんし、何もなかったかのように、楽しい時間を過ごし、お客様は満足して帰られるのではないでしょうか。

名前を聞かれるのは、それだけお客様の空間に介入したこと、もっと言えばお客様の時間を邪魔したことになります。世間で言うところの良いサービスマンかも知れませんが、それでは超一流とはとても言えないのです。

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