若者はどうすれば政治に影響をあたえることができるのか?スウェーデンの「若者会」の代表に聞いてみた

若者がどのようにして政治、社会に参加していくことができるのか、スウェーデン全国若者会(SUR)の代表に聞いてみました。
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これまで、様々なスウェーデンの若者関連の団体に訪問してきましたが、

その中でも、とくに再訪したい団体がありました。

スウェーデン全国若者会(SUR)

です。

Sveriges Ungdomsrådがスウェーデン語の名称である、この若者団体は英語に訳すと"Swedish youth council"となり、和訳すると「スウェーデン若者協議会」「スウェーデン全国若者会」となります。

若者会がおこなっていることは、若者の政治的な影響力を高めることです。

日本では、選挙権が18歳に引き下げられ、未成年の若者が票を投じました。今後の若者の参加のあり方について、多方面で議論が起きています。改めて、若者がどのようにして政治、社会に参加していくことができるのか、スウェーデン全国若者会(SUR)の代表に聞いてみました。

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インタビュー相手は、2016年度のスウェーデン全国若者会(SUR)の代表である21歳のガブリエル・ヨハンソン。この6月に津富宏教授 (静岡県立大学)とストックホルムの事務所を訪ねました。

スウェーデン全国若者会(SUR)とは?

スウェーデン全国若者会(SUR)は、若者の政治的な参加過程へ影響力を高める活動をしています。

スウェーデンの全国の290の地方自治体には、若者会が95団体あります。そのうち、スウェーデン全国若者会(Sveriges Ungdomsråd)に加盟している若者会が、37団体あります。

これらの自治体の若者会が、それぞれの自治体において若者の影響力を高めて、自治体の若者政策に若者の声を反映させる活動をしています。

全国に点在する若者会:[!]がスウェーデン全国若者会に加盟している若者会で、灰色の点が加盟していない若者会を示している。

各地の若者会の活動をサポートし、各自治体の若者会の声を代弁している代表団体が、スウェーデン全国若者会(SUR)ということになります。首都のストックホルムに事務所を構え、常勤の職員を5人雇っています。

若者が地域で政治に影響を与える方法

地域の政治にもっと若者世代の声を反映させようと、若者自身が立ち上がるのが、ひとつの若者会の始まり方です。自分たちで活動を組織化し、政治家と会う対話集会を開いたり、請願書を書いたり、デモを行うなどして、政治に影響を与える活動を、若者自らの手でやっていくといった具合にです。

若者が政治に影響をあたえ、民主的な権利を実現する方法は大きくわけて2つあるとガブリエルはいいます。

一つは、「参加型」です。例えば、市議会を傍聴すること、請願書を書くこと、政治家や政策形成者と直接会うことなどです。もう一つは、「表現型」です。これには、メディアへの発信、公の場でのスピーチなどが当てはまります。

また最近では、スマートフォンのアプリケーションを用いた参加もあります。「Speak app」というハーニンゲ市で開発されたアプリでは、市政への簡単な質問や、提案がアプリからできるようになっています。また意見収集の機能もついています。

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若者を中心に人気を集めたので、現在は、他の自治体でも使えるように準備をしているということです。

こうして生まれる若者会

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若者会の始め方をまとめたガイドライン

スウェーデンは、政党青年部の活動が活発です。政党の青年部なので、もちろん政治的な思想が基本になっています。社会民主党だったら中道左派、穏健党だったら中道右派、左党なら左派、といった具合にです。緑の党だったら、環境問題を重視するといった具合にです。

ガブリエル自身は、政治には興味がありましたが「政党」を基本とする政治にはあまり興味がありませんでした。特定の政治思想に縛られたくなかったからです。

17歳の高校生だったときに、地元の若者会から学校へ通知が届いたことが、若者会を知ることになった最初のきっかけでした。何やら「政治のことを知るお茶会」を開くというので、参加したのでした。それから活動に誘われて、最初は、ウェブページの管理を引き受けるところからはじめ、徐々に活動にコミットするようになったのでした。今では21歳でスウェーデン全国若者会(SUR)の代表を務めています。

若者会は、自治体主導で設置してできる場合もあります。自治体主導であっても、間接的にできる場合もあり、例えばスウェーデン全国若者会(SUR)の職員が学校に呼ばれて、民主主義の権利について講演をし、若者たちができることについて話します。その講演で刺激をうけた若者が、若者会を作ろうと一念発起するといった具合にです。

若者会をはじめるには、6つのステップを踏みます。

  1. おもしろそうなことや変化をもたらすことをしたい若者を集めて、チームをつくる
  2. このチームで最初にやることを決める
  3. 自治体や区の委員会とやり取りをして、若者会を設立して手伝ってくれる人がいないかどうかを探す。必要であれば資金調達ができるかどうかも聞く
  4. 立ち上げのサポートをしてもらうためにスウェーデン全国若者会(SUR)に連絡をとる
  5. ここで初めてスウェーデン全国若者会(SUR)とミーティングをして、全体像を共有して、誰が何をしていくかを決める
  6. スウェーデン全国若者会(SUR)に加盟して、全国のその他のメンバーと会って友達になり、刺激与え合う

こうして、個人が立ち上げた若者会は、スウェーデン全国若者会(SUR)に加盟し、メンバーとなります。メンバーになると、組織運営のためのリーダーシップの研修や、他の全国の若者会との交流会に参加ができます。会費がかかりますが初年度は無料です。もちろん加盟は義務ではなく、加盟しないで各々で自由にやっていく若者会も全国に多くあります。

スウェーデン全国若者会(SUR)の機能

スウェーデン全国若者会(SUR)が、地域の若者会をサポートする方法は多岐にわたります。

全国に点在する若者会が一堂に会する集会を年4回開催し、300~400人ほどの若者がスウェーデン中から集まります。これが交流会・リーダーシップの研修会を兼ねます。また会員になると、「若者が社会に影響を与える方法」についてまとめた書籍をスウェーデン全国若者会(SUR)からもらうことができます。書籍化しているということは、スウェーデン全国若者会には若者が社会に影響を与える方法を「蓄積化」しているということです。

蓄積と長い歴史があるのでスウェーデン全国若者会には、政治家から「どうしたら若者が政治に関心をもってもらえるのか?」という相談が相次ぐようです。その場合、書籍を送ったり自治体の学校や、若者施設に足を運んだりします。そして政治・行政側が、どのようにして若者が参加できるチャンネルを確保すればいいのかということをアドバイスします。

スウェーデン全国若者会(SUR)のメンバーは、全国の加盟している若者会から12人が選挙で選ばれます。その中の有給の職員は5人で、代表・副代表、組織取締役、管財者、渉外からなります。選ばれる人は25歳が上限なので、みんな若いです。ガブリエルもこの選挙から選ばれて、代表になりましたが任期は1年です。

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演説をするガブリエル

スウェーデン全国若者会は、スウェーデン若者市民社会庁(MUCF)から助成金を得ています。この助成金で、後援費用、スタッフの給与、事務費、リーダーシップ研修などに当てることができるので、持続可能性な運営ができるようになっているのです。助成金は、加盟団体の数に応じてもらえますが、加盟している若者会が自治体から独立している団体(free organization)の分だけがもらえます。自治体が直接設置している若者会はそこにカウントされません。

さらにスウェーデン全国若者会(SUR)は、若者政策を担当してる大臣と年2回の対話会に出席することになっています。参加する若者団体は8つで、スウェーデンの全国にある若者団体の傘組織として声を集約し代弁をするスウェーデン若者協議会(LSU)と、スウェーデン若者会は、この対話会からこれまで外されたことはないということです。この対話会には大臣に直接、地域の若者や若者全般の状況を伝える機会となっています。

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若者会がモットーにしていていることのひとつに、「ボランタリネス(voluntariness)」があります。これはつまり、若者自身の「主体性」を大切にするということです。若者会を全国の自治体への設置を「義務付けるべきかどうか」という議論が90年代に沸き起こりました。確かにそうすると、どの自治体においても継続的に若者の声を取り入れることができるので、影響力という面からはありだったのかもしれません。しかし結局、若者が望んでいないにも関わらず参加が強制されることになりかねないという理由から、義務化はなしになりました。

それがゆえに若者会の形態は多種多様です。若者の声を聞くだけの「諮問機関」としての若者会もあれば、イギリス若者国会のように議席に座って議論をするといったようなルンドの若者会もあります。それは若者会を作り上げている若者たちがそのようにしたからです。

一方でその難しさもあります。若者会が学校のように「常設」されていないので、若者会が自治体の政治への影響力を高める機能を担っているときも、そうでないときもあるのです。波があるのです。また、若者の20代前後は進学や就職などで、住む場所を変えたりすることがあるので、若者の入れ替わりが激しいことも若者会の「担い手の確保」という点から困難であることは間違いありません。

ここに、「主体性」を重視しながらも「持続可能性」を高めるためにあらゆる手立てを打つ、スウェーデン全国若者会の葛藤が垣間みえました。

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