18歳では遅すぎる? オランダの「センター試験」は12歳

オランダでは、大学進学について悩むのは12歳です。

今年も受験シーズンが始まりました。大学全入時代といわれる一方で、教育格差といった問題にも注目が集まっています。

高い授業料を払って大学に行く意味があるのだろうか。

そんな問いも繰り返されます。大学をめぐって、いろいろな制度が揺らいでいるようにも思えます。

私自身海外で生活するようになり、日本と全く違う制度が今住むオランダにあることを知りました。オランダでは、大学進学について悩むのは12歳です。

12歳の「センター試験」とは

オランダでは小学校卒業時に将来の進路がほぼ決まります。12歳の小学校卒業学年にCITOテストという全国共通学力試験が実施されます。試験期間は3日間、試験科目は国語、算数、理科、社会、総合学習能力です。日本の大学入試センター試験のように一斉に行います。

実際にはこのテストの結果だけはなく、これまでの学校の成績、普段の学習態度、本人の興味や希望を考慮して、事前に先生から進路のアドバイスがありますが、試験結果が出た後に、小学校卒業後の進路が最終的に決まります。

小学校卒業後は3つのコースに分かれます。大学進学中等教育(6年)、上級一般中等教育(5年)、職業訓練中等教育(4年)があり、どのコースも最初は共通のカリキュラムですが、進級するにつれて、それぞれ教育内容が大きく変わってきます。大学進学中等教育の卒業試験合格者が大学に進学することになります。大学進学中等教育に進むことができるのは全体の2割もいませんが、そこから落第することもあり、卒業試験をパスすることは簡単ではありません。大学はまさにエリートを養成する所です。

これでは、12歳の受験競争が激しくなるのではないかと心配してしまいますが、そういうことはないようです。試験の準備をしたいと先生に相談すると、子どものいつもの力が出せればいいから準備の必要はないと言われます。小学校では、宿題がないのが普通で、時間割をきちんと決めていない学校もあります。子どもは自由でよく遊ぶことが大切。意欲やレベルに合わせて学習を進めるので、小学生のうちから勉強熱心になる風潮自体がないようです。

教育はお金がかかるからこそ

小学校卒業時の試験も、子どもの学習到達度を比較するというより、むしろ、先天的な能力や適性を判断することが重視されているようです。先生から見れば、12歳の時点でそのような能力はすでに明確になっている、ということでした。

本人や家族が大学進学を希望していても、試験の成績が良くなければ認められません。逆に試験の成績が良くても、勉強への意欲がないと先生が判断して、大学進学コースへ進むことを認めてもらえないこともあります。もちろん、後から本人の努力次第で、大学進学コースに編入し進路を変えることもできますが、それは簡単なことではなく、最低1年は余計にかかることを覚悟しなくてはなりません。

子どもの適性に合わせて、将来の進学、就職に直結した教育を行うこの制度は有効だと考えられているようです。社会的な投資として教育に莫大な費用をかけるのだから、効率的に、効果的に行うべき、いうことなのでしょう。このような教育制度は、オランダ特有というわけではなく、他のヨーロッパの国にもあるようです。

オランダでは18歳までが義務教育で基本的に無償です。大学進学中等教育を卒業できば、医学部などの人気学部を除いて、どこでも好きな大学に進学することができます。塾の授業料や大学受験費用も必要ありません。大学は授業料がかかり、近年値上がりが批判されていますが、年間30万円程度の負担です。

何のための進学か、明快に答える先生

自分の子どもが12歳でこの試験を受けることを想像すると、ちょっと私には受け入れられないと思いました。

「12歳で判断するのは早すぎる。もっと子どもの力を見出したり、可能性を広げたり、親や先生がもっと努力できるのではないですか。そのうえで進路を考える機会があった方がいいのでは。」

私は、思ったことをそのままオランダの小学校の先生に聞いてみました。

「うちの子はもっと勉強ができるはずだから大学に行かせたい、と教師に言う親は多いわね。でも、大学に行くことが幸せとは限らない。医師や弁護士になることが幸せだとは限らない。自分の適性に合った職業に就いて社会に貢献できることが幸せにつながるのではないかしら。」

親の立場からは良い制度だと思えなかったのですが、考えさせられる問題は大切なものでした。

野口由美子(ブログ Parenting Tips