「手術直後の患者の胸舐めた」準強制わいせつ罪に問われた乳腺外科医に逆転有罪 東京高裁

1審の東京地裁では無罪判決。逆転有罪となった男性医師は「再度また(生活が)壊されることに憤りを覚えます」
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都内の病院で、手術直後の女性患者の胸を舐めたなどとして準強制わいせつ罪に問われた男性医師の控訴審判決で、東京高裁は7月13日、1審の東京地裁での無罪判決を破棄し、懲役2年の実刑判決とした。検察側は1審で懲役3年を求刑していた。

男性医師は2016年5月、東京都足立区の柳原病院で、女性患者の乳腺腫瘍の摘出手術を担当。女性の着衣をめくって左胸を舐めるなど、抗拒不能に乗じてわいせつ行為を行ったとして、準強制わいせつ罪で逮捕・起訴された。

1審判決では、手術時の麻酔の影響により、女性が現実と幻覚の区別がつかないせん妄状態であった可能性があることなどを理由に、医師を無罪としていた。

しかしこれが控訴審では「証言の信用性やこれを支える証拠の評価を誤ったもので、是認することができない」とされた。

控訴審の判決のポイントはどのようなものだったのか。患者の証言とそれを補強する科学的証拠の二点から判決は導かれた。

 

患者の証言について

1審では、麻酔から覚醒する際のせん妄の可能性があり、信用性に疑問が残ると判断されていた女性患者の証言。

この判断が控訴審では覆された。

控訴審でこの証言内容は▽具体的かつ詳細で迫真性が高い上、送っていたLINEのメッセージ内容とも符合する▽他の証人の証言と整合しているーーなどの理由から、直接証拠として強い証明力を有するとされた。

そして控訴審では、せん妄の可能性について、改めて複数の証人医師の証言の信用性が比較検討された。

最終的に、カルテにせん妄とは書かれていなかったこと、女性患者が第三者にLINEメッセージを送信できていることなどから判断し、「当時せん妄に陥っていたことはないか、仮に陥っていたとしても、幻覚は生じていなかったと認められ、女性患者の証言の信用性の判断に影響を及ぼすことはないというべき」と結論づけている。

 

科学的証拠について

この事件では、女性患者の左乳首付近から、唾液に含まれるアミラーゼと、医師のDNA型が検出されている。

しかし、1審判決では、その鑑定を行った科捜研の研究員の鑑定手法に問題があり、誠実性が疑われることや、手術前の打ち合わせで医師の唾液が飛んだり、触診で汗などが付着した可能性が否定できないことを理由に、「事件があったとするには合理的な疑いを差し挟む余地がある」とした。

一方、控訴審では、警視庁科捜研の鑑定について、研究員が相応の経験などを有していることや虚偽の証言をする必要性がないことなどから、信用性を否定すべき理由はないとした。

そして、「アミラーゼ鑑定、DNA型鑑定、DNA定量検査の結果は、科学的な厳密さの点で議論の余地があるとしても、女性患者の証言と整合するもので、その信用性を補強する証明力を十分有する」と結論づけた。

 

「憤り」男性医師

判決後、弁護団とともに記者会見をした男性医師は「一度壊れた生活をやっとここまで立て直した。再度また壊されることに憤りを覚えます。この生活が守られるまで戦っていこうと思います」と語り、上告するとの意思を明らかにしている。