最強の抗生物質でも殺せない細菌、中国で発見される 世界に広まるのか

「抗生物質が今にも終わりを迎えようとしている」と、科学者たちは警告する。
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Scanning Electron Micrograph of Burkholderia cepacia. (Photo by: Media for Medical/UIG via Getty Images)
Media for Medical via Getty Images

コリスチンは、毒性の強い大腸菌と肺炎菌を殺すための「最後の砦」と言われる強力な抗生物質だ。ところが、このコリスチンに対して耐性を持つ細菌が発見された。

イギリスの医学雑誌「The Lancet Infectious Diseases(ランセット・感染症)」に11月19日に掲載されたレポートによれば、これは突然変異した細菌で「MCR-1」という遺伝子を持つ。初めに中国の養豚場で発見され、その後、生肉(豚)と人間からも発見された。

コリスチンは50年にわたって使われている抗生物質で、主に動物に使用される。人間に処方されるのは、他の抗生物質が効かないと証明された時だけだ。

研究は3年にわたって行われた。その結果、804匹の動物のうちの5分の1、523の生肉サンプルの15%、1,332人の患者の1%からMCR-1が見つかった。

研究者たちは「農業に利用されたコリスチンと、食肉処理された動物から見つかったコリスチン耐性菌、食品から見つかったコリスチン耐性菌、人体から見つかったコリスチン耐性菌の関係性が解明された」と述べている。

研究の結果を受け、科学者たちは「抗生物質の使い方を見直すよう各国に要請している。著者のうち2名は「広がるのを断ち切る方法の1つは、農業で使うコリスチンを制限または中止することです。そうしなければ、大規模な範囲で問題が発生するだろう」と書いている。

コリスチンは腎臓に害を与えることがある。そのため1970年代に、人間には使われなくなった。しかし今でも、家畜の病気の治療や予防のために世界中で広く利用されている。中国は今や世界一の鶏肉と豚肉の生産国であり、家畜に大量のコリスチンを投与している。また、研究グループによれば、コリスチンは2010年にヨーロッパで5番目に売れていた抗生物質だ。

「MRC-1 が世界中に広まるのは時間の問題です。そうなった場合、抗生物質に耐性を持つ他の遺伝子と組み合わされる事態は避けられないでしょう。そうなれば、抗生物質で感染症を食い止めていた時代は終わりを告げることになります」と、研究者の1人でカーディフ大学の教授ティモシー・ウォルシュは11月19日にBBCに語った。

今回の研究には、中国、オーストラリア、イギリスの科学者たちが参加した。資金を援助したのは、中国科学技術省と中国国家自然科学基金委員会だ。

現在MCR-1は中国国内でしか発見されていないが、コリスチンの使い過ぎを止めなけれはどんどん広まるだろうと科学者たちは警告している。

「我々をこの問題を訴え続け、政府が動きを起こすよう働きかけなければいけません。さもなくば、増え続ける患者に対して『申し訳ありませんが、あなたの感染症を治療する薬はありません』と言わなければならなくなるでしょう」

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

気持ち悪い原料からつくられた食品添加物
カストリウム(海狸香)(01 of08)
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ビーバーの会陰(生殖器と肛門のあいだ)にある分泌腺から抽出される香料。\nストロベリー味やラズベリー味の風味を付けるために使われる可能性がある。\n\n[ビーバーはオス、メスともに肛門の近くに一対の香嚢を持っており、香嚢の内部には黄褐色の強い臭気を持つクリーム状の分泌物が含まれている。 この分泌物を乾燥させて粉末状にしたものが海狸香。主に香水用素材として利用されてきた] (credit:Flickr: Paul Stevenson)
硫酸アンモニウム(硫安)(02 of08)
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代表的な窒素肥料のひとつだが、サブウェイのロールパン(PDF)など一部のパンにも品質改良剤として入っている。 (credit:Flickr: woodleywonderworks)
L-システイン(03 of08)
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人間の毛髪やアヒルの羽からつくられるアミノ酸\n\n[システインは、医薬品や、髪のパーマ剤等に用いられるが、最も主要な用途は香料の製造。例えば糖と反応させると肉の香りを持つ成分が生成する。また、パンを焼くときの添加剤としても使われる(生地がやわらかくなり、製造にかかる時間が短縮される)。タバコにも添加されている] (credit:Flickr: Fields of View)
二酸化ケイ素(04 of08)
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「ウェンディーズ」のチリや「タコベル」のミートフィリングなど、ファストフード店のさまざまなメニューに入っている。\n\n[二酸化ケイ素(シリカ)はろか剤のほか、吸湿・乾燥材としても使用され、とくにふりかけなどの粉形食品には湿気って“ダマ”になるのを防ぐ目的で添加されることがある。食品添加物として利用される非結晶性のシリカは、「無水ケイ酸」とも呼ばれ不溶性で、体内で消化吸収されず排出されるため身体に害はないとされる。ただし、厚生労働省による使用制限には、「母乳代替食品及び離乳食に使用してはならない」とされている] (credit:Flickr: Matthias Rhomberg)
酸化チタン(05 of08)
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鉱山で採掘される金属元素チタンの酸化物\n\n日焼け止めなどに使われるが、「Men\'s Health」によると、スキムミルクやコーヒークリーム、ドレッシングなどの色を白くするためにも使われている。\n\n[酸化チタンは、白色の塗料、絵具、釉薬、化合繊用途などの顔料として使われる。また、人体への影響が小さいと考えられているため、食品や医薬品、化粧品に利用されている] (credit:Flickr: osseous)
シェラック(06 of08)
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タイ原産の虫の分泌物。\n\nみんなが好きな、ゼリービーンズなどの光沢のあるお菓子で、コーティングに使われている\n\n[シェラックは、インド、タイなどの東南アジア、南アジアで養殖されるラックカイガラムシの分泌物。医薬品の錠剤、チョコレートボールなどの食品のコーティング材でもある] (credit:Flickr: Katili)
骨炭(こったん)(07 of08)
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炭化した牛の骨\n\n[骨炭は、牛の骨などを乾留して得られる粉末。吸着力が大きく,製糖工場などで糖液の脱色,精糖に使用されるほか,黒色顔料としても利用される] (credit:Flickr: rockindave1)
セルロース(08 of08)
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『Wall Street Journal』紙(WSJ)によると、セルロースは木材パルプなどからつくられる植物繊維だが、シュレッドチーズ、サラダのドレッシング、チョコレートミルクなどにも含まれている。\n\n[セルロースの誘導体「カルボキシメチルセルロース」(carboxymethylcellulose, CMC、別名:カルメロース)は、アイスクリームなどで増粘剤および乳化安定剤として使用されている ] (credit:Flickr: jamieanne)

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