PRESENTED BY AQUA SOCIAL FES!!

あるがままでは残らない自然もある。人の手が入ることで守られる新潟の原風景

新潟の原風景と形容される福島潟には220種の野鳥、450種の植物が生息する生命の宝庫だ。この場所は、「人の手」によって生物多様性が保たれている。
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湿地とアシ原に囲まれ、四季折々の景色に彩られる福島潟(新潟市北区)は、新潟の原風景と形容される。国の天然記念物に指定されている渡り鳥のオオヒシクイや、希少な水生植物のオニバスをはじめ220種の野鳥、450種の植物が生息する生命の宝庫でもある。この豊かな生態系は人間の世界から隔絶されて保たれているのではない。積極的に人間が関わることによって維持されているのだ。

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新潟の原風景を今に残す福島潟。この豊かな自然は「日本の自然百選」「にいがた景勝百選」「遊歩百選」にも選ばれている。

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左:葉の直径が2メートルにもなる水生植物オニバス

右:冬の訪れとともに飛来する国の天然記念物オオヒシクイ

「周りには湖沼も川も、水田もある。野鳥や魚、木々や花々の動植物もある。そして人間も。すべてがつながっているのが福島潟。何一つ欠けてはいけないんです」

そう話すのは福島潟の保全や情報発信など普及活動に携わるNPO法人「ねっとわーく福島潟」の大倉茂さん(66)だ。大倉さんは、生物多様性を守るため、この大自然の「手入れ」にいそしんでいる。

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大きく育ったマコモを間引く大倉さん。

たとえば池に生い茂るマコモ。水辺に緑を彩っているのだが、繁殖力が非常に強い。そのため、手入れを怠るとオニバスなどの植物を駆逐してしまうという。潟を覆うアシだってそうだ。過度に量が増えると、周囲の湿地を乾燥させてしまう。そうなれば湖沼に美しい花を咲かせるハスはもちろん、その実を食べる動物も姿を消すだろう。

あるがままがいいというわけでないのだ。

少年時代の風景が福島潟にはあった

旧神林村(現・村上市)の農家の家で育った大倉さんにとって、水辺や川辺は身近な遊び場だった。福島潟にも発見や驚き、そして"わくわく"があった。

そんな大倉さんが、福島潟の保全活動に携わるようになったのは、NPOのメンバーに誘われたことがきっかけだ。魚釣りや散策に参加しているうちに、自然と"潟にはまった"という。それから18年の月日が経った。当初は仕事の合間をぬって足を運んでいたが、現在は毎日のように福島潟を訪れ、自然学習園の整備などに汗を流す。そこは、潟の動植物に触れたり観察したりして自然保護について理解を深める場所。いわば、人と福島潟をつなぐ接点だ。

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ゆったりとした時の流れを感じながら、自然を満喫できる人気プログラム「潟舟体験」。春の連休や夏の土日に運航している。

すくすく育つ次代の守り人

手をかけた分だけ育ったのは潟だけではない。「お茶代程度のアルバイト代」を渡して一緒に保全活動を行う近隣の高校生もまた、すくすくと育っている。最初は元気や興味がなさそうな子どもたちも、ともに汗を流し、泥にまみれるうちに表情が生き生きと変化する。活動に熱心な生徒には一定の区画の管理を任せることもある。彼らが自主的に小川を作ったこともあったそうだ。

「自然に対してもそうだけど、自分たちが住む地域にも愛着を持ってくれたということなんだと思います」

メンバーの高齢化は進んでいる。次代の担い手を育成することは急務なのだ。しかし、今後も肩肘を張らず、潟を守り、潟を好きになる子どもたちも増やしていきたいという。

「人も自然の一部。ここに来れば、うんと元気をもらえる。だから伝えていきたい」

型ではなく、潟にはまる人生はとても彩り豊かだ。大倉さんの嬉しそうな表情はそう物語っている。

大倉さんら「ねっとわーく福島潟」が中心となって行う「AQUA SOCIAL FES!! 2015福島潟の水辺の植物を守ろう!」は新潟市北区の福島潟で10月12日(月・祝)に開催します。詳細は公式ホームページをご覧ください。

(取材・執筆:新潟日報社 昆野伸司)