AirTagのストーカー対策は「不十分」との体験レポート。DV被害者は追跡に気づきにくい?

実際の追跡テスト⇒「恐ろしく簡単にストーキングできた」
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sam thomas via Getty Images
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忘れ物トラッカーAirTagにつき、アップルは十分なストーカー対策を施しておりヒトを追跡できないとの見解を表明しています。しかし実際に追跡テストをしてみた米紙ワシントン・ポストのテック担当記者が「恐ろしく簡単にストーキングできた」として対策が十分ではないと警告しています。

ワシントン・ポストのジェフリー・ファウラー氏は自分のバッグにAirTagを入れてストーカー役の同僚とともに1週間の実験を行い、その結果AirTagが「安価で効果的なストーカーの新たな手段」との結論に達しています。

まず驚かれているのが、AirTagがリアルタイムで恐ろしく正確な位置をストーカー側に伝えることです。ファウラー氏がサンフランシスコ市内を自転車で走っていると数分に1回は位置情報が更新され、自宅にいると同僚は正確な住所が報告してくれたとのことです。

この記事の核心となるのがストーカー対策です。アップルの公式サポート文書によれば、持ち主から離れたAirTagが近くにある場合は「あなたが所持中のAirTagが見つかりました」と表示するとのこと。ファウラー氏は本機能は正常に動作しておりポップアップは出たものの、(どこかを探すため)iPhoneからAirTagを上手く鳴らせない場合が多かったと述べ、米国人の約半数が使っているAndroid端末ではそもそも警告が出ないとも指摘しています。

また実験用AirTagはアップルの公式見解通り3日後に音を鳴らしましたが、約1.5m離れたところでは約60デシベル程度で、窓の外で鳴く鳥の声と大差なく、しかも15秒ほどしか続かず。その後は数時間にわたって沈黙したままで、また15秒鳴るだけ。この音も、スピーカー機能を持つ白いプラスチックのカバーに圧力をかけてやれば簡単に止められるそうです。つまり狭い車のシートに押し込んだりテープで巻いておけば、被害者は何日も気づかないかもしれないわけです。

さらに大きな問題は、音が鳴るまでの3日間に多くのストーカー行為ができる余地があること。その3日間のカウントダウンも持ち主のiPhoneに近づくとリセットされる可能性があるため、被害者とストーカーが同居している場合は音が全く鳴らないかもしれない、と指摘されています。

ファウラー氏はAirTagの警告機能を高く評価しており「他の携帯電話のユーザーだけでなく、Tileのような他社デバイスで追跡されている人々にも役立つ」として広く普及を期待しているほどです。ただ、アップルがストーカー被害での現実のシナリオを全て考慮したかどうか疑わしい、というわけです。

これにつき電子フロンティア財団のサイバーセキュリティ担当ディレクターで、ストーカーウェア(被害者を追跡するアプリ)対策で知られるエヴァ・ガルペリン氏の「製品が市場に出た瞬間に完璧であるとは思いませんが、親密なパートナーの虐待に関する専門家に1人でも相談していたら、このような選択はできなかったと思います」というコメントが紹介されています。

アップル製品はプライバシー保護を重要な付加価値としており、それをソフトウェアアップデートにより高めてきた実績もあります。こうした体験談やセキュリティ専門家の意見に耳を傾けて、今後AirTagもいっそうストーカー対策を強固にしていくのかもしれません。


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