外出自粛の後、体重が7kg増えた。発達障害の私は二次障害に直面している

不安な日々が続くなか、発達障害の特性による生きづらさやストレスから、摂食障害など二次障害を抱え、戦っている人たちがいる。発達障害当事者であり、当事者取材をするライター・姫野桂さんによる寄稿です。
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YOSHIKA SUZUKI/鈴木芳果

私の住んでいる地域では一日3度、チャイムと共に「3密を避けましょう」「夜間の外出を控えましょう」といった新型コロナウイルスの注意喚起の放送が流れる。それは音が共鳴して聞き取りづらく、まるで戦時中のラジオのような不気味さがある。この放送が流れるたび、不安感が募り耳をふさぎたくなる。

私は発達障害当事者であり、当事者取材をするライターでもある。先日は3冊目の著書となる『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)も上梓した。

発達障害の特性は人によって違うが、日常生活の変化や臨機応変な対応が難しい特性を持つ人もいる。私もどちらかと言うと変化や臨機応変な対応が苦手なタイプだ。

 

空いた時間をYouTubeや睡眠、飲酒で埋める日々

新型コロナウイルスが猛威を振るようになり、取材や打ち合わせはリモートが中心となった。当初は戸惑ったもののすぐに慣れた。何より、移動時間に時間を奪われることがなくなったことと交通費が浮いたことはメリットと感じられた。

しかし、講演会やトークイベントは軒並み延期となり収入源が減ってしまった。

私は毎月安定した給与がもらえる会社員ではない。収入に波のあるフリーランス。それを理解していたものの、ここまで未曾有の事態は初めてだ。

例えば仕事で失敗をして仕事を頂けなくなって収入が減ったらそれは自分が悪いので納得がいく。でも、今のこのケースは、私が悪いわけではない。全てはコロナウイルスのせいだ。

いつまでこの状況が続くのか、来月以降の家賃を払えるのか、次に帰省できるのはいつなのか。様々な不安に駆られ、移動時間や身支度の時間がなくなったことにより、ぽつんと空いてしまった時間をYouTube鑑賞や睡眠、飲酒で埋める日々が1週間ほど続いた。普段なら暇な時間は映画を観るが、2時間集中して観られる精神的体力が失われていた。

 

外出自粛要請後、摂食障害で体重が7kg近く増える

仕事が欲しい。私は仕事をしている自分が好きだ。

発達障害の特性(私の場合は言語能力が秀でていること)を持っているからこそ、今の仕事が私には合っている。

こうなったら恥ずかしいなどと言っていられない。そう思い、Facebookに「仕事募集中です」と投稿した。すると、その投稿を見た方から何件か仕事の依頼を頂けることになった。

人に助けを求めることは勇気がいる。プライドが許さない人もいるだろう。しかし、思い切って頼ってみると救世主が現れるものだ。私はありがたく仕事をこなし始めた。

仕事の面では少し安心した。

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YOSHIKA SUZUKI/鈴木芳果

ただ、タイミングが悪いことに二次障害である摂食障害の苦しみが私を襲い始めた。発達障害当事者は、その生きづらさのストレスからうつ病や双極性障害などの二次障害を併存している人が多い。

私の場合、双極性障害Ⅱ型と摂食障害を併存している。摂食障害は拒食の時期と過食の時期を繰り返す傾向にあり、今年の頭は拒食の時期で嘔吐もしていたものの、それからすぐに過食に切り替わった。

食欲をコントロールできない。食べても食べても満足感を得られない。夕飯の後にポテトチップスを1袋、毎日食べていた。

それからしばらくして外出自粛要請が出て、仕事もリモートになり、たったの1カ月半で7kg近く体重が増えてしまった。慌ててダイエットを試みるも、痩せたいときに限ってなかなか体重が落ちない。ここ2年ほどは医師から低体重を指摘されていた。それが新型コロナの自粛によって拍車がかかり、BMI(肥満度を表す指標)でいうところの標準体重に“なってしまった”。

摂食障害は認知の歪みがもたらす病でもある。本来なら標準体重ならば特段焦ることはない。栄養が行き渡ったことで、ずっと治らなかった口角炎が治った。

しかし、低体重である自分しか愛せない、自己受容ができていない私は今の体型が許せない。つらい。ダメな自分も受け入れられるためにどうすればいいのか、今のところまだ解決策が見つかっていない。自己受容ができたとき、初めて私の摂食障害は寛解するのだろうと思っている。

 

コロナ禍では特性の“ゼロヒャク思考”がメリットに

先日はこの秋刊行予定の書籍の執筆のため、どうしても対面取材が必要で、緊急事態宣言が出ている中、都心へ行き取材を行った。

久しぶりに電車に乗った。もちろんマスクをつけている。そこらにいる人全員が陽性かのように見え、電車のつり革やエレベーターのボタンにもウイルスが付着しているように思えて、なるべく公共のモノに触れないようにして震え上がりながら移動をした。

時折マスクを付けていない人を見かけると、私の脳内で「超危険人物」というサイレンが鳴り響いた。

そして帰宅後は自宅のドアノブと電気のスイッチを次亜塩素酸水スプレーで消毒し、これでもかというほど手洗いをして、とっくの昔に使用期限が切れているアルコール除菌用ジェルを手に塗り込んだ。

発達障害の特性の中には物事を0か100でしか考えられない、つまり柔軟な思考に欠ける特性を持つ人もいる。私もその傾向が強い。

普段はゼロヒャク思考をなるべく緩和するよう気を付けているが、このコロナ禍ではゼロヒャク思考がメリットに働いている。

しかし、気を付けていても感染するときはするのだろうから何とも言えないが、予防になっていることは確かだ。

また、久しぶりに移動をしたことで駅までの道や乗り換えにより駅構内をかなり歩いた。

その日の晩は脚がパンパンにむくんだ。そうか、普段は知らず知らずのうちに歩いて運動をしていたから低体重をキープできていたのだ。ということは、コロナが落ち着いてBeforeコロナの頃と同じように出歩けるようになれば、すぐに低体重に戻る気がしてきた。

だが、本音は摂食障害そのものを克服したい気持ちと低体重でいたい気持ちが半々だ。人に「そのままの体型でいいんだよ」と言われたところで治るものではない。自分自身で納得できないとダメなのだ。摂食障害もゼロヒャク思考からきているところがある。

 

一人で戦う必要はない、もっと「つらい」と声を上げよう 

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YOSHIKA SUZUKI/鈴木芳果

この異常な事態で職を失って経済的に困っていたり、娯楽を奪われたストレスで限界を感じている人は多いだろう。

しかし、発達障害当事者は定型発達(健常者)の人以上に不安や恐怖感に襲われている人、パニックを起こしている人がいるのではないかと想像している。

特にASD(自閉スペクトラム症)の傾向のある人は決まったルーティンを好み、突然の変化が起こると頭の中が真っ白になってしまうことさえある。「みんなで耐えて頑張って乗り越えよう」という同調圧力も、協調性が苦手な傾向のある当事者にとってはつらい言葉のように思える。

誰もが今は不安を抱えている。

その中でも発達障害当事者は、特性によって余計生きづらさを感じていたり、二次障害をこじらせたりして一人で戦っている人がいることを知ってもらいたい。

でも、一人で戦う必要はないと言いたい。私は仕事が欲しくて弱さをさらけ出して仕事を獲得した。それと同じように、発達障害当事者たちももっと「つらい」と声を上げると良い方向に変わることができるのではないかと信じている。

(文:姫野桂/編集:毛谷村真木