1942年生まれの二人の男

1942年生まれの二人の男に大きな刺激をもらったこの一週間。12日に記者クラブで画期的な講演を展開した小泉純一郎氏。そして18日、東京ドームの初日を飾ったポール・マッカートニー。
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1942年生まれの二人の男に大きな刺激をもらったこの一週間。

12日に記者クラブで画期的な講演を展開した小泉純一郎氏。

そして18日、東京ドームの初日を飾ったポール・マッカートニー。

まずポールから語ろうか。

はじめから感動するに決まっているライブだとはいえ、アンコールを含めると、37曲もの歌を見事に聞かせてくれたポールに感謝だ。数万人というスケールのドームだから、映像を駆使し、大写しになったポールの顔も見られ、レーザー光線もフル活用の照明もサービス満点だったけれど、やっぱり圧倒的に良かったのはアコースティックギター一本で歌った数曲。照明も何もいらない! ポールの歌だけで十分だった。

後半「オブ・ラディ・オブ・ラ・ダ」で客席の大合唱の後の「レット・イット・ビー」では、涙がこみ上げ、ラスト曲「ヘイ・ジュード」では、もうぐしょぐしょだった。

アンコールの「デイ・トリッパー」「ゲット・バック」はもちろん完璧。ダブルアンコールの一曲目に、「福島の人に贈ります」とギター一本で歌った「イエスタデイ」が心に沁みた。

ビートルズって一体何だったんだろう? と改めて考えた。

デビューから50年。1966年、初来日の武道館を私は新人歌手として見ており、だから「ライバルだわ」って言ってきたけど、その後の満身に受け止めてきた時代の風は、いつもビートルズのヒット曲と一つになって、体の奥に染み込んでいる。

1968年秋の「Hey Jude」をどれほど泣きながら聞いたことだろう。

世界中に巻き起こったベトナム反戦、東欧に吹き荒れた自由化への嵐、そして弾圧、ロバート・ケネディーの暗殺。若者は素晴らしい未来に向かって果敢に動いていたが、無力感や、不安といつも背中合わせだった。

そして、夢を砕かれながら、世界はこの数十年に取り返しのつかないところまで来てしまった!

1975年にベトナム戦争は終わったが、悲惨な中東戦争、カンボジアへと戦火は続き、89年、ベルリンの壁が崩壊して米ソ対立に終止符が打たれた途端に、湾岸戦争、ユーゴ内戦が始まった。

世界が未来を見つけられると信じていた時代の若者の歌こそがビートルズであり、同時にそれは、 どこまで行っても終わらない戦争のバックミュージックでもあった。

そして、2011年3・11の後の日本に私たちは生きている。

ビートルズを武道館で聞いた頃にはまだ日本には無かった原発。3・11の事故で安全神話が無残に崩れ去った今、やはり取り返しのつかないところにきてしまった事にやっと気付かされている私達。

そこで、小泉純一郎氏の事に触れよう。

原則的には、原発を推進して来た責任者である小泉氏を許す訳にはいかない。が、推進者だからこそ、もう無理であることに気が付かないはずはないのだ。

「使用済み核燃料の捨て場がないのだから、一刻も早く原発をゼロにするべきだ。」と、小泉さんが発言した事を歓迎したい。

12日の発言内容の一部始終をネットで聞いた。要点を洗い出してみよう。

「安倍総理に言いたい。今こそ総理の権力を国民の願う方向に、使うべきだ。一刻も早く脱原発を決断し、自然を資源にしたエネルギー政策を目指すとすれば、その夢のような事業に、日本のほとんど全ての人が協力出来る。総理が決断すれば、みんなそれに従うでしょう。何年後ではなく、即ゼロが最もいい。再稼働すればまた使用済み核燃料が出る。原発がすべて止まっている今のうちに、核燃処理工場も含めてやめた方がいい。」

実に明快で、私たちの言ってきた通り、理路整然としている。

さらに踏み込んで、エネルギー政策を再生可能なエネルギーに転換するべきだし、企業にとってもその方が将来性があると提言している。

「 エイモリー・ロビンス博士(ロッキーマウンテン研究所所長 共同創設者)の『新しい火の創造』を河野太郎から薦められて読んだ。脱原発ばかりか、脱石油、脱石炭、脱天然ガスは可能だ、と博士は提案している。アメリカがその決断をすることもあり得る。だったら、早く日本も転換に踏み込んだ方がいいでしょう。」

エイモリー・ロビンス氏と言えば、70年代から「ソフトエネルギーパス」を一貫して主張し、地球資源を枯渇させる「ハードエネルギー」ではなく、太陽光や水力、風力など再生可能な資源でエネルギー供給する方が企業的にも有利だと、コストを数値化して示してきた。79年には、私は夫と共に夫妻で来日されたロビンス氏と対談した事がある。30年早くこの方向に国が行動を起こしていれば、はるかに希望の持てる21世紀になっていたことだろう。

小泉氏の提言を是非、日本の経済界でも検討し、本気でロビンス博士の提案を研究して頂きたいし、安倍首相には、一刻も早い脱原発を決断して欲しい。完全な一匹狼として発言した小泉氏の潔さに拍手を送りつつも、折角のこの動きの中で、もっともっと国民的な「脱原発」の動きを活性化させていかなくてはならないと思う。政党や組織に委ねず、個々人がそれぞれの立場で意思表示をして行くことが大事な時期にきている。

ポールも小泉さんも1942年午年の生まれで、来年は年男。

パワーを持てる時期なのかもしれない。

かつて学生運動を経験した同世代の人達も、是非声をあげて行って欲しい。会社をリタイヤした後こそ自己実現のチャンス。

「ピンチをチャンスに変えるのは今だ。」この気持ちを忘れずにいたい。

小泉元首相の軌跡
小泉純一郎 (01 of34)
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▽コイズミジュンイチロウ \n衆院議員(自民) (credit:時事通信社)
故小泉元防衛庁長官へ追悼演説 (02 of34)
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父・小泉純也元防衛庁長官に対する中嶋英夫代議士(社会党)の追悼演説を傍聴人席で聞く小泉純一郎氏(右端)ら遺族(東京・国会・衆議院本会議場) \n\n撮影日:1969年11月29日 (credit:時事通信社)
サッチャー英保守党党首来日 (03 of34)
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自民党の小泉純一郎議員(右)の案内で日本庭園を散策するマーガレット・サッチャー英保守党党首(東京・文京区の椿山荘) \n\n撮影日:1977年04月14日 (credit:時事通信社)
竹下蔵相、主計局を陣中見舞い (04 of34)
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予算編成で忙しい大蔵省主計局内を陣中見舞いする竹下登蔵相(右)(東京・千代田区) \n\n撮影日:1979年12月25日 (credit:時事通信社)
ゴルフをする自民党ニューリーダー (05 of34)
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(前列左から)小泉純一郎、安倍晋太郎、宮沢喜一、竹下登、堤義明(国土計画社長)、加藤六月、(後列左から)池田行彦、森喜朗、塩川正十郎、小沢一郎、小渕恵三、中村喜四郎、田名部匡省、瓦力、梶山静六の各氏(神奈川・大箱根CC) \n\n撮影日:1985年08月28日 (credit:時事通信社)
小泉純一郎 (06 of34)
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▽コイズミジュンイチロウ \n衆院議員(自民) 厚相 \n\n撮影日:1989年06月02日 (credit:時事通信社)
中国孤児第4回補充調査 (07 of34)
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中国孤児第4回補充調査で孤児たちを激励後、調査協力を求める小泉純一郎厚相(東京 代々木 国立青少年センター) \n\n撮影日:1989年03月05日 (credit:時事通信社)
小泉厚相就任会見 (08 of34)
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第1次竹下改造内閣で、厚相に任命され就任の会見をする小泉純一郎厚相(東京 首相官邸) \n\n撮影日:1988年12月27日 (credit:時事通信社)
宇野内閣・小泉厚相 (09 of34)
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就任記者会見する小泉純一郎厚相(東京・首相官邸)\n\n \n\n撮影日:1989年06月02日 (credit:時事通信社)
小泉純一郎 (10 of34)
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▽コイズミジュンイチロウ \n\n第42回衆議院議員選挙立候補者(自民、神奈川11区) \n\n登録日:2000年06月24日 (credit:時事通信社)
日ロ首脳会談・小泉元首相とプーチン首相 (11 of34)
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会談を前にロシアのプーチン首相(右)と握手をする小泉純一郎元首相(東京都内のホテル)[代表撮影] \n\n登録日:2009年05月12日 (credit:時事通信社)
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自民党の佐藤ゆかり議員を支援する会合で、ガンバローの気勢を上げる小泉純一郎元首相ら(東京・目黒区のめぐろパーシモンホール) \n\nTOKYO - MAY 22: Former Prime Minister Junichiro Koizumi attends the lecture meeting at Meguro Persiommon Hall May 22, 2008 in Tokyo, Japan. Koizumi made comments on the predicted dissolution of the parliament after the G8 Summit on July. (Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images) (credit:Getty Images)
会見する小泉元首相(13 of34)
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日本記者クラブで記者会見する小泉純一郎元首相=2013年11月12日午後、東京・内幸町 (credit:時事通信社)
記者会見に臨む小泉元首相(14 of34)
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日本記者クラブでの記者会見に臨む小泉純一郎元首相(中央)=2013年11月12日午後、東京・内幸町 (credit:時事通信社)
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ワールド・サミット・オブ・ガストロノミー2009に出席する小泉元首相\n\nTOKYO - FEBRUARY 09: Former Prime Minister Junichiro Koizumi speaks during the opening ceremony of the World Summit of Gastronomy 2009 at the Tokyo International Forum on February 9, 2009 in Tokyo, Japan. The three-day event aims at seeking new solutions for various issues in the entirety of the culinary field, exchanging and understanding concerns in the global cuisine culture, as well as spreading the Japanese food culture. (Photo by Kiyoshi Ota/Getty Images) (credit:Getty Images)
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自民党の佐藤ゆかり議員を支援する会合に出席する小泉純一郎元首相(東京・目黒区のめぐろパーシモンホール) \n\nTOKYO - MAY 22: Former Prime Minister Junichiro Koizumi attends the lecture meeting at Meguro Persiommon Hall May 22, 2008 in Tokyo, Japan. Koizumi made comments on the predicted dissolution of the parliament after the G8 Summit on July. (Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images) (credit:Getty Images)
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イスラエルのエフード・オルメルト元首相が来日\n\nTOKYO, JAPAN - FEBRUARY 27: In this handout from the Israeli Government Press Office, Ehud Olmert, Prime Minister of the State of Israel ( 3rd L) speaks with former Japanese Prime Minister Junichiro Koizumi (L) on February 27, 2007 in Tokyo, Japan. Olmert is on a four-day working visit to Japan. (Photo by Moshe Milner/GPO via Getty Images) (credit:Getty Images)
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エルサレムのホロコースト博物館を訪れる小泉元首相\n\nJERUSALEM, ISRAEL - JULY 12: Japanese Prime Minister Junichiro Koizumi visits the Hall of Names at the Yad Vashem Holocaust Museum on July 12, 2006 in Jerusalem, Israel. Koizumi will meet with with Israeli Prime Minister Ehud Olmert, marking the start of his tour of the Middle East. (Photo by Gali Tibbon/Pool/Getty Images) (credit:Getty Images)
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2006年にサンクトペテルブルクで開かれたG8に出席する小泉元首相\n\nST. PETERSBURG, RUSSIA - JULY 16: Japanese Prime Minister Koizumi arrives for a meeting with G8 leaders during the G8 Summit in the Konstantinovsky Palace on July 16, 2006 in Strelna, outside St Petersburg, Russia. The crisis in the Middle East has come to dominate talks at the summit, with calls to devise a plan to ease tensions in the region. (Photo by Peter Macdiarmid/Getty Images) (credit:Getty Images)
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始球式に臨むブッシュ前米大統領(中央右)。同左は小泉純一郎元首相(東京ドーム)\n (credit:時事通信社)
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会談を前にロシアのプーチン首相(右)と握手をする小泉純一郎元首相(東京都内のホテル)[代表撮影]\n (credit:時事通信社)
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日朝首脳会談を終え、握手する小泉純一郎首相(右)と金正日労働党総書記(2004年5月、北朝鮮・平壌市郊外の大同江迎賓館) (credit:時事通信社)
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ティーショットを放つ小泉純一郎元首相(山梨・山中湖村)\n (credit:時事通信社)
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プレーに先立ち記念撮影する小泉純一郎元首相(前列左から3人目)、麻生太郎前幹事長(後列右端)ら(山梨・山中湖村) (credit:時事通信社)
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茶道裏千家の初釜式に出席した小泉純一郎元首相(中央)(東京・新宿区の裏千家東京道場) (credit:時事通信社)
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靖国神社を参拝する小泉純一郎元首相\n\nTOKYO - AUGUST 15: Former Prime Minister Junichiro Koizumi visits Yasukuni Shrine, honouring Japan\'s World War II dead on August 15, 2008 in Tokyo, Japan. Japan marks the 63rd anniversary of the end of World War II today. (Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images) (credit:Getty Images)
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2007年の終戦記念日に靖国神社を参拝する小泉元首相\n\nTOKYO - AUGUST 15: Former Japanese Prime Minister Junichiro Koizumi visits Yasukuni Shrine honouring Japan\'s World War II dead on August 15, 2007 in Tokyo, Japan. Japan is marking the 62nd anniversary of the end of World War II today. (Photo by Getty Images) (credit:Getty Images)
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終戦記念日に靖国神社で参拝を終え、本殿を出る小泉純一郎首相(中央)(東京・千代田区の同神社)\n (credit:時事通信社)
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日本郵政グループの発足式に臨む小泉純一郎元首相(東京・霞が関の日本郵政株式会社) (credit:時事通信社)
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自民党総裁選挙で投票する小泉純一郎元首相(東京・永田町の同党本部)\n (credit:時事通信社)
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衆議院本会議に出席し、見学者に手を振る麻生太郎自民党前幹事長(右)と小泉純一郎元首相(東京・国会・衆院本会議場)\n (credit:時事通信社)
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小池百合子元防衛相(左)の食事会へ激励に訪れ、談笑する小泉純一郎元首相(東京・港区北青山)(2008年09月16日)\n (credit:時事通信社)
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小泉氏引退・支持者に引退を表明する小泉元首相 (credit:時事通信社)
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安倍首相が2006年の自民党総裁選に勝利した祝いの席にて\n\nTOKYO, JAPAN - SEPTEMBER 20: Newly elected Liberal Democratic Party (LDP) President Shinzo Abe(R) and Prime Minister Junichiro Koizumi raise their arms during the presidential election at the LDP headquarters September 20, 2006 in Tokyo, Japan. Sinzo Abe is due to be approved as the Prime Miniter of Japan on Septemer 26, 2006. (Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images) (credit:Getty Images)