アフガニスタン大統領選、全投票の再調査で合意 雪辱を期すアブドラ候補の思いとは?

アフガニスタンは、7月7日に発表された大統領選挙の暫定結果をめぐって混乱している。12日、決選投票で対決したガニ元財務相とアブドラ元外相が、約800万票の全投票を調査し、結果確定後は新大統領が挙国一致政権を組織することで同意した。
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US Secretary of State John Kerry (L) looks at Afghan presidential candidates Ashraf Ghani (C) and Abdullah Abdullah (R) shaking hands, after a joint press conference in Kabul on July 12, 2014. US Secretary of State John Kerry on July 12 held a second day of talks with Afghanistan's feuding presidential hopefuls, seeking a deal to 'clean up the tally' after disputed elections. AFP PHOTO/SHAH MARAI (Photo credit should read SHAH MARAI/AFP/Getty Images)
SHAH MARAI via Getty Images

アフガニスタンは、7月7日に発表された大統領選挙の暫定結果をめぐって混乱している。12日、決選投票で対決したガニ元財務相(写真中央)とアブドラ元外相(写真左)が、約800万票の全投票を調査し、結果確定後は新大統領が挙国一致政権を組織することで同意した。これにより、とりあえずは国家分裂の危機が回避された。時事ドットコムなどが報じた。

結果次第では民族間の対立に禍根を残す恐れもあり、情勢は予断を許さない。

7日発表の暫定結果では、最大民族パシュトゥン人のガニ氏が100万票近い大差で、少数派タジク人の支持を受けるアブドラ氏に「勝利」した。しかし、アブドラ氏は組織的な不正が行われたと主張。徹底的な調査が行われるまで結果を受け入れないと表明し、独自政権を樹立する可能性すら示唆していた。

(時事ドットコム「全票調査で合意=国家分裂回避も予断許さず-アフガン大統領選」より 2014/07/13 06:34)

アメリカのケリー長官が11日にアフガニスタンを訪問し、両者の説得に当たっていた。再調査には数週間かかり、8月2日の新大統領の就任式は延期される見通し。

投票前には、第1回投票で首位だったアブドラ氏が優勢だと見られていたが、暫定結果でアブドラ氏は10ポイント以上のリードを付けられた。アブドラ氏は不正投票の存在を主張、同氏を軸に独自政府の樹立論が出るなどアフガニスタンは政治危機に発展していた。

4月の1回目投票では、アブドラ氏の得票率45%に対し、ガニ氏は31.6%。11.4%で3位だったザルマイ・ラスール前外相が決選投票でアブドラ氏の支持を表明したため、決選投票でも同氏が優勢とみられていた。

しかし、投票後に報道で「ガニ氏有利」が伝えられると、アブドラ氏は選管幹部らによる「組織的な不正」を糾弾。約100万票が「水増し」され、ガニ氏の得票数に上乗せされたと主張し、6月下旬には支持者が首都カブールの大統領宮殿などで抗議デモを行う事態に発展した。

(毎日新聞「アフガン大統領選:ガニ元財務相が過半数 暫定結果」より 2014/07/08 00:49)

■混乱続けば再び「テロリストの聖域」の可能性

大統領選挙がうまく収拾しなければ、民族間の衝突に発展する可能性がある。アフガニスタンの民族構成はパシュトゥン人が約4割、タジク人が3割弱で、ハザラ人やウズベク人などが続く。ガニ氏はパシュトゥン人のほかウズベク人の支持も、アブドラ氏はタジク人ほかハザラ人の支持を集めている。

ガニ氏は世界銀行での勤務経験があり、現政権に批判的な帰国組のインテリ層から支えられている。一方のアブドラ氏は眼科医で、かつては北部同盟幹部としてタリバン政権打倒に貢献、旧軍閥指導者の多くからの支持を得ている

現在、混乱を極めるイラクは2011年末にアメリカ軍が撤退した後に宗派間対立が激しくなった。アフガニスタンでは、駐留アメリカ軍は2014年末までに戦闘任務を終え、一部だけがアフガニスタン軍の訓練などのために残留する。そのため、アフガニスタンが国家分裂するような事態になれば、再び「テロリストの聖域」となる可能性があると懸念されている。

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記者とのインタビューに応じるアブドラ氏=2012年、カブールのアブドラ氏自宅

■アブドラ氏、記者とのインタビューに「民族の垣根超える」

アブドラ氏は前回2009年の大統領選でも決選投票に進んだが、カルザイ大統領による不正を指摘してボイコットした。今回は、その雪辱を果たすための戦いでもあった。

記者(中野)は2012年、新聞社の特派員としてアフガニスタンを担当していた際、アブドラ氏へ単独インタビューをしている。アブドラ氏は、首都カブールの自宅に招いてくれた。この機会に少しだけ紹介したい。

Q アフガニスタンの大統領という職務は非常に大変なものですが、それでも再び選挙に挑戦するのですか。

A 確かに困難な役割です。しかし、すべての立場の人が「完璧だ」とする仕事をすることは難しいでしょう。「奇跡を起こす」とは言いません。現状で最大限できることを、しっかりとした方向性とビジョンを持ってやっていきます。いまのカルザイ政権には国を先導するビジョンに乏しい。

Q アフガニスタンには複数の民族が存在します。この点、どんな政治を行いますか。

A 偏った一部の民族で政治を行うのではいけない。実際、様々な民族が存在しているのですが、国をまとめ上げるためには垣根を越えて一つにならないといけない。そのため、国に尽くしたいと思っています。

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