サントリーPR動画が炎上。「男性も侮辱」「なぜ社内でOKが出たのか」

「そもそも、なぜ社内でこのPR動画にOKが出たのか、不思議でなりません」
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サントリービール株式会社

「下品で差別的」といった批判が相次ぎ、公開中止に至ったサントリービール株式会社による新商品ビールのPR動画が物議を醸している。

『絶頂うまい出張』と銘打たれたこの動画では、出張先で現地の女性と出会い、食事をともにする様子が"体感"できるように描かれており、出演している女性たちが「肉汁いっぱい出ました」「コックゥ〜ん!しちゃった・・・♡」といったセリフを発言。

「男性にとって都合がいい女性像を性的に表現している」など、性差別的な見せ方を批判する意見が多数寄せられた。

▼サントリーの公式Twitterアカウントが投稿した動画。公式サイトに掲載されていた動画は7日に削除された。

#絶頂うまい出張

思わず漏らした #コックゥ~ん!で #幸せの絶頂 へ!?

絶頂 うまい7%「#頂〈いただき〉」の凄さを伝えるべく人気の出張先へ!あまりのコク刺激に思わず #コックゥ~ん顔

スペシャルサイトはこちら!https://t.co/vUfvzFbPrhpic.twitter.com/vtomFeVoAo

— SUNTORY(サントリー) (@suntory) 2017年7月3日

広告はよく炎上する。時には「受け手側の過剰反応だ」という意見が挙がることもあるが、今回のPR動画の場合は、どうなのか。メディア文化論やジェンダー論を専門とする大妻女子大学の田中東子・准教授に話を聞いた。

——今回のサントリーのPR動画について、どう感じられましたか。

あえて分析する必要がないほど、批判される要素が詰まっている映像だと感じました。

「頂(いただき)」という商品名を「絶頂」という言葉に置き換え、いわゆる性的行為における「絶頂感」を連想させるイメージが動画全体に盛り込まれています。女性が「肉汁」というセリフを使ったり、焼きトウモロコシなど棒状のものを食べたり、大きな胸を強調して映したり、AVなどで見られる表現を用いているという点は否定できないと思います。

あらゆる層に向けたPR動画で、女性を商品化しているともとられかねない手法で広告表現を行なっていて、現代のジェンダーに関する価値観からしても、とにかくおかしいとしか思えないです。炎上するのもやむを得ないのではないでしょうか。

——女性軽視的な表現がふんだんに使われていたと。

プレスリリースには、「全国各地の人々が『頂〈いただき〉』を飲んで、幸せの絶頂へ向かう様子を描く」と書かれており、意図としては新商品をご当地グルメや方言とともに魅力的に伝えるという内容です。しかし、なぜ出張先で出会うのが「若くて綺麗で胸が大きい女性たち」ばかりなのかわかりません。全国を回ればあらゆる年齢層やジェンダーの人と出会う機会があるはずなのに。

また、この動画は女性だけではなくて、男性のことも侮蔑しているように感じます。地方出張をした男性が、仕事とは別に「異性との出会い」も期待していると想起させるような動画にも見える。「女性を商品化している」と同時に、「働く男性」を「性的欲望の塊」であるかのように見せているように感じられる。

もちろん「何も感じない」という人もいると思いますが、男性の中にも不快感を示す人がいるのは当然だなと思いました。

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——サントリービールは数日でPR動画を公開中止する判断を下しました。炎上から公開中止までのスピード感、流れについてどのように感じられますか。

そもそも、なぜ社内でこの動画にOKが出たのか、不思議でなりません。動画を公開する前に社内外で、例えば一般消費者に対して、意見を聞くことをしなかったのか疑問に感じます。

もし全くチェックをせずに公開したものであるならば、炎上目的で、意図的に作られたものと思われても仕方がないのではないでしょうか。そして、もしも炎上目的で意図的に作ったものであるならば、ジェンダーに対する考え方という点において、企業としての姿勢自体を厳しく問わないといけないほどの悪意を感じます。

——悪意とはどういうことでしょうか。

最近、さまざまな広告表現が問題視され、"炎上"しているということを多くの人が知っています。

例えばユニ・チャームのオムツCMでは、意図せず間違ったことをしてしまった、という印象がありました。本来は「ママを応援したい」はずだったのに、配慮が足りなかったがために、ワンオペ育児で苦しんだ人たちの心をえぐってしまうようなものを作ってしまった。その行為自体には、悪意はさほど感じられません。

しかし今回の動画は、最近の「炎上による広告取り下げ」が多発している現状に対して"挑戦"したいのかと疑うほど、悪意を感じられるものでした。

ビールを飲むことを「コックゥ〜ん!しちゃった」というセリフで表現し、「下品さ」や「不快感」などの感情を煽るのもそうですが、「気持ち悪い」という声もありました。そんな声があがるほど、挑発的なものをなぜ作ったのか。「綺麗な女の人を撮ったら、女性蔑視だととられてしまうものになってしまった」という無意識的な制作ではなく、作為的に炎上を狙って作ったものだと考えざるをえませんよね。

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——"炎上"する要素が込められているにも関わらず、「広告の作り手側は果たして本当にそれに気づいていなかったのか?」という点においても、違和感を覚えます。

今回の一件も、これまでの炎上広告と同じように「炎上⇒取り下げ・謝罪」というルートにのってはいます。しかし、企画立案から公開に至るまでどういった意思決定がされたのか、制作プロセスをオープンにしてほしいと感じました。

「炎上⇒削除」という何度も何度も繰り返されるこのプロセスそのものに、多くの人が苛立ちや怒りを感じています。

サントリーは一民間企業ではありますが、今回のPR動画のような倫理的に問題視されるものが世に出てしまった場合、社会に対して責任をしっかりと負うという意味でも、企業側が制作過程を明らかにすることの必要性を感じます。今後、放送倫理・番組向上機構(BPO)のような第三者機関によって、きちんと評価・検証する必要もあるのではないかと思うほど、議論を呼ぶ作品が世に出てしまった、という印象を持ちました。