既存メディアのすごさをウェブで活かす【cakes加藤×ハフポスト松浦】

出版社でベストセラーを手がけた後、自らデジタルコンテンツ・プラットフォームを立ち上げた加藤貞顕さんとハフィントン・ポスト日本版の松浦茂樹編集長が、ハフポスト日本版オープン目前の。思想家の東浩紀さんがプロデュースする知的空間(東京・五反田)を舞台に、これからのメディアに求められる「編集力」とは何かを徹底的に話し合いました。その論点をまとめてご紹介します。今回のテーマは、「紙媒体の編集力をウェブメディアに活かせるか?」です。
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Chika Igaya

「cakes」CEO加藤貞顕さんと松浦茂樹ハフィントン・ポスト日本版編集長が徹底対談

出版社でベストセラーを手がけた後、自らデジタルコンテンツ・プラットフォーム「cakes」を立ち上げた加藤貞顕さんとハフィントン・ポスト日本版の松浦茂樹編集長が、ハフポスト日本版オープン目前の4月30日に緊急対談。思想家の東浩紀さんがプロデュースする知的空間「ゲンロンカフェ」(東京・五反田)を舞台に、これからのメディアに求められる「編集力」とは何かを徹底的に話し合いました。その論点をまとめてご紹介します。今回のテーマは、「紙媒体の編集力をウェブメディアに活かせるか?」です。

加藤:トピックとして、ハフポストは朝日新聞と一緒にやるっていうポイントがありますよね。実は今、14回連載で朝日新聞で将棋の観戦記を書いてるんですよ(編集者注:現在は連載終了)。朝日新聞に書くという経験をして、朝日新聞ってすごいなと思ったんですね。僕はプロの編集者なんですけど、それなりにこれは売れる文章として成立する文章だろってものを出してるんですよ。でも、1回目の原稿に言われた言葉は、「もっと勝負をしていただけませんか」。結局、1回目の原稿は4回書き直したんですね、600字を。

松浦:すごいなあ、それは。

加藤:1発で通った原稿は14回のうち2つくらいしかないんですよ。つまり何が言いたいかというと、ものすごい文章を精緻化させていく仕組みがあるわけですよね。その人個人の能力も高いんだろうけど、やっぱ組織としてそういう仕組みを整えてやってきてるわけですよ。だから、どういうふうにハフポストは朝日と提携してやるのかなと思って。具体的に、記者とか記事作りとかに関して一緒にやるんですか?

松浦:もちろん、朝日新聞の記者が出向みたいな形で中に入ったりとかはありますよ。

加藤:なるほど。新聞の人と仕事をしてどうですか?

松浦:やっぱり過去の蓄積とかすごいです。どうしてもウェブメディアって、さっき原稿の校正とか何回も受けたって言ってたじゃないですか、僕ないですもん、そんな経験。文章に対するこだわりや経験値、経験則、その他もろもろはリスペクトすべきだなと思いますね。

加藤:逆に新聞社は古臭くてかったるくて「頭にくるな」みたいなことはあったりしますか?

松浦:それは立ち位置の違いの部分なので。たとえば、何回も校正を重ねて、非常においしい料理コースを作っていく新聞のやり方と、とにかくあらかじめ作っといて温めてすぐ出すみたいなウェブのやり方がある。そのやり方を議論してもしかたがないですよ。今回はウェブメディアですが、新聞とか雑誌とか、テレビのディレクターもそういうふうに作ってこられたところはリスペクトすべきだと思うので、そういう部分はウェブでも絶対生きると思ってます。

加藤:なるほど。でもすごいいい流れだなと思うのが、今まで既存のメディア、紙の新聞・雑誌・書籍の人たちがウェブにはほとんどいかなかったんですよね。

松浦:そうですね。

加藤:これは紙メディアの経営がやばいっていうのと関係してると思うんですけど、すごいいいことだと思うんですよね。まだウェブはそんなに儲かるビジネスでは正直ないんですが、やっぱりこっちに賭けようかなって思った大きな理由は、出版ってずっと(いろんな数字が)下ってるわけですよ。下ってる中で戦うっていうのはあんまり楽しいことじゃないんですよね。中国とか行くと、みんなすごい楽しそうにしてるのは全部が上向いてるからなんですよね。それメディアだったら多分ネットなんだろうなって。

松浦:だからそこのところは、全然活きるって僕は言い切りたいんですよ。その上でウェブメディアの素早く調理する方法を覚えれば。

(この連載のバックナンバーはフォトギャラリーよりご確認ください)

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