アメリカはアジアの核の傘を閉じるべきだ

トランプが示唆したように、アメリカは核の傘について真剣に議論すべきなのだ。
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ROMOLOTAVANI VIA GETTY IMAGES

ドナルド・トランプが世界を驚愕させている。韓国と日本の核兵器開発に言及したことは反発を引き起こした。「アメリカがその姿勢を変え、核兵器保有国増加を支援する方向性を示すことは破滅的な結果を招くだろう」と、ベン・ローズ国家安全保障補佐官は述べた。

実際、アメリカが他国の防衛、特に自衛力を持つ国家に介入することによって引き起こされる核戦争の方が破滅的と言えるだろう。ローズ補佐官は「日本と韓国はアメリカによる非常に強固な安全保障の恩恵を受けており、有事の際は必ず両国の防衛を行う」と述べている。しかしそれによって、裕福で人口の多い国々がアメリカの防衛に依存する体質になってしまった。

トランプはその依存体質に言及している。日本と韓国はともに自国の防衛予算が十分ではなく、ワシントンに依存しがちだ。彼はその解決策として、両国の核武装を示唆したのだ。「いずれ話し合わなければならない」問題だと彼は説明した。

これは過激な意見とはいえない。この問題は韓国の大統領候補だった人物によって最近提起されたものだ。1960年代、朴槿恵大統領の父・朴正熙は、アメリカの圧力に屈するまで核計画を推し進めていた。トランプの発言を受け、韓国世宗研究所の張成昌上級研究員は「我が国が核兵器を保有することになれば、北朝鮮との交渉ではるかに有利な立場に立てる」と述べた。

日本では長年にわたって核保有に関する議論が行われている。安倍晋三首相は政権の座に就いた当初この件について議論することに対して積極的であるように見えた。さらに日本はゆっくりと軍事的な方向性を強めている。元大阪市長の橋下徹は、トランプの発言が「アメリカが守ってくれるという平和ボケ意識を改める大チャンス」と発言した。

核拡散防止を神聖視しているにもかかわらず、アメリカはそれに反する傾向にある。ワシントンはイギリスやフランスに対して核計画廃止の圧力を掛けていない。アメリカの政府関係者は決してイスラエルの巨大な核兵器施設を批判しない。アメリカは渋々ながらインドの核保有を認めた。核拡散防止という目標は賞賛すべきだが、政策決定者たちは常にその他の利益とのバランスを取っている。

その上、核拡散防止は孤立した状況で決定することができない。大まかに言えば、核兵器保有国家は少なければ少ないほど良い。だが核武装が安定化をもたらすこともある。例えば、冷戦中のアメリカとソ連の核均衡が紛争の勃発を防いでいたことは広く信じられている。両陣営共に次の段階に踏み込むリスクを避けたかったからだ。それとは対照的に、もしウクライナがソ連崩壊後も核兵器を放棄していなければ、ロシアがクリミアを掌握し、独立派を支援することもなかったかもしれない。

さらに悪いことに、ワシントンは核保有能力を持つ国々の核放棄の同意を得る代わりに、「核の傘」を提供している。つまり、必要に迫られればそうした国々を守るために核兵器を使うということである。結果として、東アジアでの核拡散防止のために、アメリカがソウルや東京、あるいは台北やキャンベラを守るためにロサンゼルスを危機にさらすという代償を支払うことになる。核拡散防止は国家の銃規制によく似ている。つまり銃を手に入れられるのは悪人だけなのだ。東アジアで核兵器を保有しているのは中国、ロシア、そして北朝鮮だ。アメリカは地政学的なバランスをもたらすことになっているはずだ。

この状況はまさに破滅的な結果を招きかねない。

まだ経済的に貧しく不安定だった韓国で独裁者となった朴正煕大統領が核武装に反対するのは十分な根拠があったが、娘の朴槿恵には当てはまらない。彼女は当時よりはるかに裕福な民主主義国家のリーダーだからだ。第二次世界大戦後の2〜30年間は日本を信用しようという人も少なかったかもしれないが、今は70年以上経過している。高い軍事力を持つ北京よりも、東京の方がはるかに信頼できることは確かだ。

そこで問題となるのが、どのようなアプローチが北東アジアの安定化を最大限にもたらし、アメリカの安全保障リスクを最小限に留められるのかである。今のところ、アメリカによる防衛の確約によって竜や熊が子羊たちと仲良く肩を並べるという結果にはなっていない。中国は日本やフィリピン、特にベトナムに対して強硬姿勢を取っており、ロシアは東ヨーロッパや中東でアメリカに対して挑戦的だ。北朝鮮はもっと悪く、絶えず周辺国やアメリカに怒りの矛先を向けている。

それでも政策決定者たちは、アメリカによる安全保障が問題になることはないかのように振る舞っている。核による報復の脅威が抑止力につながることに疑いの余地はない。しかし、20世紀の2つの大戦は、軍拡競争で抑止力が働かなかったために起きた。特に軍事力が本質的な国益との兼ね合いによって一貫性のない脅威になっている場合、その信頼性は揺らぐことになる。そのため中国側は、台湾の独立を失うリスクを冒してまでアメリカが核戦争に踏み切ることはないのではないかと、公に声明を出している。

そのうえ、すでに本来の目的を失った「強固な安全保障」だが、そこから手を引くことは難しい。つまり抑止に失敗した場合、アメリカは自動的に戦争に突入するということになる。だがそのような決定は、重大な国益について真剣に考慮したうえでのみ行うべきものだ。核戦争のリスクを負ってまで韓国や日本を守る価値があるかどうかははっきりしない。

さらに他国の防衛を保障することで、より力の劣る国がアメリカの安全保障を盾に取る隙を与える。ワシントンの後ろ盾があることで、そうした国々がよりリスクの大きい行動に出る可能性が高まる。2008年、ジョージア(グルジア)のミヘイル・サーカシヴィリ大統領はロシアに対して紛争を仕掛けた。2000年代、独立傾向の強い台湾の陳水扁総統は中国を刺激した。2人とも、アメリカの支援を受けていた。

日本は尖閣諸島を巡る中国との対話すらも拒否している。日米安全保障条約でアメリカと日本は「相互」防衛協定が結ばれているというワシントンの見方が、東京側の強固な姿勢を助長してきたと言えそうだ。フィリピンの軍事力は二流とも呼べないものだが、それでも同国政府はスカボロー礁を巡る中国との争いでアメリカの協力を得ようとしている。

アジア太平洋地域各地の無価値な岩の塊を巡る海洋紛争のリスクと、核戦争について熟慮することは全く異なる。

つまりトランプが示唆したように、アメリカは核の傘について真剣に議論すべきなのだ。だがローズ補佐官はそれについて議論することさえも退け、「過去70年間」アメリカは核拡散に反対してきたと主張している。だが、現在の政策を巡る議論で最悪なのは、私たちは常にそうしてきた、という主張だ。結局のところ、世界は時代と共に変化している。近年ではその変化が特に速くなっている。

アメリカの政策決定者たちは、今までそうだったものはこれからもそうあるべきだという考えを好むようだが、「ある点で、我々は世界の警察官ではいられない」というトランプの主張は正しい。残念だが、今の警察は核なのだ。アメリカの核の傘は、安全保障政策の他の側面よりもしっかりと吟味するべき問題だ。この国を破滅に導く最大のリスクは、夢遊病のようにアジアの核戦争に足を踏み入れることだ。

(敬称略)

ハフポストUS版より翻訳しました。

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