特定秘密保護法案、渡辺喜美代表が修正を「高く評価」 安倍政権と蜜月?

みんなの党の渡辺喜美代表が日本外国特派員協会で会見。特定秘密保護法案の修正について「日本は政権交代がある民主主義の国。首相がチェックしようと思えばできる」と成果を強調した。
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Taichiro Yoshino

みんなの党の渡辺喜美代表が11月25日、日本外国特派員協会で会見した。18日に与党と大筋合意した特定秘密保護法案の修正について「秘密漏洩の罰則強化は選挙公約。首相官邸がチェックする仕組みなど、与党が受け入れたことは高く評価できる」「日本は政権交代がある民主主義の国。首相がチェックしようと思えばできる」と、同党が関わった法案修正の成果を強調した。

■「首相がチェックしようと思えばできる」

特定秘密保護法案をめぐっては、11月22日に自民、公明、みんなに維新も加わって修正案をまとめた。みんなの党はそれに先立つ自民、公明との修正協議で、首相が、秘密指定の基準を作って閣議決定することや、毎年、有識者に実施状況を報告すること、閣僚に指定などの改善を指示できることなどを求めた。秘密指定の範囲を定めた「別表」から「その他の重要な情報」という文言の削除要求も反映されたとしている。

一方で朝日新聞は以下のように社説で指摘している。

与党と維新、みんなの党の4党修正案には、あまりに不可解な点が多い。

特定秘密の指定期間について、与党は「原則30年」といっていたのが、いつの間にか実質的に60年に延びてしまった。しかも、60年を超えられる幅広い例外が認められている。

また、法施行から5年の間に秘密指定をしなかった役所には指定権限をなくすという。秘密指定ができる役所を絞るためだというが、これでは逆に多くの役所に秘密づくりを奨励するようなものではないか。

こんな矛盾や疑問を4党はどう説明し、政府はどう運用しようとしているのか。一つひとつ明らかにしていくだけでも、相当の時間がかかる。

朝日新聞デジタル「(社説)秘密保護法案 これで採決などできぬ」より 2013/11/23 05:00)

会見では法成立で懸念される「知る権利」の侵害について質問があがった。「国会に対する秘密の保持のための制限といった条項もあるが、国会と行政府との力関係に変化は生じないのか。変化して行政府が強くなると、みんなの党が掲げる行政改革にも影響するのではないか」という質問に、渡辺氏は以下のように、みんなの党の修正を受け入れた与党の態度を評価した。

みんなの党は先の総選挙(2012年末の衆院選)のアジェンダ(選挙公約)で日本版NSC設置、インテリジェンス機能強化、秘密漏洩罰則強化を訴えた。日本のように秘密がダダ漏れになっているという国が信用を獲得していくためには、秘密漏洩防止の措置は必要だ。

(中略)

今回我々はいくつかの政府に対する修正案を提出した。その中に国会の関与を強化すること、国会がきちんとチェックできる仕組みをつくることもその中の一つに盛り込んだ。また総理大臣というのは究極の国民の選択でできる存在だから、総理官邸がきちんとチェックできる仕組みも我々の修正要求には入れている。秘密の範囲が際限なく広がらないように、別表の「その他の重要事項」という文言は削除するよう求めた。

政府・与党はこうしたみんなの党の修正要求をただちに飲み込んで回答してきた。たとえば第18条においては、秘密の指定および解除について国会に報告するとともに毎年公表するものとする、総理大臣の関与については18項目を追加し、内閣のチェック機関を将来つくれるような条文修正をしてきた。我々の要求を大半丸呑みしてきた政府・与党の対応を高く評価し、法案に賛成という態度決定をした。

一方で国会が関与する常設のチェック機関については、今後の立法府の課題とした。

伊吹衆院議長も国会の関与について新しい制度をつくっていくことについては非常に前向きに考えておられるので、国会の常設のチェック機関は今回の法律の中というよりも、国会が自らこうした機関を自らの手で立法し、つくっていくことが必要になると思う。

また、外国人記者が「法案は通常業務をしているジャーナリストを監獄に送ることになる。他の民主主義国で、政府の政策を報道したジャーナリストが逮捕されるような法律を知らない」と質問したことに対しては、「誤解だ」と反論した。

我々がこだわったのは秘密が際限なく広がらないようにするための文言修正、「その他の重要事項」という文言は削除せよということ、そして総理官邸主導型のチェック体制を確立すること、国会の関与を深めること。こういったことによって官僚機構の独断専行を食い止めることができると考えている。この法案は基本は5年ごとの更新だ。また、政権交代可能な民主主義の国であるのが日本。政権が替わるということは総理大臣が替わる。新たな総理が特定秘密のチェックをやろうと思えばできる、それが日本の仕組みだ。

ジャーナリストが仕事をしたら投獄されるのというのは誤解だと思う。こうした国家の秘密とジャーナリズム、国会とは永遠の緊張関係がある。ペンタゴンペーパーが世に出ることによってベトナム戦争が終わっていくきっかけになったと思うが、我々はこうしたジャーナリズムの力を信用しているし、そうした力を減殺してはならないと強く肝に銘じている政党だ。

■安倍政権との「蜜月」際だつ

会見では、みんなの党の旗印としてきた行財政改革について「規制緩和は時間がかかる」と述べ、安倍政権がまとめた国家戦略特区法案を評価するなど、政権との蜜月ぶりも際だった。

国家戦略特区法は十数年来、岩盤のようになっていたところ(既得権)が一部こじ開けられてきたなという評価を持っている。規制改革を個別的にミクロアプローチでいくと、まずシンボリックなところからやることは一つの方法かとは思う。

例えば安倍内閣が最高裁判決を受けて薬のネット販売を解禁すると決めたが、薬事法改正案では28の劇薬指定は対象外という結論になった。我々は薬事法修正案を考えている。自民党が乗ってこなければ他の党に働きかけをして、28品目をもう一度考え直して半年後ぐらいに結論を出すという修正案を出したいと考えている。

規制改革は残念ながら時間がかかる。企画立案から始まって法案にして実行され効果が出るまでに5年ぐらいかかってしまう。我々は常に改革に対しては前向きなんだという政権のメッセージを出して行くことが大事だと考えている。安倍政権の最大のネックは自民党内に存在する、業界団体のしがらみの中で当選してきた非常に多くの人たちの存在。こういう抵抗勢力の抵抗をはねのけるには、テコの原理が必要ですよ、(中略)我々はいつでもテコの原理を働かせる存在になりますよと、こないだ安倍さんと会食した際にも申し上げた。

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