【藤井聡太四段とは】羽生善治三冠が「どんな棋士になるか楽しみ」と期待を寄せる中学生棋士の素顔

6月21日の対局に勝利。デビューからの公式戦連勝記録を、歴代最多タイの28に伸ばした。
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時事通信社

史上最年少のプロ棋士・藤井聡太四段(14)の快進撃が止まらない。2016年12月のプロデビュー以来、公式戦では27連勝をマーク。6月21日の「第67期王将戦」第1次予選澤田真吾六段に勝利すれば、歴代1位の連勝記録「28」に並ぶ。

藤井四段は6月2日にも澤田六段と対戦している。この時は午前中に同じ局面が4回繰り返される「千日手」となり、午後から指し直しに。実力者の澤田六段に終盤から攻め込まれ、一時は苦戦を強いられたが逆転に成功。接戦を制した。

21日の対局は大阪の関西将棋会館で午前10時から始まり、夜までには終局する見通し。

【UPDATE】(2017/06/21 16:52)

藤井聡太四段は6月21日の「第67期王将戦」第1次予選で澤田真吾六段に勝利。デビューからの公式戦連勝記録を、歴代最多タイの28に伸ばした。日本将棋連盟広報課によると、藤井四段の次の対局は6月26日。「竜王戦」決勝トーナメントの初戦で増田康宏四段(19)と対戦する。30年ぶりの記録更新をかけた大一番に挑む。

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「早熟の大器」藤井聡太四段とは?

■14歳2カ月で鮮烈プロデビュー「史上5人目の中学生棋士」

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藤井聡太四段(2016年09月03日)

藤井聡太四段は2002年7月、愛知県瀬戸市生まれ。現在は名古屋大学教育学部附属中学校に通う中学3年生だ。好きな科目は数学。地元の名物「みそ煮込みうどん」をはじめ、麺類が好物だという。

5歳の時に祖母から教わったことで将棋の世界へ。地元の将棋教室に通った後、小学4年だった2012年に棋士養成機関の「関西奨励会」に入会。2015年には史上最年少(13歳2カ月)で、プロまであと一歩となる「奨励会三段」になった。

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子供将棋教室で将棋を指す8歳ごろの藤井聡太四段(右)と兄(2010年)

三段全員が参加する「三段リーグ戦」は年2回あり、ここを勝ち抜いた者だけが「四段」のプロ棋士に。プロになれるのは1年に4人だけという超難関で、中には数年にわたって足止めを食らう人もいる。現名人の佐藤天彦名人でさえ三段リーグ突破に4年を要したが、藤井四段はわずか1年でクリアした。

2016年12月、「史上5人目の中学生棋士」として14歳2カ月でプロデビューを果たした。20日に引退した加藤一二三九段が保持していた歴代最年少記録(14歳7カ月)を62年ぶりに塗り替えた。

デビュー戦の相手も、奇しくも「史上初の中学生棋士」だった加藤九段。「最年少棋士」と「最年長棋士」、世代を超えた二人の天才による対局は、大きな話題となった。対局は加藤九段が猛攻を見せたが、終盤で妙手を繰り出した藤井四段が勝利。以来、藤井四段は連勝街道を爆進中だ。

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記録が残る公式戦で、最も年齢の離れた62歳差の対局を終え、感想戦をする藤井聡太四段(右)と加藤一二三九段(2016年12月)

「将棋界のレジェンド」と相見えたこのデビュー戦、藤井四段にとっても思い出深いものになったようだ。対局中の加藤九段について、藤井四段はこう語る。

「かばんからチーズを取り出して、食べていました。対局中にチーズを食べる方は初めて見たので、チーズというのは…、斬新な新手筋ではないかと思いました。」

最年少VS.最年長 ~“天才”少年棋士 鮮烈デビュー~ - NHK クローズアップ現代+より)


20日に加藤九段が引退すると、藤井四段は「先生と対局しその迫力ある指し手を体感できたことは僕にとって大きな財産になると思っています」とコメントした

■優れた大局観、驚異の終盤力

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自身の「大志」の揮毫が入った扇子を手に、撮影に応じる藤井聡太四段(2017年06月07日)

読みの精度にも定評がある。終盤戦で逆転勝ちすることもしばしば。師匠の杉本昌隆七段は朝日新聞(2016年9月4日朝刊)の取材に、「元々、(局面を把握する)大局観に優れ、ハングリー精神もあった。ここ数カ月で、弱点だった序中盤の力も伸びた」と評する。

詰将棋にも造詣が深く、2015年3月の「第12回詰将棋解答選手権」ではプロ棋士をおさえ、当時奨励会に所属していた藤井四段が、ただ一人全問正解で優勝。筋を読む速さと正確さを兼ね備えている証明と言える。

将棋以外にも好きなことはあるのか。NHKのインタビューに、こう答えている。

――2番目に得意なことは何?

藤井四段「それは将棋と詰め将棋の次ですか。実は1位が詰め将棋かもしれませんが。」

――「3位は?」

藤井四段「詰め将棋をつくることです。」

最年少VS.最年長 ~“天才”少年棋士 鮮烈デビュー~ - NHK クローズアップ現代+より)


久しぶりの中学生棋士の活躍に、将棋ファンの裾野も広がった。揮毫(きごう)が入った扇子や、藤井四段の写真をあしらったクリアファイルなどの公式グッズも売り出され、将棋界はいま「藤井フィーバー」で盛り上がる。

日本将棋連盟の佐藤康光会長は「21年前、羽生三冠が7タイトルを独占した時のような盛り上がりを感じている。今回のブームで将棋に興味を持った方が楽しめるよう、環境を整えていきたい」(朝日新聞2017年05月25日夕刊)と話す。

■羽生善治三冠「どんな棋士になるかとても楽しみ」

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朝日杯将棋オープン戦で対局に臨む藤井聡太四段(2017年06月17日)

弱冠14歳ながら、破竹の勢いで連勝する藤井四段。対局では落ち着いた表情で指し進めるが、幼い頃に通っていた将棋教室では「反則負けを喫した後、泣きながら将棋盤にしがみついて離れなかった」(朝日新聞2016年9月8日朝刊)といった情熱的なエピソードもある。

藤井四段のほか、これまでに中学生でプロ棋士になったのは、加藤一二三九段、谷川浩司九段、羽生善治三冠、渡辺明竜王の4人。全員がタイトル経験者で、いずれも時代を彩る名棋士となった。藤井四段、やはり目指すのは「名人」だ。6歳の時には「しょうぎのめいじんになりたいです」と夢を記していたという。

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だが、名人への挑戦権を得るには、「順位戦」という長く険しい道のりを勝ち抜かなければならない。最下級の「C級2組」からスタートし、毎年昇級を果たした上で、トップ棋士が集まる「A級」で最高成績を上げて、晴れて挑戦者になれる。A級になるまで最短4年、どんなに早くても、デビューから名人になるまでに最低で5年はかかる。

朝日新聞デジタルによると、デビューから4年連続で昇級しA級に昇ったのは、これまでに2人のみ(加藤一二三九段、中原誠・十六世名人)。「棋界最強」と謳われる羽生三冠でも7年かかった。

それでも、藤井四段は前向きだ。日刊スポーツのインタビューでも、「将棋を指すからには、タイトルを目指していきたい。僕も本当に将棋が好きですし、もっと興味を持ってくれる方が増えたらうれしいことです。その一助になれたらうれしいです」と語っている。

インターネットテレビ局「Abema TV」が4月に放送した対局では、非公式戦ながら羽生善治三冠にも勝利した。対局後、羽生三冠は藤井四段との対局を振り返り、こう語った。

「初顔合わせでしたが鋭い攻めの棋風の印象を持ちました。また、新人とは思えないくらいの落ち着きを持っています。これからますます成長していくと思いますので、どんな棋士になるかとても楽しみです」

毎日新聞(2017年4月23日 23時21分)


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