シリア内戦はもはや泥沼化していない 今起きているのは...

シリア内戦は軍事的に明らかな結末へと向かっているように見える。
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Key-rings bearing portraits of Syrian President Bashar al-Assad (L) and his Russian counterpart Vladimir Putin (C) are displayed at a handicrafts shop in the Syrian capital, Damascus, on February 4, 2016. Syrian government troops moved closer to encircling rebels in the country's second city Aleppo, threatening a total siege after cutting their main supply line. / AFP / JOSEPH EID (Photo credit should read JOSEPH EID/AFP/Getty Images)
JOSEPH EID via Getty Images

ベイルート ―2016年2月2日深夜、そのニュースは飛び込んできた。トルコとアレッポ間の「すべての通信と補給線」が遮断されたという、アルライ・メディア・グループの著名な戦地特派員イライジャ・マグニエからの報告だった。報告は間違いなさそうだ。シリア政府軍とこれに従う民兵組織は、ヒズボラとロシア空軍の支援の下、反政府勢力の支配地域内を帯状に制圧、アレッポに拠点を置く反政府勢力をトルコ国境から孤立させた。下の地図を見て欲しい。いわゆる「イスラム国」(IS)の補給線も、同様に断ち切られているのが分かる。

戦略上とりわけ重要な地点が、ムラサート・カーンの村、そしてアレッポ北隣のいくつかの町だ。このエリアを支配下に置くことで、政府軍はアレッポとトルコを結ぶ、反政府側の主要な補給路を断つことに成功した。これによってアレッポ包囲網が整い、またISのトルコへの石油輸送ルートもなくなった。このまま行けば、政府軍は反政府側の支配地域にさらに進攻し、現在アレッポ東部を囲むように支配する全反政府勢力(主にヌスラ戦線とISIS)をやがて包囲することになるだろう。

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地図提供 Syria Direct.

緑:反政府軍の支配地域

赤:政府軍の支配地域

灰色:ISの支配地域

黄:クルド人民防衛隊(YPG)の支配地域

アレッポ在住で、シリア情勢に詳しいエドワード・ダーク(仮名)は2月3日のツイートで、「アレッポのジハード戦士たちにとっては、これは終わりの始まりだ。4年にわたる戦争と恐怖に、ついに終わりが見えてきた」と述べた。

しかし、一歩引いてシリアを眺めてみると、下の地図(少し古いものだが)の示すように、より大きな絵が現れてくる。

下の地図をよく見て欲しい。黄色い部分はシリアのクルド人が支配する地域だ。本当は「支配」という言葉は適切ではないが、それでも、黄色の地域はシリア政府軍に友好的な土地と言ってよい。クルド人民防衛隊(主にクルド民兵から成る武装組織、YPG)はロシア空軍の支援を受けている(時にはアメリカ空軍の支援も受けている)。

アフリン州(北西端の黄色の部分)は、かつてアメリカのCIA(中央情報局)がトルクメン山高原沿いに反政府連合への補給を行っていたと言われる場所だ。ラタキア地方は現在封鎖されつつある

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もしも政府側が北部に進軍して北東部のクルド人勢力と合流すれば、ヌスラ戦線をはじめとするほぼすべての反政府連合はほとんど取り囲まれてしまう。人口もまばらな森林地帯を背に、彼らは混沌状態に置かれることになる。

グレーはISの支配地域だ。その細長い形をした回廊は、特にジャラブラス付近のトルコ国境では問題なく通行可能な状態が続いている。トルコはこの現状が「レッド・ライン」だと宣言している。つまり、万一ここがシリアのクルド人勢力に封鎖された場合、トルコはシリア進攻も辞さないと言っているのだ。しかし、YPGは国境封鎖も視野に入れていると言う。

ここ数日間、ロシア国防省の報道官は、トルコがシリアへの軍事行動を進めていることを示す明白な証拠があると警告を発した。この声明には、トルコのそのような動きを牽制するロシア側の狙いがあるものと見られる。

その一方、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はIS支配地域とトルコとの国境を封鎖するというロシアの意向を(トルコをはじめとする各勢力に対し)はっきりと示した。ラブロフ外相は「停戦状態を確実に維持するには、トルコ・シリア国境を違法に通過するものが民兵組織の手に渡ることを阻止しなければならない」と言い、「国境封鎖抜きにして、停戦合意はありえない」と述べた。ロシアは、トルコのいかなる介入も直接戦争へとつながる危険があるとやんわり警告しているわけだ。このところ実際に、ISは国境地帯から撤退し始めているようである。

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ロシアのラブロフ外相、2月3日オマーン。 (Alexander Shcherbak\TASS via Getty Images).

短気で知られるトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領のことであるから、この先まだ何が起こるか分からない。シリアのクルド人が国境を越えてトルコ側のクルド人地域に入り込むことを防止することを名目にして、シリア北部に進攻を開始することも考えられる。しかし、もしトルコがそのようなことを単独で行えば、トルコはNATO(北大西洋条約機構)の支持を完全に失うことになるだろう。しかもトルコ軍を派遣しようにも、そこにはシリアでの制空権を完全に握るロシア軍が待ち構えている。ロシア空軍はトルコとの国境線ぎりぎりまで展開しているのだ。

こうしたトルコの軽卒な行動を思いとどまらせるため、ロシアは(トルコのF16をはるかにしのぐ)最新鋭の戦闘機を複数機配備したと伝えられている。シリア空軍の戦力もまた、ロシア側からの補修や改良を受けて強化された。

だから、このような現状を踏まえて大胆に言えば、シリアの向かう先は、多くの西側の政治家の言うような「泥沼」などでない。むしろ、軍事的に明らかな結末へと向かっているように見える。ある事情通が語ったように、交渉の舞台はジュネーブではない。本当の交渉はイドリブやアレッポの戦場で行われている。そして、その交渉の結果が、反政府軍を事実上包囲し追いつめるということなのだ。

地上戦でいくらかの軍事的優位に立った反政府側が、そのまま局所的なゲリラ戦に突入するという事態にもなりそうにはない。下の写真は、シリア政府軍やヒズボラの部隊が反政府軍から奪還した村へ入るときのものだが、これらを見ればまた違ったストーリーが見えてくるだろう。

要するに、ヌスラ戦線の戦士(彼らは主にシリア人だ)や他の反政府組織が地域の中に身を隠そうにも、隠す場所がないということだ。毛沢東の言葉の通り、水がなければ魚は住めない。彼らは世間の支持をほとんど得られないだろう。シリアには優れた諜報機関がある。今後1年以内に、散り散りになったイスラム聖戦士の大半が、一般人に見つかって、スパイ機関に通報されるかもしれない。反政府勢力はそれだけの苦しみを民衆に与えてきたのだ。その多くは捕まって命を落とすことになるだろう。

このような深い傷を負ったシリア人たちは、打ちひしがれた敗北の民となるのだろうか。それともこの難局を乗り越え立ち上がるのだろうか。

私は混乱のシリアを訪れた経験から、シリアの人々が再び力強く羽ばたくことを信じて疑わない。これでシリア人の魂には筋金が入ったのだから。

私はまた、シリアがすぐに地域の強国としてよみがえると思っている。この周辺地域の中でも強力で安定した北部、特にイラクとのより緊密な関係でそれを証明することになると思う。しかも、これと歩調を合わせるように、ペルシア湾岸諸国の中には陰りの見えてきた国々もある。

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ロシア軍によると思われる空爆のがれきの上に立つ自営団メンバー。シリアのアレッポ、2016年2月5日。 (Firas Taki/Anadolu Agency/Getty Images).

アメリカや多くのヨーロッパ諸国のエリートたちにはこの結果は受け入れがたいものだろう。西洋諸国の外交官や軍人たちは、何の政治的成果も生まない泥沼や、停滞を招くだけの取り繕いに終始し、真の問題解決を図ろうとはしてこなかった。シリア問題がロシア、イラン、ヒズボラの直接介入で決着を見るというシナリオは、苦杯そのものに違いない。それでも重大な意味がそこにはある。

その1つはすでに明らかだ。オバマ政権はアメリカ議会に対し、ヨーロッパへの安全保障援助を4倍に引き上げるよう求める意向であると発表した。多極化の兆しが現れている。4プラス1連合(シリア、イラク、イラン、ロシア、そしてヒズボラ)が中東各地で(そして中央アジアでも)安全保障体制の柱となる可能性が高い。中国もこの新体制に今後ますます接近を図って行くだろう。中国経済の未来をかけた一帯一路構想はシリアやイラクだけでなく、イスラム教ワッハーブ派の出方次第でも大きく影響が出るからだ。

中国当局者の話では、アメリカがワッハーブ派を利用して中国の新構想の妨害工作を再開する動きもあるという。

シリアで舐めた苦杯と、ロシアとイランの躍進。これでシリア発の新基軸に対する欧米の姿勢は強硬化するのだろうか?この基軸は反欧米とみなされることになるのだろうか(実際には反欧米ではないのだが)?それともヨーロッパはNATOの条件反射的衝動を抑え、何らかの協調路線を探っていくのだろうか?どう転んでも、見通しは明るいものではない。

ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。

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