アメリカの空港で、生体認証システムによる個人データ収集がさらに拡充される

データ収集を強化するシステムは、すでにアメリカの一部の空港で導入されており、6月以降はさらに拡充される。
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多くの旅行者たちにとって、アメリカ国内にある空港の保安検査はすでにプライバシーに踏み込んだものになっている。そしてドナルド・トランプ大統領が自分の意向を通すことになれば、やり方はこれ以上に厳しいものになるだろう。

トランプ氏は、イスラム教徒が多い国からの入国を一時禁止する大統領令を出した時、生体認証による出入国管理システムの完成を早急に進めると明記した。この生体認証システムは、指紋、顔、瞳の虹彩といった認証システムのデータを集めることで、外国からの旅行者がアメリカを出国する際に、その身元をより正しく証明できることを目指すものだ。このような、データ収集を強化するシステムは、すでにアメリカの一部の空港で導入されており、6月以降はさらに拡充される。

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パリの高速鉄道「ユーロスター」のイギリス入国ゲートで稼働している顔認証システム。2017年2月撮影。PHILIPPE LOPEZ VIA GETTY IMAGES

アメリカ合衆国税関・国境警備局の広報官ジェニファー・ゲイブリス氏は、ハフポストUS版に、「アメリカの空港では、アメリカ国民以外の人がアメリカに入国した時、出入国管理窓口で写真を撮影し、生体認証データを集め、その写真を政府のデータベースに照合する作業を長年行っている」と語った。

問題は、旅行者がアメリカを出国する際には写真が撮影しないこと、そしてビザを所有している人のうち、必ずしも全員が必要とされる出国書類を提出していないことだ。生体認証システム導入の支持者によると、どの旅行者がアメリカを出国したのかを追跡して確認する方法がないと、ビザの在留期間を超えて不法滞在している人間や潜在的なテロリスト追跡すること、そして移民数を正確に数えることが難しくなるという。

政治ニュースサイト「ザ・ヒル」は、次のように解説する。

多くの場合、我が国の連邦政府は、個人に入国条件を守らせ、出国書類を提出させるために、非移民(大半は観光客、仕事での旅行者、臨時の出稼ぎ労働者)たちが誠実に法を守ってくれることに頼るのみだ。推計で40〜50パーセントの不法滞在外国人(450〜600万人)が、アメリカに合法的に入国した後、出国を求められている時期に出国しなかったことから考えると、誠実さに基づく運営は、我が国の移民制度の完全性を保証するのに最良の方法でないことは明らかだ。

そこで、政府は方法を模索している。おそらく顔認証システムを導入することになるが、瞳の虹彩認証システムや、他のシステムを併用する可能性がある。乗客が飛行機に搭乗する直前に生体認証データを集めることで、どの旅行者がアメリカを出国したのかを検証する方法だ。こうした方法は新しいものではない。すでに多くの国々で、空港や駅に顔認証を導入している。そして、アメリカは、出国する旅行者たちを追跡する独自の方法を、20年以上使い続けている。しかし、シンクタンク「超党派政策センター」(BPC)のテレサ・カーディナル・ブラウン氏によると、税関・国境警備局は現在、システムを空港に導入せよという圧力にさらされているという。

そう、顔認証システムがもっと導入される。これはアメリカ国民に対してもだ。

2015年、税関・国境警備局はアメリカでもっとも利用者数の多い10カ所の空港で指紋認証システムを使って、生体認証出国プログラムの試験運用を始めた。しかし、税関・国境警備局は顔認証をもっとも簡単な生体認証として出国プログラムを運用しようとしている。

税関・国境警備局は2016年、ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港から出国する一部の旅行者に顔認証システムの試験運用を始めた。試験運用プログラムは、2017年6月に他の7つの空港にも導入される予定だ。ただし、ゲイブリス氏によると、その具体的な場所はまだ明らかにできないという。

また、税関・国境警備局は、ワシントン・ダレス国際空港とジョン・F・ケネディ国際空港からアメリカに入国する旅行者に対し、それぞれ、2015年と2016年から顔認証の試験運用を始めている。入国時に撮影する通常の写真記録の代わりに、この顔認証システムでは、旅行者の写真をパスポート上の写真と比べる。

こうした試験運用プログラムでは、アメリカの市民権を持つ人々の顔もスキャンする。しかしゲイブリス氏は、市民権が確認され次第、彼らのデータは削除されるという。これは、アメリカ国民以外の人々のデータは残されるのとは異なる。ゲイブリス氏は、何らかの生体認証システムが恒久的なものになったとしても、同様の運用となると話した。

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パリ航空ショーで旅行者が生体認証システムを試す様子。ERIC PIERMONT VIA GETTY IMAGES

こうした取り組みはトランプ氏の大統領就任前から始まっているが、トランプ氏は、生体認証システムを導入した出国プログラムがすぐに実現することを求めている。

トランプ氏の渡航禁止令は、生体認証システムの「完成と実施を促進」することを目指しているが、生体認証出国プログラムは、国境防衛に焦点を当てたトランプ政権に端を発するものではない

ビル・クリントン元大統領時代に成立した1996年の移民法は、旅行者を追跡するための生体認証システムの導入を求めた。後に出された法案では、その方法として生体認証システムを挙げていたと、ブラウン氏は言う。その後、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ時代にもに進展し、2013年以降はそれまでと比べてが導入が加速された。2013年は、税関・国境警備局が正式に生体認証出国プログラムの担当機関になった年だ。

しかし、懸念もある。国土安全保障省でテロリズム対策調整官を務めていたジョン・コーエン氏は「ホワイトハウスはこれまでの取り組みを軽視し、政府による個人データの収集とアメリカのプライバシー法の整合性を充分に検証しないのではないか」と指摘する。

アメリカ自由人権協会(ACLU)などの人権団体は、生体認証データの収集をプライバシーへの脅威とみている。また、アメリカの顔認証システムには、少数派人種・民族の認識を誤る確率が高いという問題がある。なぜなら、このテクノロジーの大部分は、試験時に白人の顔を使って開発されたからだ。移民の権利を支持する市民人権団「ワンアメリカ」の代表リッチ・ストルツ氏は、「このシステムを空港に導入することで、搭乗客に対する人種差別的プロファイリングを増やすことになりうる」と警告する

「私たちは、(顔認識システムが)マイノリティ、つまり、白人に見えない人々を扱う時には、不正確になりうるという証拠がある」と、ストルツ氏は指摘した。このシステムを使うことで「マイノリティの人々が追加検査のために別室に呼ばれる頻度が高まるという重大な懸念を考慮しなくなる」という。

コーエン氏の見解では、トランプ政権はこうした懸念に対処するだろうとみている。

「現政権はそれでも、こうした問題を認識している」と、コーエン氏は話した。「ホワイトハウスにはここ最近、治安に関わってきた人以外の専門家と対話する姿勢はあると信じている。願わくば、ホワイトハウスがそうした専門家たちの意見に耳を傾けることを願う」

トランプ政権がすべての空港に顔認証システムを導入する意向であっても、実現にはしばらく時間がかかりそうだ。

顔認証を生体認証出国プログラムとして公式に採用するためには、相当な費用がかさむだろうとコーエン氏は語った。このシステムを最大限に運用するためには、税関・国境警備局は、アメリカ国内の各空港、国境、港に顔認証のスキャンカメラを導入しなくてはならなくなる。

搭乗の遅れを引き起こさず、出国する際に写真を撮影する方法を導入するためには、さらに費用がかかるだろう。

「税関・国境警備局は、人々が歩いて通り過ぎる時にデータを得られるような、受動的なテクノロジーを求めています」と、ブラウン氏は話した。「もっとも効率的なやり方は、文字通り搭乗ブリッジ上で、搭乗客が飛行機に乗り込む時に行う……ですが、空港はそうできるように設計されていません」

コーエン氏は、アメリカの空港は、入国時の写真や書類などすでに収集している情報を活用できると考えている。そうすることで、顔認証を使う生体認証出国プログラムと同じ目標を達成できると、コーエン氏は語った。抜本的に変える必要はないから、実現へのハードルは決して高くない。

ゲイブリス氏もこの意見に同意する。「生体認証出国プログラムに使える、既存のインフラや手続きが、もっとたくさんあるのです」

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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