オンとオフをあえて分けない、行動派"ソーシャル女子"が気付いた使命とは

「新しいソーシャルな働き方」をしている人をインタビューしていく本企画。今回お話をお聞きしたのは、リコージャパンの太田康子さんです。太田さんは、メーカー系企業に勤めながら、福島で社会貢献活動をする一般社団法人「水風戦協会」の理事としても活動しています。
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■同じ日本なのに、天と地ほどのギャップがある世界

「新しいソーシャルな働き方」をしている人をインタビューしていく本企画。今回お話をお聞きしたのは、リコージャパンの太田康子さんです。

太田さんは、メーカー系企業に勤めながら、福島で社会貢献活動をする一般社団法人「水風戦協会」の理事としても活動しています。

東日本大震災以降、すべてが変わったという太田さん。初めて福島でしたボランティア活動から自らの使命に気付き、自社CSR部門への異動希望か、ほぼ毎週末のボランティア、非営利組織の理事就任、など積極的な行動をされてました。

また会社がある、キレイな東京・銀座を歩いている自分と、週末ボランティアでヘドロにまみれてすごい悪臭の中泥かきをする自分とのギャップがあったとも言います。

現実と理想の差に嘆く事なく、淡々と行動し、今では2年越しの希望がかない、CSR部に異動となり、また先月に社団法人の理事にも就任となりました。

2011年3月まで普通のビジネスパーソンだった彼女が、この3年で得たものとは?20代後半〜30代で、今のキャリアにしっくりきていない方必見のインタビューです。

※リコージャパン株式会社は、株式会社リコー(メーカー)の商品の国内販売会社。2014年7月に関連会社4社が統合し社員数約2万人の会社に。

■バリキャリを目指していたこともある

安藤:まずご経歴からお聞きします。

太田康子さん(以下、太田):北海道出身で、大学卒業後の就職が北海道リコーでした。今は統合されていますが、当時は販社が各都道府県にありました(現・リコージャパン)。ちょっとややこしいんですけど、製造メーカーのリコーと販売会社のリコージャパンに分かれていまして、今私がいるのは、販売会社のリコージャパンとなります。

新卒で会社に入った時には「業務スタッフ」という、いわゆる事務職です。20代はいくつかの部署を経験させてもらったのですが、私の中で「冬の時代」と呼んでいるのですが(笑)、まさに下積みというか、試行錯誤を繰り返していたような時代でした。

30歳になっていわゆる企画職につきました。販売代理店を通じお客様にOA機器を販売するという部署だったのですが、自分の企画で結果が出たときや、そのプロジェクトで社内表彰されたこともあり、仕事の楽しさを実感していました。

で、ここまでは北海道での話で、ぜひ東京でチャレンジしたいという気持ちが強くなり、色々な方のご協力もあり、無事に東京のリコーに転籍することになりました。リコーグループではあるのですけど、東京と北海道のリコーは組織としては社長も異なる別会社ですし、そんな簡単には転籍できないのですが、どうしてもチャレンジしたくて、東京にきた、ということなりました。

転籍をする人は、親の介護ややむを得ない引っ越しなどの相応の理由がなければできませんが、どうしても東京に行きたくて、転籍希望を出して、前例がないと言われる中、東京の会社に転籍させてもらいました。上京したのは2008年のことでした。

安藤:典型的なキャリア重視のビジネスパーソンで、俗にいう、バリキャリ(バリバリ・キャリアを目指すスタイル)な感じ。

太田:そうなのですが、その後、人生のターニングポイントとなった東日本大震災を経験します。そこで、これまでのキャリア観が180度変わりました。

それまでは社会貢献とかCSRだとかはまったく知らないし、したこともありませんでした。震災以降、テレビで見ているだけではダメだ、現地にいこうと。直後は移動手段あまりなく、行くチャンスがなかったのですが、2011年6月なりにやっと福島・いわき市に行ったのが最初のボランティアでした。

最初は、まず一回行ってみよう、とだけ思っていたのですが、様々な活動をして、また行かなきゃと思ったのです。一回限りではダメだ、と。

そのあとは、持ち前の行動力を活かしてほぼ毎週末に福島・いわきにボランティアにいく、というような生活をしていました。そして、東京・銀座に月曜日の朝に出社しているわけです。とてつもない惨状がある一方、東京では何事もなかったかのように、一日が過ぎていくのです。

安藤:同じ日本なのに、東京の"普通さ"は異常でしたね。

太田:キレイな銀座を歩いている自分と、ヘドロにまみれてすごい悪臭の中泥かきをする自分のギャップがそこにはありました。多くの人にあったと思うのですが、自分が今まで持っていた価値観が崩れたというか、何が正しいのかさえわからなくなるような感じでした。

金曜日に、銀座の通りを大きな荷物を背負ってボランティアバスの集合場所に向かう自分と、飲んだ帰りの人たちとすれ違うわけです。どちらが良いとかではないのですが、正直な所、すごく複雑な気持ちがだったを覚えています。

■オンとオフを分けすぎない、というワークライフバランス

安藤:個人での活動は素晴らしいですが、会社やプロジェクトでの活動はしなかったのですか?

太田:すぐに気付きました。個人の力だけでは限界がある、と。片付けが一段落した時にこれからどうしようかと、福島のボランティア仲間の中で考えていました。

その中で形になったものが、スポーツ競技としての水風船大会でした。それからできあがったのが、今やっている「水風戦協会」という団体です。

設立当初はボランティアとして、大会運営をサポートしていました。8週連続で福島に通ったことありました。もちろんボランティアですので、完全自己負担であり、貯金を切り崩して活動をしていた瞬間もありました。

それでも止めなかったのは、あれだけの惨状をみて、今やらずにいつやるんだ、という気持ちがあったからだと思います。今やらなければ、いつか後悔するだろうと。今では理事となり、これから本格的に活動を始めると行った所です。

そういった使命感もあり、個人の社会貢献活動としては色々行動をしてきたのですが、社会的なインパクトとしては、すごく小さい。まさにCSR(企業の社会的責任)ですけど、企業なども巻き込んで大きな活動にしていかないと、ただの自己満足で終わってしまうと感じていました。

プライベートでそういった活動をしていて、本業でもしたいという気持ちが強くなるのに時間はかかりませんでした。CSRの担当部署もあるし、そこでチャレンジしてみたいと。色々なマネージャーにも相談させてもらい、色々な方のご協力をいただき、ちょっと時間がかかりましたが、今はCSR部門に所属させていただいています。

事務的な部門ですので、少数精鋭で部署運営されており、すぐに希望は通りませんでしたが、2年くらいでしょうか、転属希望を出し続けていたらたまたま空きができて入れたという感じです。運が良かったんだと思います。

安藤:CSR部に異動希望出して本当に配属された人は初めてです。どの会社も狭き門ですし、本当にタイミングがよかったですね。

太田:もちろん、その2年の間でもCSR関連の勉強会に参加したり、ネットワークを作ったり図書館に通って関連書籍を読んだり、自己流ですが努力し続けてました。そうして、自分の環境や知識等が整ってきた時にちょうど配属になったというタイミングでした。

タイミングがよかったというのもあるのですが、弊社のシステムの影響も大きいです。弊社では年に一回、全社員から転属などの配属希望を受け付ける制度がありまして、希望がすぐ通るというわけではないですが、従業員の意志を尊重してくれる仕組みのおかげで、今、オンでもオフでも社会貢献活動に携わることができているというのがあります。

安藤:パラレルキャリアを実践される方の多くは、オンもオフも関係ないという人が多いですが、そういったご経験はありますでしょうか?

太田:ありますね。例えば、リコージャパンアワードという社内の優秀者を表彰する制度が最近できたのですが、その第一回の「社会貢献賞」を受賞したプロジェクトがあります。「ボーイズリーグ」という少年野球の東北でのイベントを企画したのですが、これは元々本業とは関係ないプライベートの活動からスタートしたものです。

オフの活動だけど、オンの活動みたいな、まさにパラレルキャリア的なワークスタイルでいたからこそできたことの一つです。ボランティア活動などによる、ネットワーク構築や知識などが本業でも役に立ちました。オフの活動が様々な面で本業に還元できているなと実感しています。

他にも、社会貢献系イベントに参加した時に名刺交換をさせていただいたメディアの方、Facebookでつながっていたの方など、個人のネットワークも本業のネットワークも含めたCSRプログラムの実施もしました。社外で活動し得てきたものが、本業のイベントにうまく重なってきたというイメージです。

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水風戦イベントの様子

■上にいくキャリアではなく、横に広げるキャリア観

安藤:今後の抱負・目標ってありますでしょうか。

太田:まずは水風戦イベントの普及ですね。今年初めて西日本で開催されたのですが、神奈川からもオファーがあり、観光協会とか色々な地域の人たちが関わってくれるほどのプロジェクトになりそうです。他にも自分自身でCSRや社会貢献に対する知識を深めたりする活動もして、今後のキャリアに活かしていこうと考えています。

安藤:オンでもオフでも社会貢献色満載ですね。モチベーション維持のコツってあるんですか?

太田:色んな活動をしているので、忙しいといえば忙しいですけど、やりたいことができている充実感が非常に大きいです。社会貢献大好きというか、オンでもオフでも社会貢献に関われていて、イキイキしてい感じがします。

モチベーションはそもそも下がったり上がったりしないかもしれません。大変な事もありますけど、仕事がイヤになったことはないですね。オフでも人と会ったりしていると、得るものが多いですよね。変ですかね(笑)?

安藤:自分を偽らないというのは重要だと思いますよ。ただ、キャリアという面では、特にCSR関連部門はポジションも少ないし、キャリアアップが難しい印象がありますが、どうでしょうか?

太田:以前の私は、「必ずマネージャーになる」と上昇志向が強かったのですが、震災以降、人生観というかキャリアについての考え方が変わり、今はそこまで強くありません。それまでは、どうやった上にいけるか、どうしてこの上司は引っ張ってくれないのかとかばかり考えていました。

でも震災ボランティアに行って、これが自分の使命だと知った時、自覚した時というかもしれませんが、この生き方を徹底的にしていこうと思ったのです。上にいくキャリアではなく、横に広がるキャリア観というか。その使命に気付いてしまった自分に嘘はつけませんから。

もちろん、結果的に偉くなれるのであれば、もちろん良いことだと思いますよ。給料も上がるだろうし(笑)。でもそこがすべてではないということです。私は、会社の人たちに社会貢献の裾野を広げるというミッションもありますし、オフでの様々な活動を継続していくというミッションもあります。

安藤:社会起業家がいう「原体験」に近い感覚かもしれませんね。「社会問題に気付いてしまった。今、自分が動かないで誰が動くんだ。今動かなければ、一生後悔するぞ」みたいなヤツです。でも、そこまですると、オフの活動が副業規定にはひっかかりそうですけど?

太田:もちろん、社団法人の理事就任の確認はしました。一応法人の役員になるので。でも、さらっとOKが出ました。定期的な給与があるわけではないですし、平日夜や週末に活動をしているので問題ないという判断です。実際ボランティアみたいなものですから。

とはいえ、例えば福島で活動をするときに助成金が出て、そこから交通費・宿泊費などの実費はもらいますよ、と言ったのですが、実費ならOKです、ということらしいです。

特に書類を書くわけでもなく、口頭ベースの報告でした。会社がパラレルキャリアというか、多様なキャリアに理解があるのはありがたいですね。

安藤:先進的な企業風土って羨ましいです。では、最後に読者へのメッセージを。

太田:「行動をしよう」ということですね。私の場合は行動しすぎて今に至るみたいな部分もあるのですが、やはり「社会貢献したほうがいいよな」で終わってしまっている人が世の中多いと思うんです。

後悔しないキャリアを築きたいのであれば、絶対行動すべきです。最初の一歩はすごくエネルギーが必要だし大変だと思うけど、私レベルでもそうでしたし、その大きな一歩が人間的な成長を促してくれると思います。

【企画・編集協力:CSRビズ