自民党は何らかの妥協案を示しながら、超党派「休眠預金」法案の提出を進めよ 〜 『安保』だけでなく『社会福祉』にも注力すべし

休眠預金とは、金融機関で10年以上も取引がなく「放置」されている預金のこと。金融庁によると、毎年約850億円もあり、預金者からの返還請求で払い戻された残りは約500億円。
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今月7日の毎日新聞ネット記事によると、いわゆる「休眠預金」を社会福祉分野などの分野に活用するために超党派の議員連盟で検討してきた法案に対して、自民党総務会という最終局面で慎重意見が多く出ているとのこと。

それにしても、こんな土壇場になって"待った!"をかける自民党とは・・・??

休眠預金とは、金融機関で10年以上も取引がなく「放置」されている預金のこと。金融庁によると、毎年約850億円もあり、預金者からの返還請求で払い戻された残りは約500億円。これは現行制度上、税引き後に金融機関の利益となる。超党派議連が提出しようとしている法案は、この休眠預金をうまく活用しようという話。

貧困問題を始めとした社会的課題の全てを公的資金(税金)だけで解決することは難しい。少しでも税金以外の財源を探求していく必要がある。休眠預金はその一つ。英国や韓国、アイルランドではその活用が既に始まっており、成功例も数多ある。詳細は、別の拙稿(☆1☆2)を参照されたい。

日本では5年前から検討が始まり、昨年4月に超党派「休眠預金活用推進議員連盟」が発足。現在、法案提出のための最終段階に来ている。この法案による新制度案は、①休眠預金を預金保険機構に移管する、②返還請求分を除いて、同機構から国が指定する「指定活用団体」に交付する、③目利きの役割をする「資金分配団体」を通じて、社会福祉分野など公共性の高い活動を行うNPOなど「現場の団体」に交付される、というものだ。スキームは下図の通り。

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ここに今、自民党総務会が立ちはだかっている。争点は大きく2つあり、(1)「指定活用団体」は官僚の天下り機関になる可能性があり、行政スリム化に逆行するのではないか、(2)休眠預金を活用するのであれば、国庫に入れるべきではないか、といったこと。これらの反対意見は非常に重要な点を突いており、これらに係る心配をきちんと払拭しておくことは不可欠だ。

まず、第一の点についてであるが、指定活用団体の創設が行政改革に逆行しないかどうかという件。これに関しては、心配は全くいらない。法案では、指定活用団体は一般社団法人が担うとされているので、無用な行政肥大化はそもそも考えられない。ただ、官僚の出向や天下りへの懸念に対しては、しっかりとした歯止めを設けることが必須だろう。それに関しては、指定活用団体の人事面や人件費の面での条件付けを法文上で追記すべきである。

次に、第二の点についてであるが、休眠預金を国庫に入れるかどうかという話。国庫に入れるスキームに修正することで休眠預金の活用が実現するのであれば、予算の使途が当面「この法案に規定される社会福祉分野」に限定される休眠預金向け特別会計を創設し、例えば金融庁担当課の所掌する予算措置として運用していくようになるといった方法が想定される。但しこの点については、第一の点、即ち無用な行政肥大化に反するとの懸念を振り払うための説明をしっかりしておく必要がある。

他にも論点は幾つかあるが、そうした点も含めて更に細かいことは、政令(施行令)や省令(施行規則)で決めていけば事足りる。今必要なことは、何らかの妥協案であっても法案を早期に成立させることで休眠預金など『税金以外の、眠っているおカネ』の活用の道を開くことと、貧困問題など社会福祉分野に注力する政治的姿勢を明示していくことだ。

『安保』の次は、『社会福祉』に注力していくべきではないのか。

新しい制度を創る場合に心配事が多いのは当然だ。しかし、それについては法案の中で一定の条件を整えておけば良い。そんなことくらい、自民党が金融庁など関係省庁に指示すれば翌日にでも案は出てくるに決まっている。例えば、法案による新制度がしっかりと機能しているかどうかを診るため、3〜5年以内の見直しをあらかじめ決めておく「サンセット条項」を追記することがあり得る。

あるいは、社会福祉政策の恩恵を受ける人々には自民党の支持層が少ないので、この法案の提出に"待った!"をかけているのか? まさか、国政選挙に3連勝している『巨大な自民党』が、そんな程度の理由で社会福祉分野の資金繰りを阻むことをしないとは思うが・・・。