重なり合う「声」から、沖縄を想う展覧会

沖縄の多様な側面に出会い直す機会に、私たちはその声をどのように聞き、人に伝えることができるのだろうか。
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埼玉にある「原爆の図 丸木美術館」で、沖縄を主題とする展覧会「美しければ美しいほど」が開催中だ。

丸木美術館は、水墨画家の丸木位里と油彩画家の丸木俊が共同制作した《原爆の図》を展示するために、1967年に建てられた美術館。

丸木夫妻が30年以上にわたって描いた《原爆の図》のほか、《アウシュビッツの図》《水俣の図》などを常設展示している。また、丸木夫妻は、多くの県民を巻き添えにした沖縄戦を描いた《沖縄戦の図》を1984年に制作しており、この絵は現在、沖縄県宜野湾市にある佐喜眞美術館に常設展示されている。

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(原爆の図 丸木美術館)

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(米軍基地として接収された先祖の土地を一部取り戻して1994年に開館した佐喜眞美術館)

「美しければ美しいほど」展の企画者・居原田遥は沖縄県出身で、現在は東京を中心に展覧会などを企画している。展覧会開催にあたっての文章にもあるように、居原田は小学生のときに初めて《沖縄戦の図》を目にした。

平和学習が盛んな沖縄の学校では《沖縄戦の図》をもとにした絵本『おきなわ島のこえ』が課題図書に指定されており、毎年《沖縄戦の図》を目にするなかで、体験していないはずの沖縄戦、ひいては戦争そのものに強い恐怖を抱くようになったという。

展覧会タイトルは、『おきなわ島のこえ』の丸木俊によるテキスト「沖縄の風景が美しければ美しいほど、やさしければやさしいほど、沖縄戦の惨劇は胸をえぐる」からの抜粋だ。

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(自身が企画した沖縄へのツアーで参加者に説明する居原田)

展覧会は、沖縄をめぐる複数の「声」から成り立つ。

参加作家のひとり、嘉手苅志朗の映像作品《interlude》と《彼らの声》からは、返還以前と以後の沖縄を生きてきたジャズシンガーの歌声や、沖縄の風土に根ざした市井の人の話し声が流れる。

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(嘉手苅志朗《interlude》展示風景)

もう一人の参加作家、川田淳の映像作品《終わらない過去》と《生き残る》では、戦後70年以上を経た今も沖縄戦に向き合い続ける人たちの声がこだまする。

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(川田淳の作品は、いずれも時間指定で上映)

また、前述の佐喜眞美術館の佐喜眞道夫館長が《沖縄戦の図》を解説する声が展覧会全体を包むほか、「沖縄の情報は本当に伝えられていないのか」と題したセクションでは、SNSなど各種ネットメディアを通じて発信された辺野古や高江に関する声の可視化を試みている(筆者は、この展示と3月26日に開催する関連シンポジウムに協力)。

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(「沖縄の情報は本当に伝えられていないのか」展示風景)

遠く埼玉の地に運ばれてきた沖縄をめぐる様々な「声」に耳を傾けることで、これまで知らなかった沖縄の多様な側面に出会い直す機会になるのではと思う。

どのような声が発せられているのか。

その声を私たちはどのように聞き、人に伝えることができるのか。

ぜひ、足を運んでみてほしい。(文中敬称略)

「美しければ美しいほど」

会期:2017年2月7日(火)〜4月9日(日)

時間:9:00〜17:00(2月中は9:30〜16:30)

会場:原爆の図 丸木美術館(埼玉県東松山市唐子1401)

休館日:月曜(祝日の場合は翌日)

入館料:大人900円 18歳未満または中高生 600円 小学生400円

参加作家:嘉手苅志朗、川田淳

協力:佐喜眞美術館、Barrack、木村奈緒、西尾祐馬

イベント共催:早稲田大学メディア・シティズンシップ研究所

企画:居原田遥